1 / 6
1
しおりを挟む
「シズク、楽しんでおいで」
「はいっ、ありがとうございます。お父様」
青空の下。
先に馬車から降りた私はお父様に声を掛けられたので、振り返る。心を落ち着けて、優雅にスカートの袖を持ってお辞儀をすると、お父様は嬉しそうに頭を撫でてくださる。私の大大大好きな、かっこいい自慢のお父様。その大きくて優しい手で撫でられると、それがくすぐったくて、恥ずかしくて、思わず微笑んでしまう。お父様の目元が少し疲れているけれど、私たちを養うために頑張ってくださっていると思うと、それも胸キュンだ。
「王子様のハートを射止めてきちゃいなさい」
お母様が胸のあたりで小さなガッツポーズをする。お母様だけれど、本当に可愛らしい。おっちょこちょいで普段は頼りないけれど、人の良いところをすぐに見つけて、褒めることのできる心優しい女性だ。私と弟のロロの2人を生んだとは思えないくらいスタイルがよくて羨ましい。私も彼女のようにスタイル良くなれるのかしら?
(って、自分の母親を彼女呼ばわりするなんてはしたないわね)
私は自分を戒める。でも、どうも前世の記憶を引き継いだ私からしてしまうと、お母様は同い年かちょっと年下くらいに感じてしまうのだ。彼女みたいな女性が前世の私の身の回りにいたら、世界は変わっていただろうなと思ってしまう。
「なにをおっしゃっているんですか、お母様。私は年上がタイプなんです。なんなら、お父様みたいなかっこいい人がいいです」
本当は年上がタイプという訳ではない。ドはまりしていた訳じゃないけれど、20歳前後の男性アイドルグループのコンサートに行ったことだってあるし、鍛え上げられた年下の胸板や、腹筋にドキッとしてしまうことだってあった。しかし、重ね重ねだが、私は前世の記憶が残っており、前世では享年30歳だ。まだ王子とお会いしたことはないけれど、さすが10歳の誕生日を迎える王子の顔や身体に惚れるような私ではない。
「ダーリンは渡さないんだからっ!!」
「はっはっはっはっ」
お母様がお父様の腕をしがみつき、胸を当てている。お父様も私とお母様の両方から愛されていると言われて嬉しそうに笑っている。さっきより、ホッとしている顔をしている気がするのは気のせいだろうか。
「この子は本当におませさんなんだから」
(これでも、今の身体の年相応にしようと頑張っているんだけどなぁ)
私は笑いながら、こめかみのあたりをポリポリと掻いた。さすがに、神様が特殊能力を与えて転生させてくれると言って喜んだけれど、「転生」って言葉の意味を深く考えていなくて、15歳くらいからリスタートだと思ってしまったけれど、がっつり生まれたところからスタートだったので結構焦った。
「じゃあ、行ってきますね。お父様、お母様」
私が挨拶すると、二人は温かいまなざしで小さく頷いた。
赤ちゃんだったときは言葉も上手く喋れなくて、ため息をつきたくなったけれど、こんな優しい二人の子どもとして、10年も一緒にいれて本当に良かったと思う。
(子どもらしく楽しもうっと)
国内最大級のガーデンパーティー。
イェーロー王国の長男、レイモンド・イェーロ―王子の10歳の誕生日を祝う盛大なパーティーだと私は認識していた。けれど、貴族の間ではレイモンド王子のいい相手を見つける会だと噂されていたとはこの時の私は全く知らなかった。
「はいっ、ありがとうございます。お父様」
青空の下。
先に馬車から降りた私はお父様に声を掛けられたので、振り返る。心を落ち着けて、優雅にスカートの袖を持ってお辞儀をすると、お父様は嬉しそうに頭を撫でてくださる。私の大大大好きな、かっこいい自慢のお父様。その大きくて優しい手で撫でられると、それがくすぐったくて、恥ずかしくて、思わず微笑んでしまう。お父様の目元が少し疲れているけれど、私たちを養うために頑張ってくださっていると思うと、それも胸キュンだ。
「王子様のハートを射止めてきちゃいなさい」
お母様が胸のあたりで小さなガッツポーズをする。お母様だけれど、本当に可愛らしい。おっちょこちょいで普段は頼りないけれど、人の良いところをすぐに見つけて、褒めることのできる心優しい女性だ。私と弟のロロの2人を生んだとは思えないくらいスタイルがよくて羨ましい。私も彼女のようにスタイル良くなれるのかしら?
(って、自分の母親を彼女呼ばわりするなんてはしたないわね)
私は自分を戒める。でも、どうも前世の記憶を引き継いだ私からしてしまうと、お母様は同い年かちょっと年下くらいに感じてしまうのだ。彼女みたいな女性が前世の私の身の回りにいたら、世界は変わっていただろうなと思ってしまう。
「なにをおっしゃっているんですか、お母様。私は年上がタイプなんです。なんなら、お父様みたいなかっこいい人がいいです」
本当は年上がタイプという訳ではない。ドはまりしていた訳じゃないけれど、20歳前後の男性アイドルグループのコンサートに行ったことだってあるし、鍛え上げられた年下の胸板や、腹筋にドキッとしてしまうことだってあった。しかし、重ね重ねだが、私は前世の記憶が残っており、前世では享年30歳だ。まだ王子とお会いしたことはないけれど、さすが10歳の誕生日を迎える王子の顔や身体に惚れるような私ではない。
「ダーリンは渡さないんだからっ!!」
「はっはっはっはっ」
お母様がお父様の腕をしがみつき、胸を当てている。お父様も私とお母様の両方から愛されていると言われて嬉しそうに笑っている。さっきより、ホッとしている顔をしている気がするのは気のせいだろうか。
「この子は本当におませさんなんだから」
(これでも、今の身体の年相応にしようと頑張っているんだけどなぁ)
私は笑いながら、こめかみのあたりをポリポリと掻いた。さすがに、神様が特殊能力を与えて転生させてくれると言って喜んだけれど、「転生」って言葉の意味を深く考えていなくて、15歳くらいからリスタートだと思ってしまったけれど、がっつり生まれたところからスタートだったので結構焦った。
「じゃあ、行ってきますね。お父様、お母様」
私が挨拶すると、二人は温かいまなざしで小さく頷いた。
赤ちゃんだったときは言葉も上手く喋れなくて、ため息をつきたくなったけれど、こんな優しい二人の子どもとして、10年も一緒にいれて本当に良かったと思う。
(子どもらしく楽しもうっと)
国内最大級のガーデンパーティー。
イェーロー王国の長男、レイモンド・イェーロ―王子の10歳の誕生日を祝う盛大なパーティーだと私は認識していた。けれど、貴族の間ではレイモンド王子のいい相手を見つける会だと噂されていたとはこの時の私は全く知らなかった。
0
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる