【1羽完結】間違いだらけのクリスマス

西東友一

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「やはり、チキンだ」

 ルームシェアをしている森本は立ち上がった。

「・・・・・・」

 俺はちらっと森本を見て、再びスマホに目線を落とす。

「おい、リアクションしろよ」

 森本が俺を見ながら、そんなことを言う。

「あぁ、俺か」

 俺は自分の左右の後ろを見て、誰もいないのを確認する。

「いやいや、二人暮らしなんだから、お前に決まっているだろうが」

「急にチキンって言われても・・・・・・ね。あぁ、森本がチキって告白できなかったってことかい?」

「そうそう・・・って、ちゃうわっ!!」

 納得した顔をしたくせに、ノリツッコミをしてくる森本。

「クリスマス、チキン食おうぜ、チ・キ・ン」

「あぁ、そういうことか」

 そういえば、そろそろクリスマスだった。

「ボク、仏教だから肉は・・・」

「そうか、そうか。仏教徒はお肉食べられなかったから、ウサギの肉を1羽、2羽って数えるんよなーっ。って、仏教徒は鶏肉は食べられるだろっ!!」

「本当に?」

 ボクが疑った目で見ると、森本が少したじろぐ。

「しっ、調べるわ」

「いいよ、別に。ボクも肉食べるし」

 ボクはスマホを置いて、財布などを確認する。

「ボク、飲み物とか準備するから、チキンはよろしく」

「おっ、おう・・・任せとけっ。いいチキン買ってくるわっ!!」

 ボクらは二人で玄関まで行き、それぞれ担当の食材を買いに行った。

◇◇

「って、なんで、寿司買って来てんだよ」

 森本がボクの勝って来たものにケチをつける。

「いや、美味しそうだったから。でも、ちゃんと、ほらっ。お酒とおつまみ、あとケーキも勝って来たよ」

 ボクは勝って来たものを見せる。

「森本がお寿司食べないなら、いいよ。ボクだけで食べるから」

「いやいや、そうは言ってないだろう?」

 ボクがお寿司を隠そうとすると、森本が待ったをかける。
 まったく、現金なやつだ。

「森本は何買ってきたの?」

「そりゃもちろん・・・ほれっ」

 森本がでっかい鳥の原型を保った大きなチキンを出してきた。

「まじか・・・・・・」

 ボクは唖然とした。
 男二人だけで、まさかまるごとチキンを買ってくるとは。こういう時は、普通フライドチキンを箱で買うってもんだろう。

(いや・・・まぁ、森本はたくさん食べる奴だからチキン丸ごとでも・・・・・・まぁ、いいよ。一番問題なのは・・・)

「なんで、北京ダックなんだよ?」

「ん?」

 森本が純粋な少年のような顔をする。

(マジかーーーっ)

「これ、七面鳥じゃねーの?」

「違うね、ここ見てみ」

 ボクは値札を指さす。
 そこには、北京ダックと書かれていた。

(そのうえ、めっちゃ高いし)

 値段は言えないが、ボクの買ってきた寿司がかわいく見えるくらいな値段だった。

「おーーーーっ。でも、まぁ・・・・・・和食に、中華に、洋食に、和洋折中って感じでいいじゃねぇか」

「いやいや、今、絶対折衷のチュウの字。中だったでしょ。チュウってナカって言う字じゃないからね」

「えっ・・・・・・」

 顔芸かよ、ってツッコミたい顔をする森本。

「俺・・・返してくるわ」

 あぁ、森本がガチ凹みしている。
 いつも、元気な森本の顔が曇っていると、せっかくのパーティーが台無しだ。
 曇っているのは外だけでいい。

「まっ、せっかくだからいいんじゃない? 和洋中でも」

「いいのか?」

「でも、大晦日は質素に行くよ」

「おせちは・・・」

「なしだよ」

 見つめ合う森本とボク。
 でも、そこまでボクだってお金に余裕があるわけではないし、森本だってそうに違いない。だから、ここは妥協はできない。

「ぷっ」

 森本が目を大きくして、ぶりっ子みたいに目をパチパチしてきたから笑ってしまった。ボクが笑うと、森本もつられて笑った。

「でも、セツがないな」

 そう言って、冷蔵庫を開けて何かを探す森本。きっと、セツっぽいものを探しているのだろう。
 けれど、元々そんなに入っていない冷蔵庫。都合のいい物があるはずがない。森本は真剣な顔をして冷蔵庫を探しているけれど、そんなに長い間開けていると、電気代がもったいない。

「森本、アレはどう?」

 ボクは外を指さす。

「おおっ、雪だっ!!」

 森本がボクの手を引いて、ベランダへと向かう。
 こういう子どもっぽいところと、強引なところが森本の良いところだ。

「・・・セツだな」

 ニヤニヤしながら、ボクを見る森本。

「なんだよ」

 ボクは不貞腐れて、雪空を見る。
 森本に合わせて、しょうもないギャグを言ってしまった手前、恥ずかしい。
 ボクがもう一度、森本を見るとまだニヤニヤしている。

「さっ、セッツしようぜ」

「そこは、セットだろ」

 そう言って、肩を抱き合いながら、部屋の中に入った。

 チーンッ

「「ホワイトクリスマスッ」」

 今年のクリスマスは、少しずれているけれど、なんだかんだ、楽しいクリスマスだ。


 
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