上 下
4 / 6
分岐ルート

恵犯人ルート

しおりを挟む
 宗一郎さんと栄太さんに部屋を確認してもらい、貴重品等は盗まれていなそうということは確認した。その後、部屋に他の部屋に誰もいないか全員で確認したが、誰もいなかった。

 外から見ても、さっき二階から見た情報とほとんど変わらなかった。

「犯人は恵さん。あなたですね」

 恵さんは両手を胸の前で握りながら、猫背になって震えていたが、その言葉を聞いて震えは止まる。

「・・・はいっ」

 諦めたように恵さんは頷く。

「いやっ、そんなことはっ!!きっと、強盗が!!」

 宗一郎さんが叫ぶように否定する。

「いいえ・・・宗一郎さん。それは無理です。なぜなら、僕はずーっとこのロビーにいました。そして、二階にいたのは恵さんしかいません。仮に飛び降りたとしても、怪我をする高さです」

「でも、母ちゃんの身体じゃ、静江を殺せ・・・」

「いいえ、腰を伸ばすストレッチのように背中で背負えば殺すことは可能です。例えば、僕でも宗一郎さんを殺せます」

 栄太さんと宗一郎を見て、僕は前屈するような仕草を取る。

「しかし・・・」

 拳を握り締める宗一郎さん。

「先ほどの恵さんもそんな風に拳を震わせて、階段を登っていきました。些細な口ゲンカが原因か・・・。いや、ロープがあったということは積み重なった殺意があったかもしれませんね。階段を登っていくときはロープを持っていませんでしたから。計画的殺人ですね」

「何より・・・お二人が否定しても本人が認めています」

 みんなが恵さんを見る。
 恵さんはみんなを見る。

「・・・はい、私がやりました。今後藤様がおっしゃったとおりです。ごめんなさい、あなた、栄太・・・っ。私がいなくても元気で暮らしてね。私のせいでこのペンションに人が来なくなったら・・・自由に暮らしてね・・・っ」

「くっ」

「くそっ」

 恵さんは涙を流しながら二人とハグして、一言、二言会話を交わす。
 その後、やってきた警察官に連れられて、恵さんはパトカーに捕まって行く。

「本当に・・・恵さんが犯人だったのかなぁ・・・」

「自白は証拠の王様さ」

「でも・・・なんで、私たちが来た時にあんなことをしたのかな?」

「うーん・・・っ」

「だって、計画的な殺人なら私たちの行動も気にするんじゃないの?」

「うーん、普通の事件なんてそんなもんだよ。人を殺したいって人はそれだけで頭がいっぱいになってるから。冷静な判断ができるなら・・・人を殺すなんて・・・ね」

 寒い。
 心も体も。

 事情聴取もあったりして、このペンションで僕たちも泊まることができなくなり、仕方なく、また車で帰ることになった。

(とほほっ、また6時間くらいかけて運転しなければいけないのか・・・)
しおりを挟む

処理中です...