【完結】6番街の裏道

西東友一

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「6番街・・・」

 いつの間にか霧が濃くなっている街。いろんな大人の顔を見上げるけれど、見知った顔は一人もいない。それに、どこかみんな怖い顔というか、心がないような顔をしていた。

「どうしようか・・・」

 不安と言えば、不安。
 だけれど、帰りたくないのも事実。

「ちょっと覗くだけ・・・なら」

 夕暮れは過ぎている。
 夜の街は危ないと言われているけれど、まだ大丈夫なはず・・・。

 僕はゆっくりと歩き出す。
 そろそろ街灯が点灯をしだして、霧の中ボワッと光るのが幻想的で綺麗だった。いつもは、パパとママが着いてこいと言ってくる場所にしかいけないし、ずーっとはぐれないように背中を見ていたけれど、今は自由でちょっとした不安が僕のワクワクを助長させた。

 自分の行きたい場所に歩いていける。
 一歩、歩くごとにほんのわずかだったけれど、怒りや悲しい気持ちは薄れていった。

「ここかな?」

 いくつか裏道っぽいところはあった。だけど、なぜだか、あのお婆ちゃんが言っている裏道ではない気がしていた僕だったけれど、その道に出会った瞬間、そこがお婆ちゃんの言っている道だとなんとなくわかった。

「ゴクリッ」

 固唾を飲むと、喉が大きくなる。
 光が届かない場所。夜の街も初めての僕は今でもドキドキしているけれど、もっと知らない世界。今よりも不安の割合が大きくなる・・・。

「よしっ」

 僕は気合を入れて、その曲がり角へと向かっていく。誰もその曲がり角になんて全く興味が無さそうで、まるで僕だけのために用意されたような気がしてきた。曲がり角まで1歩のところまで行くと、鼓動が少し早くなる。

(それっ)

 僕は勇気を出して、曲がり角の先を覗き込む。

「あれ・・・・・・行き止まり?」

 夜目になりつつあったとは言え、ほとんど光がないその先に目を凝らして見て見るけれど、特にこれと言ったものがあるわけではなく、隣の店のゴミ箱や木箱があるだけで、一番奥はレンガで行き止まりになっていた。

「なーんだ・・・っ」

 残念な気もしたけれど、ホッとする気持ちの方が大きかった。

(まぁ、これぐらいかな・・・)

 僕は引き返そうと、後ろを振り返る。

「えっ?」

 さっきよりも多い・・・でも、違う。

(人じゃ・・・ない?)

 みんな仮装をしていた。
 それに、人間以外で直立二足歩行をする動物を僕は知らない。けれど、人間の赤ちゃんと猿の赤ちゃんを見間違わないのと同じように本能がそう告げていた。目の前にいる彼らは人ならざるものだと。
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