家柄が悪いから婚約破棄? 辺境伯の娘だから芋臭い? 私を溺愛している騎士とお父様が怒りますよ?

西東友一

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本編 婚約破棄編(仮)

22 アーサー視点

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 馬に乗って、大分時間が経ち、朝日が昇る頃出発したのに、そろそろ夕日が沈む。

「姫さん、そろそろ休もうか?」

「ううん、もう少し、行きましょ・・・、もう少し」

 これで、何度目だろうか。俺が姫さんに休みを提案して断られるのは。

「でも、そろそろ俺は腹が減ったぜ?」

 そんなに腹は減ってはいないが、やつれてきた姫さんを横で見ているのも辛いから、俺は昼ご飯の時と同じように俺は、姫さんに提案した。

「何言ってるのよ、お昼はさっき食べたばかりじゃない」

 確かにそうだ。

 昼食を取るのだって、姫さんはなかなか渋って、おやつの時間になる少し前ぐらいに昼食を取った。昼寝が必要だとなんとか粘って、姫さんの食休みの時間を確保したけれど、もしあのまま行っていれば、いくら領主の娘として乗馬を嗜んだことがある姫さんだからといって、乗馬にはまだまだ不慣れだし、こんな悪路なら、胃が揺れて苦しくなったに違いない。

(疲れさせ切った方がいいのだろうか)

 ウォーリー伯爵と別れてから、姫さんはずーっとテンションが高かった。俺も俺で、ウォーリー伯爵に信頼されて嬉しくて舞い上がっていて、姫さんもそういう気分なのだろうかと思っていたけれど、どうやら気持ちを無理やり高ぶらせているみたいだ。だから、心の方はずーっとオンのままで昼食でも気を張っていたし、心配だ。でも、俺の言葉が入り込む余地が姫さんの心にないようだから、俺よりは体力のない姫さんを自然の摂理に任せて、とことん疲れさせて眠らせる方がいいのかもしれない。ただ、一番最悪なのが、疲れていても興奮状態で休むことができないパターンだ。今の姫さんを見ていると、なんとなく長年の勘で、どんどん疲弊していってしまうような気がした。

「いや、でも、そいつも・・・疲れてるぜ?」

 俺は馬を指さした。乗馬が不慣れだと、乗っている人間にも負担がかかるが、馬の方にも負担がかかる。それに、馬は敏感な動物だ。姫さんの張りつめた感じに応えようとしつつも、その緊張感が精神的ストレスにもなっているのが明らかだった。

「・・・・・・」

 姫さんは、欲しいお菓子が貰えない子どものような歯がゆい顔をしたままなかなか答えてくれなかった。けれど、 姫さんは優しい女性だ。すぐに答えを出さなくても、ちゃんとわかってくれるはずだ。

「じゃあ・・・・・・あそこまで」

 姫さんは坂道が終わったなだらかな場所を指さす。あそこなら、野営にも適しているだろう。

「了解、もう少しだ。頑張ろうぜっ」

 そう言って、俺はミシェルが乗っている馬の頭を撫でてやると、馬も嬉しそうに足取りが元気になった。
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