【完結】ごめんなさい、韓流スターにぞっこんな私は恋を放棄します。

西東友一

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最終話 恋を放棄します

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「おかえり」

「うん」

 駅で会う、私とショータ。

「あれっ、どうしたの?サングラスなんて珍しい」

「ちょっとね・・・」

 素直になれない自分が少し恥ずかしい。

「でも、夜道はさすがに見えないでしょ・・・あっ」

 ショータが優しくサングラスを外すのを私は微動だにせず立っていた。
 すると、私の目を見てショータが驚く。
 そして、ショータは寂しそうに笑う。

「なんか、感動することでもあった?」

(えぇ、あったわよ)

 ショータは私がライブで感動したと勘違いしているのだろう。

「ちょーーーーーっ、感動したっ!!」

「おっ、おう」

 さすがのショータも少し引いているけれど、それくらいショータがわたしのために影で努力してくれていたことが、私には嬉しかったのだ。
 私は家の方向へと歩き出す。

「さっ、行くわよ。ショータ」

「あっ、うん」

 私の後をショータが追いかけてきてくれて、隣り合って歩く私たち。
 私は緊張していた。
 なぜなら、ショータにちゃんと気持ちを伝えようと思っていたからだ。

◇◇

「・・・」

「・・・」

(私のヘタレっ!!)

 さんざんヒョン君には好き好き言えるのに、夜道を隣で歩いてくれるこいつにはなかなか言えない。

「あっ、あのさ」

「うん」

「・・・やっぱり、なんでもない」

「そっか」

 ショータは無表情だ。
 私が腫れた目をして、大事なことを言おうとしては止めるを繰り返す。
 ショータもいい話なのか、悪い話なのか不安なのかもしれない。

(言わないと・・・でも)

「ねぇ、秘密にしてることあるでしょ」

「えっ・・・なんかあったかな?」

「あるでしょ・・・」

「んーーーー」

 私のために影で努力してます、なんて絶対に言うはずはない。
 けれど、言ってくれたら私も言いやすい。
 とりあえず、話題をずらして気持ちを軽くしよう。

「あっ、レポートの話?」

「・・・うん」

 まぁ、深追いもできない私はとりあえず気のない相槌を打つ。

「今やってるのはね、伊勢物語」

「伊勢物語?異世界じゃなくて?」

「なんで、異世界のレポート出すんだよ」

「そのうち、ラノベも大学の講義に取り上げられるようになるよ、きっと」

「いや・・・、俺、アニメとか漫画専攻してないし・・・やってるの古文なんだけど」

「未来の人からすれば、古文になるんじゃない」

「そんな・・・横暴な・・・」

 ショータは呆れながら私を見るが、私は目を合わせない。

「・・・伊勢物語って・・・どんな話だっけ?」

「えーっと・・・」

 ショータは困った顔をする。

「もしかして、えっちな感じ?」

「ちっ、ちげーよ。ちげーけど・・・まぁ、恋の話」

「ふーん」

「聞いておいて、リアクション薄くないかな?」

「・・・」

 私はスマホを取り出して調べる。

「あーーー」

 上の空のような声でショータが声を出す。
 そんなに知られたくないようなのだろうか。

 伊勢物語。

「えーっと・・・幼馴染と結婚した男が浮気をする話ぃ?」

 私はギロっとショータを見るが、ショータは目を合わせない。
 仕方ないので私は適当に続きを読む。

「ねぇ・・・ショータ」

「なに?」

「浮気したいとか思ったことある?」

「ないよ」

 きっぱり言い切るショータ。

「私は・・・」

 恥ずかしくなる。
 そんな真っすぐなショータの隣を歩いているのが。

(別れた方がいいかもしれない・・・)

 私はスマホを閉じて、カバンに仕舞う。

「どうして、私に告白してきたの?」

「なんで、そんな昔の話を・・・」

「いいからっ」

 ショータは恥ずかしがる。
 でも、考えて口を動かした。

「輝いていたから」

「えっ?」

「なんか、好きなアイドルの話をして目をキラキラ輝かして・・・、すげーかわいいと思った」

 私は何も言わずにショータの話を聞いて歩く。

「でも、付き合ってまで他の男にそんな感じじゃ・・・嫌でしょ?」

「んーー、初めはね。すぐに振り向かせる自信あったからムカついたけど。今は・・・いいんだ」

「なんでよ・・・」

「アオイが楽しそうなのが一番だから」

(嘘つき)

 影で努力してるくせに。
 
(やっぱりだめだ。こんな私じゃ)

「ショータあのさ・・・」

 引き寄せられてびっくりする。

 チュッ

 唇を奪われた。

「そのうち、俺でメロメロにしてやるから覚悟しとけよ」

「あっ・・・」

 私は立ち止まって、言わなきゃいけないことを振り絞る。
 
「あんたは、ごはんなの・・・っ」

「はい?」

「ヒョン君はステーキなの。だから、毎日は食べれないのっ」

 ぽかーんとするショータ。
 
「わっ、私っ。ショータとは毎日一緒にいたいっ!!ショ、ショータのことが大好きっ」

 こんな夜中に叫んでご近所迷惑でしかない。

「ぷっ」

 ショータが笑った。

「アオイ、無理しなくていいよ」

「無理なんかじゃないっ。ショータが望むなら・・・ライブだって」

「ライブ欠乏症のアオイは見てられないもん。ちゃんと行ってください」

「でもっ!!」

 今度は抱きしめられた。

「いいんだよ、アオイが卒業するまでに俺がヒョンからアオイを奪い返す。心も体も。全部」

 温かいショータ。
 背が高くなったショータ。
 心地よい私だけの居場所。

(バーカっ。もうなってる。つーの・・・)

「じゃあ待つ、一生」

「一生って、かなり望み薄じゃん」

「ばーかっ」

 私は時間をかけてしまったけれど、推しメンを変更した。
 一生をかけていいアイドル・・・。
 ううん、偶像じゃないし、激しく燃え上がるような恋でもない。
 いつも私の傍にいてくれて、私を満たしてくれる・・・私の愛しい人。

「一生、一緒にいよっ、ショータ!」
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