178 / 247
幼馴染み二人と僕の15歳の試練
85 僕が神殿を出る日
しおりを挟むディーとエルに甘えてたら、神殿長さんが苦笑しながら部屋に行こうと促してくれた。
そうだった。
僕の部屋、まだ荷物たくさんで、これから運び出さなきゃならないんだった。
すごく沢山なわけじゃないけど、それなりに増えてしまった僕の荷物。
二人にも持ってもらわなきゃ。
「ごめん…。ディー、エル、結構荷物あって……」
「心配すんな。店主殿からいいもの借りてきたから」
ディーが笑いながら持っていた小箱を叩いた。
でも、その箱には収めきれないと思うんだ。なんか余計申し訳なくなる。
神官さん以外は入れない居住棟。でも、今日は特別に二人が入ってもいい、って神殿長さんが許可をくれた。
……と言うか、なんか、結構、この規則を破ってた気がする……。神殿長さんが、『特例』で認めてくれて。……僕、甘やかされてるのかな?
みんなでぞろぞろ大移動。
なんか、前にもあったね、こんなこと…って思ったら楽しくなってきて笑ってしまった。
そしてみんなで僕の部屋に向かって、部屋の扉を開けて――――みんな、笑い出すんだもん。
「あ、ラルフィンだわ、これ」
「去年を思い出すな」
「……だって」
荷物がそんなに増えていないとは言ってもそれなりの量があって、クローゼットの中の服だけでもどうにかしようと思ってベッドの上に並べてみたけど、それ以上どうしたらいいかわからなくて放置しちゃったし。
机の引き出しの中身を机の上に出したはいいけど、やっぱり途方に暮れて放置しちゃったし……。
「大丈夫。すぐ終わるよ」
笑ったディーは、小箱を床において、中から大きめの袋を何枚か出した。
「すみません。細々したものはこの中にまとめて入れてください。袋がある程度一杯になったら、箱に入れてください」
「了解~」
「便利便利」
袋を持ったみんなが、部屋のあちこちに向かってく。
「ラルフィン、ほら、大事なものと教典は自分で入れて」
「あ、はい」
机の上においていたその二つを持ち上げて、なんとなく壁に寄った。…なんか邪魔になりそうで。ちなみに、神殿長さんも一緒。
「懐かしいな」
「ですね」
エルは僕の服をたたみながらテキパキと袋に詰めてく。
ディーは下着とか入ってた袋の中身を確認すると、口を閉じてそれを無造作に小箱の中に入れた。
「え」
見ていたら、いっぱいになった袋が、次々に小箱の中に入っていく。
「うそ」
「収納魔法のかかった箱だね。随分貴重なものを持ち出したな」
「収納魔法…?」
…って、なに?
正体がわからなくても、片付けは進む。
僕が持っていたものはエルが箱の中に入れてしまった。
あれよあれよと部屋の中は空っぽになっていった。
「ラルフィンの部屋はいつでも使えるようにしておくからね」
「はい、ありがとうございます!」
荷物を全部入れたら、ディーは蓋を締めてその箱を担ぎ上げた。……と言うか、凄く軽そうなんだけど。
神官のローブも、箱の中。
私服の僕に、最後にエルが上着を着せてくれる。
全部終わって、神殿長さんに先導されながら、神殿の外まで歩く。
「何かあったらすぐにおいで。ラルフィンなら誰も咎めないから」
「はい。ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げて。
それから、みんなをもう一度見て。
「お世話になりました!行ってきます!」
「行っておいで」
元気に、声を上げて。
皆からも、頑張れよ、とか、色々声をかけられて。
大きく手を振ってから、ディーとエルと、手を繋いで歩き始めた。
今日から僕の生活が変わるんだ。
十六歳になった僕の新しい世界に、大好きな二人と一緒に、一歩一歩、足を進めた。
10
あなたにおすすめの小説
嫁がされたと思ったら放置されたので、好きに暮らします。だから今さら構わないでください、辺境伯さま
中洲める
BL
錬金術をこよなく愛する転生者アッシュ・クロイツ。
両親の死をきっかけにクロイツ男爵領を乗っ取った叔父は、正統な後継者の僕を邪魔に思い取引相手の辺境伯へ婚約者として押し付けた。
故郷を追い出された僕が向かった先辺境グラフィカ領は、なんと薬草の楽園!!!
様々な種類の薬草が植えられた広い畑に、たくさんの未知の素材!
僕の錬金術師スイッチが入りテンションMAX!
ワクワクした気持ちで屋敷に向かうと初対面を果たした辺境伯婚約者オリバーは、「忙しいから君に構ってる暇はない。好きにしろ」と、顔も上げずに冷たく言い放つ。
うむ、好きにしていいなら好きにさせて貰おうじゃないか!
僕は屋敷を飛び出し、素材豊富なこの土地で大好きな錬金術の腕を思い切り奮う。
そうしてニ年後。
領地でいい薬を作ると評判の錬金術師となった僕と辺境伯オリバーは再び対面する。
え? 辺境伯様、僕に惚れたの? 今更でしょ。
関係ここからやり直し?できる?
Rには*ついてます。
後半に色々あるので注意事項がある時は前書きに入れておきます。
ムーンライトにも同時投稿中
【完結】僕は、妹の身代わり
325号室の住人
BL
☆全3話
僕の双子の妹は、病弱な第3王子サーシュ殿下の婚約者。
でも、病でいつ儚くなってしまうかわからないサーシュ殿下よりも、未だ婚約者の居ない、健康体のサーシュ殿下の双子の兄である第2王子殿下の方が好きだと言って、今回もお見舞いに行かず、第2王子殿下のファンクラブに入っている。
妹の身代わりとして城内の殿下の部屋へ向かうのも、あと数ヶ月。
けれど、向かった先で殿下は言った。
「…………今日は、君の全てを暴きたい。
まずは…そうだな。君の本当の名前を教えて。
〜中略〜
ねぇ、君は誰?」
僕が本当は男の子だということを、殿下はとっくに気付いていたのだった。
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
「出来損ない」オメガと幼馴染の王弟アルファの、発情初夜
鳥羽ミワ
BL
ウィリアムは王族の傍系に当たる貴族の長男で、オメガ。発情期が二十歳を過ぎても来ないことから、家族からは「欠陥品」の烙印を押されている。
そんなウィリアムは、政略結婚の駒として国内の有力貴族へ嫁ぐことが決まっていた。しかしその予定が一転し、幼馴染で王弟であるセドリックとの結婚が決まる。
あれよあれよと結婚式当日になり、戸惑いながらも結婚を誓うウィリアムに、セドリックは優しいキスをして……。
そして迎えた初夜。わけもわからず悲しくなって泣くウィリアムを、セドリックはたくましい力で抱きしめる。
「お前がずっと、好きだ」
甘い言葉に、これまで熱を知らなかったウィリアムの身体が潤み、火照りはじめる。
※ムーンライトノベルズ、アルファポリス、pixivへ掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる