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「なんじゃとっ!!?」
大臣の声で多くの人々が集まってくる。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・っ」
他の兵士が水が入った革袋を持ってくると、戦場から帰ってきた兵士はこぼしながらも必死な顔で美味しそうに飲む。
「それは間違いないのかっ!?」
「はいっ・・・。これがリチャード王子からの書簡です」
兵士は懐から大事そうに書簡を取り出し、両手で大臣に献上する。大臣は封が確かにリチャードの物か、開けた跡がないか入念に確認した後、急いで封を開けて内容を読む。
「まさか・・・そんな・・・っ」
大臣はびっくりした顔をしていたけれど、その後は人が変わったかのように指示を出した。まず、この情報が他国はもちろん、ごく一部の人間以上に広がらないように情報統制をしていた。そんな大臣は私を見つけると、きりっとした目で見定めるかのように見たけれど、
「アリア様・・・ちょっとこちらへ」
大臣は私を人気のないところへと呼び出した。
大臣は私にむやみに他言しないようにときつく言った。もし、漏らせばリチャードの客人であっても殺さなければならないと真剣な目で大臣は私に忠告したので、私もその言葉を深く心に刻んで頷いた。
大臣は頭も回る人だったけれど、誠実な人で、私にどうしてか理由まで教えてくれた。
要約すると、ザクセンブルク公国にも、王家で私の国と同じように派閥争いがあるらしく、ザクセンブルク公国も近しい親族は一緒に王宮に住んでいるけれど、少し離れたところに住んでいる一部の親族は王位を狙っているらしい。
そして、追ってくるであろうワルタイト王国に対しての迎撃の準備水面下で始めた。
私にはどの人物がリチャードに近しい人なのか、敵になりうる存在なのか、全く見当もつかなかったけれど、大臣が何食わぬ顔をして話をするか、暗号とはいかないけれど、隠語を用いて会話するかなどで、なんとなくリチャードに近しい人なのか、そうでないのか察することができるようになった。
私やリチャードのように顔に出てしまう人間にはなかなか難しいことをできるこの大臣は優秀な人物なんだと、私は感服した。
そして、数日後、リチャードが帰ってきた。
父親を亡くしたリチャード。
心ここにあらず、といった彼の顔を見ているのは、痛々しくて見ていられなかった。
リチャードを迎えた大臣は、
「おかえりなさいませ」
と頭を下げて、細かいことは言わず、ただ書簡だけ献上した。
きっと、今のザクセンブルク公国の現状と自分がしておいたことを書きこんであるのだろう。
「それで・・・王は・・・っ」
私は大臣が強い人で傷つくこともなく、仕事を淡々とこなす責務に操られた人形のような人に感じていた。けれどそれは違って、大臣は仮面を被っていただけで、やはり長年仕えてきた国王のことはどうしても気になったらしく、無礼を承知でリチャードに懇願するように尋ねる。
すると、リチャードは後ろの兵士たちの少し先を見た。
その場所へ大臣は走り、その目線の先にあった棺で足を止める。
大臣が着くと、兵士たちがその棺を下げた。
「国王・・・っ」
大臣は大臣という責務の糸がプツンと切れて、感情人となってわんわん泣いていた。
あんな凛々しかった大臣が大泣きしている。
その姿はとても痛々しくもあり、みすぼらしくもあり、そして・・・美しかった。
「さぁ、さっさと歩けっ!!」
兵士たちが太い紐で縛った人物を連れて来た。
捕虜にしてはあまりにもみすぼらしい白髪の男。齢は老人に違いない。それもたった一人しか連れてきていないということはその男が、暗殺者なのだろう。私はその男を見る。
戦争は嫌いだけれど、暗殺なんて卑劣な行為をするのはもっと不義理で浅ましく、もっと嫌だ。
だって、私のお父様やお母様も事故に見せかけて、不意打ちで死んだのだとすれば、あまりに無念で許せないもの。
「うそ・・・っ」
私は憎むようにその男を見たけれど、縛り上げられた目つきの悪いその男と目が合い、びっくりした。
なぜなら、その暗殺者は、私が良く知る人物だった。
大臣の声で多くの人々が集まってくる。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・っ」
他の兵士が水が入った革袋を持ってくると、戦場から帰ってきた兵士はこぼしながらも必死な顔で美味しそうに飲む。
「それは間違いないのかっ!?」
「はいっ・・・。これがリチャード王子からの書簡です」
兵士は懐から大事そうに書簡を取り出し、両手で大臣に献上する。大臣は封が確かにリチャードの物か、開けた跡がないか入念に確認した後、急いで封を開けて内容を読む。
「まさか・・・そんな・・・っ」
大臣はびっくりした顔をしていたけれど、その後は人が変わったかのように指示を出した。まず、この情報が他国はもちろん、ごく一部の人間以上に広がらないように情報統制をしていた。そんな大臣は私を見つけると、きりっとした目で見定めるかのように見たけれど、
「アリア様・・・ちょっとこちらへ」
大臣は私を人気のないところへと呼び出した。
大臣は私にむやみに他言しないようにときつく言った。もし、漏らせばリチャードの客人であっても殺さなければならないと真剣な目で大臣は私に忠告したので、私もその言葉を深く心に刻んで頷いた。
大臣は頭も回る人だったけれど、誠実な人で、私にどうしてか理由まで教えてくれた。
要約すると、ザクセンブルク公国にも、王家で私の国と同じように派閥争いがあるらしく、ザクセンブルク公国も近しい親族は一緒に王宮に住んでいるけれど、少し離れたところに住んでいる一部の親族は王位を狙っているらしい。
そして、追ってくるであろうワルタイト王国に対しての迎撃の準備水面下で始めた。
私にはどの人物がリチャードに近しい人なのか、敵になりうる存在なのか、全く見当もつかなかったけれど、大臣が何食わぬ顔をして話をするか、暗号とはいかないけれど、隠語を用いて会話するかなどで、なんとなくリチャードに近しい人なのか、そうでないのか察することができるようになった。
私やリチャードのように顔に出てしまう人間にはなかなか難しいことをできるこの大臣は優秀な人物なんだと、私は感服した。
そして、数日後、リチャードが帰ってきた。
父親を亡くしたリチャード。
心ここにあらず、といった彼の顔を見ているのは、痛々しくて見ていられなかった。
リチャードを迎えた大臣は、
「おかえりなさいませ」
と頭を下げて、細かいことは言わず、ただ書簡だけ献上した。
きっと、今のザクセンブルク公国の現状と自分がしておいたことを書きこんであるのだろう。
「それで・・・王は・・・っ」
私は大臣が強い人で傷つくこともなく、仕事を淡々とこなす責務に操られた人形のような人に感じていた。けれどそれは違って、大臣は仮面を被っていただけで、やはり長年仕えてきた国王のことはどうしても気になったらしく、無礼を承知でリチャードに懇願するように尋ねる。
すると、リチャードは後ろの兵士たちの少し先を見た。
その場所へ大臣は走り、その目線の先にあった棺で足を止める。
大臣が着くと、兵士たちがその棺を下げた。
「国王・・・っ」
大臣は大臣という責務の糸がプツンと切れて、感情人となってわんわん泣いていた。
あんな凛々しかった大臣が大泣きしている。
その姿はとても痛々しくもあり、みすぼらしくもあり、そして・・・美しかった。
「さぁ、さっさと歩けっ!!」
兵士たちが太い紐で縛った人物を連れて来た。
捕虜にしてはあまりにもみすぼらしい白髪の男。齢は老人に違いない。それもたった一人しか連れてきていないということはその男が、暗殺者なのだろう。私はその男を見る。
戦争は嫌いだけれど、暗殺なんて卑劣な行為をするのはもっと不義理で浅ましく、もっと嫌だ。
だって、私のお父様やお母様も事故に見せかけて、不意打ちで死んだのだとすれば、あまりに無念で許せないもの。
「うそ・・・っ」
私は憎むようにその男を見たけれど、縛り上げられた目つきの悪いその男と目が合い、びっくりした。
なぜなら、その暗殺者は、私が良く知る人物だった。
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