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真夏に入った頃、
「どうして、どうして、どうしてっ!?」
ベディが殿方からのお見合いお断りの手紙を破り捨てていく。
彼女の怒りは真夏の気温をさらに上昇させているのではないかと思うくらい激しかった。
「ちょっと、シャドーっ。どういうことっ!? 全然上手く行かないじゃないっ!!」
「そっ、それはわたくしに言われましても・・」
「はぁ!? アンタ、あんだけドヤってきたんだから、ちゃんといい男見つけてきなさいよっ!? 私に恥をかかす気? ほんとっ、使えないわね」
その言葉を聞いたシャドーは少し、ムッとした顔をしてネクタイを直す。
「失礼ですが、ベディ様。わたくしの役目はベディ様の条件の男をご案内していくこと。こうしてお見合いが上手く行かないのは、わたくしに言われましても、困ります」
シャドーの口調は感情的だったが、ベディに対してのお辞儀は背筋が伸びており、とても綺麗で体は崩さなかった。
「あなたねぇ、馬鹿なの? お父様が死ぬ前に私は結婚しなきゃいけないのっ。あのねぇ、結婚しない男とのくだらない時間なんて無駄なの。む・だっ」
「無駄という割にはベディ様は大変楽しそうにしていらっしゃいましたが」
ボソっと言ったシャドー。けれど、火に油を注いだようでベディの口調はさらにギアを上げる。
「はぁ!? そりゃ、アナタが結婚する相手を見つけてきたと信じているからでしょ?」
「そう申されましても、お見合いの第一声で「結婚式はグランアレンで行いたい」と言われるお嬢様にも問題があるかと・・・」
「はぁ!? はぁ!? はああああっっ!? 私と結婚するのよ? この国で一番いい結婚式場以外ありえないでしょ? まさか、グランアレンで結婚できないような甲斐性がない男を連れてきてたの!?」
「そんなことはございません」
「なら、なんでよ」
「失礼ながら、私個人の意見を述べさせていただきます。私がベディ様のような素敵な方であっても、第一声がそれであったならば、引いてしまいます」
「じゃあ、第一声変えるから、もう一度セッティングしなさいよ」
そう言うと、シャドーは書類をめくっていき、
「では、次はバーナード様で裕福さは中の中、見た目はやや・・・」
「ちょちょちょっ」
ベディが口を挟むと、シャドーが読むのを止める。
「私は、もう一度セッティングしなさいって言ったの」
「はい、ですから次の」
ベディがわざとらしいため息をつく。
「始めの男、クリティアーノからよ」
「・・・お嬢様、第一印象はそうは簡単に変わりません」
「あーーじゃあ、ろくでもない男を練習台にすれば良かったっ!!! あーあ、あなたの作戦、失敗よ、失敗っ!!」
そんな二人のやり取りを見て、お見合いも楽じゃないと傍観していた私の肩を誰かが叩いた。振り向いてみると、マチルダさんだった。
「アネモネ様、お見合いの返事だそうです」
「ありがとう」
私はペーパーナイフで封を切る。
(お見合いは難しいみたいだし・・・私も・・・・・・)
「えっ」
「どうされました?」
マチルダさんは手紙を覗き込むような人ではない。もう一度振り返ると、少し離れていたけれど、私の顔を見てすぐに近づいてきてくれた。
「ぜひ、婚約を申し込ませて欲しい・・・ですって」
「はああああああっ!!!!!?」
東にはジャイパングという国があり、その国では夏に「セミ」という虫がとてもうるさく鳴くらしい。けれど、ベディのこの声は絶対にその虫よりもけたたましく、鼓膜が破けるかと思った。
「どうして、どうして、どうしてっ!?」
ベディが殿方からのお見合いお断りの手紙を破り捨てていく。
彼女の怒りは真夏の気温をさらに上昇させているのではないかと思うくらい激しかった。
「ちょっと、シャドーっ。どういうことっ!? 全然上手く行かないじゃないっ!!」
「そっ、それはわたくしに言われましても・・」
「はぁ!? アンタ、あんだけドヤってきたんだから、ちゃんといい男見つけてきなさいよっ!? 私に恥をかかす気? ほんとっ、使えないわね」
その言葉を聞いたシャドーは少し、ムッとした顔をしてネクタイを直す。
「失礼ですが、ベディ様。わたくしの役目はベディ様の条件の男をご案内していくこと。こうしてお見合いが上手く行かないのは、わたくしに言われましても、困ります」
シャドーの口調は感情的だったが、ベディに対してのお辞儀は背筋が伸びており、とても綺麗で体は崩さなかった。
「あなたねぇ、馬鹿なの? お父様が死ぬ前に私は結婚しなきゃいけないのっ。あのねぇ、結婚しない男とのくだらない時間なんて無駄なの。む・だっ」
「無駄という割にはベディ様は大変楽しそうにしていらっしゃいましたが」
ボソっと言ったシャドー。けれど、火に油を注いだようでベディの口調はさらにギアを上げる。
「はぁ!? そりゃ、アナタが結婚する相手を見つけてきたと信じているからでしょ?」
「そう申されましても、お見合いの第一声で「結婚式はグランアレンで行いたい」と言われるお嬢様にも問題があるかと・・・」
「はぁ!? はぁ!? はああああっっ!? 私と結婚するのよ? この国で一番いい結婚式場以外ありえないでしょ? まさか、グランアレンで結婚できないような甲斐性がない男を連れてきてたの!?」
「そんなことはございません」
「なら、なんでよ」
「失礼ながら、私個人の意見を述べさせていただきます。私がベディ様のような素敵な方であっても、第一声がそれであったならば、引いてしまいます」
「じゃあ、第一声変えるから、もう一度セッティングしなさいよ」
そう言うと、シャドーは書類をめくっていき、
「では、次はバーナード様で裕福さは中の中、見た目はやや・・・」
「ちょちょちょっ」
ベディが口を挟むと、シャドーが読むのを止める。
「私は、もう一度セッティングしなさいって言ったの」
「はい、ですから次の」
ベディがわざとらしいため息をつく。
「始めの男、クリティアーノからよ」
「・・・お嬢様、第一印象はそうは簡単に変わりません」
「あーーじゃあ、ろくでもない男を練習台にすれば良かったっ!!! あーあ、あなたの作戦、失敗よ、失敗っ!!」
そんな二人のやり取りを見て、お見合いも楽じゃないと傍観していた私の肩を誰かが叩いた。振り向いてみると、マチルダさんだった。
「アネモネ様、お見合いの返事だそうです」
「ありがとう」
私はペーパーナイフで封を切る。
(お見合いは難しいみたいだし・・・私も・・・・・・)
「えっ」
「どうされました?」
マチルダさんは手紙を覗き込むような人ではない。もう一度振り返ると、少し離れていたけれど、私の顔を見てすぐに近づいてきてくれた。
「ぜひ、婚約を申し込ませて欲しい・・・ですって」
「はああああああっ!!!!!?」
東にはジャイパングという国があり、その国では夏に「セミ」という虫がとてもうるさく鳴くらしい。けれど、ベディのこの声は絶対にその虫よりもけたたましく、鼓膜が破けるかと思った。
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