【26話完結】日照りだから帰ってこい?泣きつかれても、貴方のために流す涙はございません。婚約破棄された私は砂漠の王と結婚します。

西東友一

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12.流れぬ涙。相容れぬ傘

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 ―――冷たい視線も辛かったが、温かい視線も―――

「おはようございます、ミシェル様」

「おはようございます」

「おはようございます、ミシェル様」

「おはようございます―――」

 ミシェルに対して、王宮の人々は皆優しく笑顔で接した。あの執事だったミライオですら、満面の笑みではなかったけれど、優しい顔をミシェルに向けてきて、ミシェルは少し驚いた。

(皆の期待に応えたい・・・・・・なのに、どうして・・・・・・・)

 ミシェルは泣けなかった。エバーガーデニア王国では嫌でもほぼ毎日泣いていたのにも関わらず、ガラハラ王国に来てから、泣こうと思ってもまったく泣けなかった。だから、皆の期待に応えられないのが辛くて、その辛さでいつもなら泣けるはずなのに、ミシェルは泣けなかった。

(もしかして、私の力は・・・エバーガーデニア王国の巫女としてしか駄目なの?)

 ミシェルはもしかしたら、自分は本当は泣くような人間ではなく、神が雨を降らしたい時に私から喜びなどの感情を奪い取り、その見返りに雨を降らせていたんじゃないかなどと、的外れなことまで考えていた。それくらい、彼女はガラハラ王国の人々の温かさにミシェルは苦しんでいた。

(ジェイドならば怒号がとぶ・・・きっと、ただ飯喰らいとか・・・)

『そんなことできるわけじゃないか・・・』

 ミシェルが自分のことを叩くように言った日、マハラジャはそう言って、涙目でミシェルを心配した。ミシェルは幼いころから雨乞いの巫女として厳しい修行を泣きながらしてきたので、そんな心配される目をされると、心が戸惑い、ある感情を期待してしまった。

(ばかばかっ。あれはその・・・男女のとかじゃなくて、そうっ。マハラジャ様が優しいだけ)

 そう、自分を律しようとしても、淡い期待を抱いてしまうミシェル。エバーガーデニア王国の街中で恋人たちが相合傘をしていたのを見ていた頃。友達すらおらず、誰とも相合傘をしたことがないミシェルには鯉なんて縁がない遠いことだと感じつつ、それでもいつかは・・・と心の奥底で羨ましい、と思っていたのをミシェルは思い出す。そして、ジェイドと婚約が偉い人たちの中で決まり、こんな自分でも結婚できると喜んだけれど、ジェイドは「この雨はお前のせいだろ」と言って、ミシェルから傘を奪ってミシェルがずぶ濡れになっても知らん顔のような人だった。

(マハラジャ様なら・・・)
 
 私が傘を持っていると傘の柄を取り上げられてしまう。上を見上げるとマハラジャのいつもの優しい笑顔がある。マハラジャはミシェルを気遣って傘の柄を持ってくれるのだけれど、ミシェルはマハラジャの優しさに触れていたいから、傘を持っているマハラジャの手を添えて、すると、マハラジャがまた笑って・・・

「やぁ、ミシェル」

 想像していたマハラジャの優しい笑顔が目の前に現れて、うっとり見つめてしまう。

「・・・・・・きゃっ」

 その事実に時間差で気が付いたミシェルはびっくりして変な声をあげてしまう。

「どうされましたか? ミシェル様」

 ミシェルの声に気が付いた侍女が慌てて駆けつけてきて、ミシェルは余計に恥ずかしかった。
 
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