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「えいっ」
私はろうそくに火を灯す。
これでもう、50本目。
適当に点けているわけじゃない。
魂を込めての50本目は本当に疲れてしまうが、
「ふふふっ、若さの秘訣だから仕方ないわよね」
私は妄想笑いをしてしまう。
火を点けたろうそくをゆっくり運んで、くりぬいたカボチャの中に入れると、
「キキキキキキキッ」
カボチャが瞬きをして三角の目と鼻、ギザギザの口が現れて、点滅しながら笑い出す。手を離しても、ろうそくは落ちて来ず、マントが現れて下から手と釜が現れる。
オーランタンの完成だ。
「さっ、キミもお願いね」
コクッと頷いたオーランタンは夜空へ飛んでいく。
狩のために。
「さぁ、今年はどれくらい集まるかしら」
私はのんびりと、ダージリンティーを飲む。
「うん、美味しい」
献血をしたように、疲れ切った私。でも、その疲れが心地いいし、出し切って疲れた体にダージリンティーが染みこんでくれる。新しい血はきっとダージリンティーで作られるだろう。そう考えると、嬉しい。
「キキキキキキッ」
「んっ・・・もう来たか」
最初に飛ばしたオーランタンが帰ってきた。ちゃんと、ナイトメアを持って来た。
たっぷりどす黒いナイトメア。美をキープするには必要な物は身体にいい食べ物や飲み物。きれいな血が造らなければ、きれいになれない。けれど、若さと魂の寿命はこれぐらい劇薬でないと伸びてはいかない。
「ふぅ、じゃあ・・・いただきますっ」
毎年のことだけど、最初の一口は勇気がいる。
「あむっ・・・」
決して不味いわけではない。
けれど、心臓が激しく鼓動を打つ。
「んんっ?」
今年のナイトメアは・・・
「美味しい?」
外側は真っ黒なのに、内側はとても真っ白。
「偽りの・・・恐怖? ははーんっわかった」
私は紅茶を飲む。
「あら、紅茶に合うじゃない」
私はゆっくりと紅茶を飲む。
すると、第二、第三のオーランタンが帰ってくる。
「まったく・・・みんなハロウィンを楽しんじゃって・・・子どもぐらい怯えさせたらどうなのかしら」
まぁ、悪くはない。
これでも、ちゃんと、寿命と若さを得られるのだから。
「でも、刺激がないと、ボケちゃうわよ・・・全く」
とはいえ、もしかしたら、徐々に成分は失われ、私もお婆ちゃんになってしまうかもしれない。
「まったく・・・誰よ・・・ハロウィンにハッピーを付けた人は・・・っ。頭、お花畑じゃないの?」
私は外を見ると、オーランタンのオレンジの光が空にたくさん舞っていた。
「ふぅ・・・まったくこの景色は最高ね。頭、お花畑になりそうね」
ちょっとこの庭園から出てしまえば、人工衛星ってのが私たちを監視する。全く持って、人外の魔女には生きづらい世の中だ。
「みんな元気にしているのか・・・それとも・・・」
この世界に絶望して死んでしまったか。
どちらにしても、私も飽きてきてしまった。
「よしっ、私もハッピーハロウィンってのを楽しみますかっ」
日本に送ったオーランタンたちのエネルギーをたっぷり吸いこんで、覚悟を決める。さてさて、母国のハロウィンはどうなっていることやら・・・。
「わくわくするわっ!!」
fin
私はろうそくに火を灯す。
これでもう、50本目。
適当に点けているわけじゃない。
魂を込めての50本目は本当に疲れてしまうが、
「ふふふっ、若さの秘訣だから仕方ないわよね」
私は妄想笑いをしてしまう。
火を点けたろうそくをゆっくり運んで、くりぬいたカボチャの中に入れると、
「キキキキキキキッ」
カボチャが瞬きをして三角の目と鼻、ギザギザの口が現れて、点滅しながら笑い出す。手を離しても、ろうそくは落ちて来ず、マントが現れて下から手と釜が現れる。
オーランタンの完成だ。
「さっ、キミもお願いね」
コクッと頷いたオーランタンは夜空へ飛んでいく。
狩のために。
「さぁ、今年はどれくらい集まるかしら」
私はのんびりと、ダージリンティーを飲む。
「うん、美味しい」
献血をしたように、疲れ切った私。でも、その疲れが心地いいし、出し切って疲れた体にダージリンティーが染みこんでくれる。新しい血はきっとダージリンティーで作られるだろう。そう考えると、嬉しい。
「キキキキキキッ」
「んっ・・・もう来たか」
最初に飛ばしたオーランタンが帰ってきた。ちゃんと、ナイトメアを持って来た。
たっぷりどす黒いナイトメア。美をキープするには必要な物は身体にいい食べ物や飲み物。きれいな血が造らなければ、きれいになれない。けれど、若さと魂の寿命はこれぐらい劇薬でないと伸びてはいかない。
「ふぅ、じゃあ・・・いただきますっ」
毎年のことだけど、最初の一口は勇気がいる。
「あむっ・・・」
決して不味いわけではない。
けれど、心臓が激しく鼓動を打つ。
「んんっ?」
今年のナイトメアは・・・
「美味しい?」
外側は真っ黒なのに、内側はとても真っ白。
「偽りの・・・恐怖? ははーんっわかった」
私は紅茶を飲む。
「あら、紅茶に合うじゃない」
私はゆっくりと紅茶を飲む。
すると、第二、第三のオーランタンが帰ってくる。
「まったく・・・みんなハロウィンを楽しんじゃって・・・子どもぐらい怯えさせたらどうなのかしら」
まぁ、悪くはない。
これでも、ちゃんと、寿命と若さを得られるのだから。
「でも、刺激がないと、ボケちゃうわよ・・・全く」
とはいえ、もしかしたら、徐々に成分は失われ、私もお婆ちゃんになってしまうかもしれない。
「まったく・・・誰よ・・・ハロウィンにハッピーを付けた人は・・・っ。頭、お花畑じゃないの?」
私は外を見ると、オーランタンのオレンジの光が空にたくさん舞っていた。
「ふぅ・・・まったくこの景色は最高ね。頭、お花畑になりそうね」
ちょっとこの庭園から出てしまえば、人工衛星ってのが私たちを監視する。全く持って、人外の魔女には生きづらい世の中だ。
「みんな元気にしているのか・・・それとも・・・」
この世界に絶望して死んでしまったか。
どちらにしても、私も飽きてきてしまった。
「よしっ、私もハッピーハロウィンってのを楽しみますかっ」
日本に送ったオーランタンたちのエネルギーをたっぷり吸いこんで、覚悟を決める。さてさて、母国のハロウィンはどうなっていることやら・・・。
「わくわくするわっ!!」
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