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1 それ、『私』です

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「はぁ!?信じられない」

 ヴィーダが大声を出す。さも、周りにも聞いてほしい様子で。効果があったようで周りのメイドさんなどが何事かとこちらを見てくる。

「もう一度、言ってくださるかしら?お姉様」

 ヴィーダが下手糞な演技っぽい口調で再度訪ねてくる。

「だから、私はあなた方の結婚式には参加いたしません」

 私はにこっと笑顔で返した。

「まぁまぁ、やだやだお姉様。もしかして、嫉妬しているのかしら?愛する人を妹のこのわたくしに取られたからって!!」

(はぁ・・・あんたたちはお似合いのカップルだよ・・・っ。なんでそうやって、すぐにドヤ顔ができるのか知りたいわよ)

 ヴィーダはマウントを取るように大きな声で自分の方が魅力があると誇示するように横目で私を見てくる。
 双子がゆえにほとんど自分と同じ顔なのだが、こんな憎たらしい顔は私にはできないからある意味関心してしまう。

「別にそういうわけではありません。その日は都合が悪いからそう伝えているんです。それに、その日はあなたが結婚するには相応しくない日だと『予知』した日ではなかったのですか?」

 私はあくまでも、平然として妹に答える。だって、フーリン王子との結婚だって、フーリン王子が何度も求愛してきたからだ。

 仕方なく結婚した未来の私は『未来予知』を十二分に駆使してようやくそれなりの生活を送れるくらい、フーリン王子がへっぽこで大変苦労していたし、そんな未来が億劫だった。

 じゃあ、なんで結婚を受け入れたかと言うと、結婚しなかったら、しなかったで、この器と身長の小さいこのバカ王子は結婚しないとバートン家に嫌がらせをする未来も見えていたので仕方なくだった。

 妹は私が手に入れたものを欲しいと言う気持ちと、王女という肩書きに惚れたのだろうが、はっきり言ってフーリン王子は事故物件だ。

「ふんっ、未来は変わったのよ。というより、変えてやったの、このわたくしが」

 胸と腰に手を当ててドヤ顔をするヴィーダ。

「お姉様もご存じでしょ。このわたくしの『予知』の力を」

「・・・」

「ふふっ」

 私が黙っていると、ヴィーダは勝ち誇ったような顔をしている。

「そうでしたー、すごいわー、ヴィーダーーー」

 私はまた大根芝居のように棒読みで喋ると、

「おーーーーっほっほっほっ、そうでしょ、そうでしょ」

 キリカさん以上に鈍くて能天気なヴィーダは嬉しそうに笑った。
 
 そして、お気づきの方もいるかもしれませんが、ヴィーダの『予知能力』。

 それ、『私の能力』です。










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