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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
71 起きて
しおりを挟む「ディー……エル………?」
二人の間に座り込んだ。
いつも、僕が呼んだら必ず目を覚まして、『フィー』って目を細めて微笑みながら僕の名前を呼んでくれた。
「ディー……?」
頬に触れても目を覚まさない。
「……エル?」
唇に触れても、何にも返ってこない。
座り込んだ僕のローブは、二人の血を吸ってどんどん赤く染まる。
なんで……?
「……魔物に襲われていた住民たちをかばったそうだよ。酷い傷を負いながら、剣を振るい、魔法を使っていたそうだ」
神殿長さんの声が頭の中に残らない。
「ディー……起きて。お願い」
血の匂いで、頭がくらくらする。
……わかるよ。
…わかる。
この血は、流れちゃいけないものだ、って。
こんなにたくさん、流れちゃ、いけないものだ。
「しんでんちょうさん……、でぃーりっひさん、おね、がい、します」
握りしめた二人の手から、どんどん体温がなくなってく。
「……いや、し、を」
かけて。
お願いだから。
二人を治して。
「ラルフィン……」
でも、神殿長さんも、ディーリッヒさんも、唇をかみしめて、首を横に振るだけ。
「…無理だ。これほど血を流してしまっては、怪我の癒やしは効かないんだ」
何を、言ってるの。
「ラルフィン、諦めて――――」
何を、諦めるの?
「ディー……」
唇を、重ねる。
まだ、ぬくもりがある。
かすかに、呼吸も感じられる。
「エル……」
唇から血の味がした。
けど、ディーと同じ。
ぬくもりも、呼吸も。
それから、弱くなってしまった、鼓動も。
「まだ、しんぞう、も、うごいてる、から……」
「ラルフィン…」
「や……やだ……っ、なんで……なんで……っ」
なんで、諦めろ、なんて言うの。
だって、だって、二人は、まだ、生きて、いるのに。
――――まだ
「や………いやだ……ディー……、エル…!!お願いだから目を覚まして……!!」
僕を一人にしないで。
「女神さま……お願い……お願いだから、二人を連れて行かないで……!!」
僕から二人を奪わないで。
ディーの右手を握る。
エルの左手を握る。
僕は。
僕は、二人がいないと、生きていけない。
二人は僕の全てで、生きる意味だから。
二人がいないなら、僕が神官になった、意味もなくて。
「……死なせない……」
無理だ、って言われても。
僕の命をかけることになっても。
「……ディー、エル」
力のない手を、僕の頬に当てる。
これを『きっかけ』なんて思わない。
僕はこんなこと望んでない。
「大好き……あいしてるよ。たくさん、たくさん」
溢れてく涙。
二人の血まみれの手が、涙に濡れていく。
『女神さま――――』
胸の中に、優しくて熱い光が広がっていく。
『僕に――――力を、女神さまの御力を、使わせてください』
耳に、二人の微かな呼吸音が聞こえてくる。
こんなこと、いやだ。
僕は、二人に傷ついてほしくない。
『僕に、大切な人を失くさないための御力を――――』
でも、どうしても、駄目なら。
僕も、連れて行って。
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