46 / 68
それが褒美なの?
しおりを挟む
それから、何かとマリアナ王女がエリーゼ王女と会う機会を作ってくれた。
廊下ですれ違ったりする程度ではあったが……。
マリアナ王女は会う度に何かと話掛けてきて、俺がエリーゼ王女と言葉を交わせる様にしてくれていた。
何故かミリアリア王女にも、俺の気持ちはバレていた。
二人がどう考えているのか分からないが、王女達の協力もあって、以前よりエリーゼ王女との距離は縮まっていた。( と、思う)
**
俺は十八歳になった。
この頃には、魔獣術師としての力は、テス師匠を超えていた。師匠とは別に各地を飛び回り、魔獣捕獲や討伐に参加する毎日を送っていた。
もう訓練は必要ないが、その日は久しぶりに師匠と会うために、城の訓練所に向かった。
「ジーク、この前の魔獣捕獲良くやったなぁ」
「ありがとうございます、テス師匠」
「師匠は止めろ、もうお前の方が力も、使役できる魔獣の数も多いんだからよ」
「はい、じゃあテスって呼びます」
そう言うとテス師匠は眉間に皺を寄せた。
「やっぱダメだ。今まで通り師匠と呼べ、じゃなきゃテス様だ」
「……テス様はねぇよ」
「そうか? 以外と似合う気がすんだけどな、ガハハ!」
くだらない話をした後、師匠と別れ、館へ戻ろうと廊下を歩いていた。
前方から、普段ここを通る事がないエリーゼ王女が、侍女達と歩いて来る。
「あら、ジークじゃない……もう、帰るの?」
「……はい」
あきらかに不自然な態度をとるエリーゼ王女。そんな彼女を、俺はジッと見つめた。その後ろでは、侍女達が俺を見て頬を染めている。
「……そう、これから何かするのかしら?」
「館に戻るだけです。今日はもう何もすることも無いですし……」
俺が見つめていると、エリーゼは持っていた扇子を広げ、口元を隠し目を逸らした。
「じゃあ、お茶を飲ませてあげるから一緒に来なさい」
「……えっ?」
( 俺を誘ってくれてる?)
「私が言っているのよ、来ないとは言わないでしょうね」
何だか、エリーゼ王女の頬が赤くなっている様に見える。……赤い扇子の色が映っているだけだろうか……
「はい! 行きます!」
「そんな大きな声を出さないで!」
**
エリーゼ王女に連れて行かれたのは、城の二階にあるサロンだった。
エリーゼ王女と俺が席に着くと、侍女達はお茶をテーブルに並べ、部屋を出て行った。
二人きりだ……。
今まで、ほんの数回お茶に呼ばれた事はあったが、それはマリアナ王女様か、ミリアリア王女様が誘ってくれた時だけだ。こんな風にエリーゼ王女から誘われたのは初めてだ……。
それに、随分久しぶりに顔を見た気がする。
二ヶ月ぶりか……
俺の前に座るエリーゼ王女は、静かに紅茶を飲んでいる。
長い睫毛が縁取る綺麗な緑色の目。揃えられた白く繊細な指先に思わず見惚れてしまう。(……また、キレイになった )
「あなた、凄いんですってね……お父様が誉めていらしたわ」
「……ありがとうございます」
「……何か欲しい物はあるのかしら」
「欲しい物?」
( 何故急に欲しい物を聞いてくるんだ?)
「お父様が、あなたに褒美を与えるそうよ。それで何か欲しい物はないか、何故か私に聞いてくる様に言われたのよ」
(……ああ、そうか)
エリーゼ王女は、優雅な仕草でカップを口に運ぶ。
「何でもいいのですか?」
「いいわよ」
「じゃ……じゃあ、エリーゼ王女様の事を今から『エリーゼ』と呼ぶ様にする、というのでもいいでしょうか?」
ぐっ、エリーゼ王女は紅茶を喉に詰まらせた。
ケホケホと咳込み胸を叩く。
「そ、それが褒美なの⁈ 」
彼女は目を見開き、俺を見た。
「はい、俺にとっては……この上なく」
俺は微笑み、彼女を見る。エリーゼ王女はすぐに目を逸らし、なんだか恥ずかしそうに言った。
「エリーゼと呼ぶのはダメよ……他の呼び方なら……構わなくてよ」
「じゃあ『エリー』?」
「それもダメ」
「リーゼ?」
「それもダメよ、私だとすぐに分かってしまうわ」
「エリーゼ王女様を呼ぶのに分かるとダメって……」
( どう言う事だよ?)
「じゃあ……『リー』でもいいですか?」
「……いいわ、それで」
「敬語を止めても?」
「どうしてよっ」
「俺、稀代の魔獣術師だから、それに歳上だし」
「訳が分からないわ…………勝手にしなさい」
それから俺は、エリーゼ王女様を『リー』と呼ぶ様になった。
『リー』と呼ぶたびに、ツンと拗ねた様な顔をする彼女はめっちゃ可愛い。
**
今から一年程前だ。
偶然なのか、廊下ですれ違ったリーが足を止め俺に聞いて来た。
「ねぇジーク、あなた城の中に魔獣を呼び出せる?」
「……何するつもり?」
「今度のお茶会で、オスカー様とエスター様にショーをしてもらおうかと思っているの」
「ショー?」
オスカーなら瞬殺だし、問題はないか……そんな軽い気持ちで引き受けた。
( リーの頼みなら断ったりしない )
「出来るけど……必ず剣を持たせて置くんだよ、約束だからね」
「……分かったわ」
こうして王妃主催のお茶会で魔獣を召喚した。
オスカーとエスター令息もいる。多少獰猛な魔獣だが問題ないなと思っていたが、何故か彼等は剣帯していなかった。
( リー、なんて事を……)
見ている側で、通りかかったメイドの女の子が魔獣に傷つけられてしまった。
「ちょ……⁈ 」
こんなはずじゃない! けれどこの距離では、俺に魔獣を消す事は出来ない。側に行かないと……
( ピカリムぐらいの物なら移動させる事は出来るけど ……)
エスター令息がその子を抱え、凄い速さで城の中へ走っていく。
侍従が剣を運んでくると、オスカーがあっという間に魔獣を始末した。すると、王妃様が魔獣を退治したオスカーに、リーとの婚約を迫っている。
( 何だ、それが目的だったのか……王妃様も知らないのか、あの事)
*
怪我をしたメイドの子は助かった。しかし、完治する前に治療室から逃げる様に出て行った。( 何か訳あり?)
その後、今度はマリアナ王女が頼みがある、と言ってきた。
「俺はリーの頼みしか聞かないよ」
「そんなに難しい事じゃないわ、お姉様の知り合いとしての貴方に頼みたいの」
「何それ、知り合い?」
「そうよ、だって友達でも恋人でも婚約者でもないでしょう? たまにしか合わない人なら知り合いでしょう?」
「……そうだな」
「たまにでも会えたり、話が出来る様にして上げたのは誰のお陰かしら⁈ 」
「君……かな」
「そうよね? だったら私の頼みも聞きなさい」
マリアナ王女に強要され、俺はエスターの『花』を攫うことになった。
「簡単に見つからない所にして! 魔獣も出して、その女が魔獣に食べられちゃってもいいから!」
「……分かった」
竜獣人の『花』を攫うか……マリアナ王女は後の事は考えていないのか? そんな事したら、エスター令息に嫌われるだろう⁈
それに……ヤツらに見つけられない所なんてあるのかよ。
( いや、逆にすぐ見つけられる所にしてやる )
この間の茶会での事に、内心腹が立っていた俺が思いついたのは『北の塔』だった。
十年ほど前、ガイア公爵が軽々と登っていったあの塔。結局俺は一度も登って見た事が無かった。
どんな所か見てやろう、と下見がてらに入った北の塔の最上階は……
「ココって……もしかして竜獣人が『花』を連れ込む部屋だったりして」
そこは女受けしそうな部屋だった。
敷いてある絨毯はフカフカで、寝転んでも痛くは無いだろう。無駄に置いてあるクッションはどれも柔らかくカラフルな布で作られている。
「はっ? なんで風呂まであるんだ? 下には備蓄倉庫まであんのか……ここ、住めるんじゃねぇの?」
あの時見たガイア公爵は…………俺はまだ子供だったから分からなかったが……そういう事か……
俺は北の塔の噂の真相を理解した。
エスター令息の力量は分からないが、二体ぐらいは余裕だろうと魔獣を飛ばし、透明な鎖で塔の周りに繋いだ。
**
色々あった結果、マリアナ王女は隣国の王子と結婚した。まあ、お似合いだと思う。
マリアナ王女が旅立ったその日、偶然を装って俺はリーと会った。
「行っちゃったね、マリアナ王女様」
「……バカな子よね」
彼女は、少しだけ寂しそうな顔をして、庭園に咲く花を見ながら話す。
「リーは、まだ……オスカーの事、諦めないの?」
「そうね、オスカー様に『花』が現れたら、諦めるしか無いわね」
「諦めてどうするの」
「どうもしないわ」
「結婚は? しないの?」
彼女ももう二十歳になった。この国ならば、とうに結婚していてもおかしくは無い歳だ。
「私は、いずれ王位を継がなければならないもの……お父様が決めた相手と結婚するわ」
諦めた様な顔をして、エリーゼは言う。
「……知らないの? 君もシャーロット嬢誘拐の件に関わっているから、王位継承権はミリアリア王女に移ったんだよ。だから結婚は、誰としてもいいんだってさ」
「そんなの……知らないわ」
「聞いてなかったんだろ?」
「…………」
「王様が決めた相手と結婚してもいいのなら……俺と結婚しない? 実はもう、王様から許可も貰ってる」
一瞬目を見開いたリーは、俺の顔をジッと見た。
「ジークは……相変わらず私が好きなのね」
「知ってたの?」
「……知ってたわよ。誰だって気づくでしょう、最初にあった頃は女の子みたいだったのに……髪型もオスカー様と同じ様にするし、いつも……ジークは分かり易いのよ」
「バレてたのか」
「オスカー様に『花』が現れてしまったなら……考えてもいいわ」
「それって……俺と結婚してもいいって事?」
「……そうね、お父様が良いと言っているのなら……いいわ」
「……本当? 本当に? 本当⁈ 」
「本当、本当ってうるさいわっ」
あの時、少し頬を染めたリーはそう言った。
言った‼︎
**
そして現在にもどる。
「リーはそんなにオスカーがいいの?」
「……ずっと好きだったもの」
「俺もずっと君が好きだ」
「…………」
エリーゼは拗ねた様に何も話さない。
「分かったよ、リー、ちゃんと話をしよう」
ジークはいつもより少し低い声でそう言うと、エリーゼの手を取り外へ出た。
廊下ですれ違ったりする程度ではあったが……。
マリアナ王女は会う度に何かと話掛けてきて、俺がエリーゼ王女と言葉を交わせる様にしてくれていた。
何故かミリアリア王女にも、俺の気持ちはバレていた。
二人がどう考えているのか分からないが、王女達の協力もあって、以前よりエリーゼ王女との距離は縮まっていた。( と、思う)
**
俺は十八歳になった。
この頃には、魔獣術師としての力は、テス師匠を超えていた。師匠とは別に各地を飛び回り、魔獣捕獲や討伐に参加する毎日を送っていた。
もう訓練は必要ないが、その日は久しぶりに師匠と会うために、城の訓練所に向かった。
「ジーク、この前の魔獣捕獲良くやったなぁ」
「ありがとうございます、テス師匠」
「師匠は止めろ、もうお前の方が力も、使役できる魔獣の数も多いんだからよ」
「はい、じゃあテスって呼びます」
そう言うとテス師匠は眉間に皺を寄せた。
「やっぱダメだ。今まで通り師匠と呼べ、じゃなきゃテス様だ」
「……テス様はねぇよ」
「そうか? 以外と似合う気がすんだけどな、ガハハ!」
くだらない話をした後、師匠と別れ、館へ戻ろうと廊下を歩いていた。
前方から、普段ここを通る事がないエリーゼ王女が、侍女達と歩いて来る。
「あら、ジークじゃない……もう、帰るの?」
「……はい」
あきらかに不自然な態度をとるエリーゼ王女。そんな彼女を、俺はジッと見つめた。その後ろでは、侍女達が俺を見て頬を染めている。
「……そう、これから何かするのかしら?」
「館に戻るだけです。今日はもう何もすることも無いですし……」
俺が見つめていると、エリーゼは持っていた扇子を広げ、口元を隠し目を逸らした。
「じゃあ、お茶を飲ませてあげるから一緒に来なさい」
「……えっ?」
( 俺を誘ってくれてる?)
「私が言っているのよ、来ないとは言わないでしょうね」
何だか、エリーゼ王女の頬が赤くなっている様に見える。……赤い扇子の色が映っているだけだろうか……
「はい! 行きます!」
「そんな大きな声を出さないで!」
**
エリーゼ王女に連れて行かれたのは、城の二階にあるサロンだった。
エリーゼ王女と俺が席に着くと、侍女達はお茶をテーブルに並べ、部屋を出て行った。
二人きりだ……。
今まで、ほんの数回お茶に呼ばれた事はあったが、それはマリアナ王女様か、ミリアリア王女様が誘ってくれた時だけだ。こんな風にエリーゼ王女から誘われたのは初めてだ……。
それに、随分久しぶりに顔を見た気がする。
二ヶ月ぶりか……
俺の前に座るエリーゼ王女は、静かに紅茶を飲んでいる。
長い睫毛が縁取る綺麗な緑色の目。揃えられた白く繊細な指先に思わず見惚れてしまう。(……また、キレイになった )
「あなた、凄いんですってね……お父様が誉めていらしたわ」
「……ありがとうございます」
「……何か欲しい物はあるのかしら」
「欲しい物?」
( 何故急に欲しい物を聞いてくるんだ?)
「お父様が、あなたに褒美を与えるそうよ。それで何か欲しい物はないか、何故か私に聞いてくる様に言われたのよ」
(……ああ、そうか)
エリーゼ王女は、優雅な仕草でカップを口に運ぶ。
「何でもいいのですか?」
「いいわよ」
「じゃ……じゃあ、エリーゼ王女様の事を今から『エリーゼ』と呼ぶ様にする、というのでもいいでしょうか?」
ぐっ、エリーゼ王女は紅茶を喉に詰まらせた。
ケホケホと咳込み胸を叩く。
「そ、それが褒美なの⁈ 」
彼女は目を見開き、俺を見た。
「はい、俺にとっては……この上なく」
俺は微笑み、彼女を見る。エリーゼ王女はすぐに目を逸らし、なんだか恥ずかしそうに言った。
「エリーゼと呼ぶのはダメよ……他の呼び方なら……構わなくてよ」
「じゃあ『エリー』?」
「それもダメ」
「リーゼ?」
「それもダメよ、私だとすぐに分かってしまうわ」
「エリーゼ王女様を呼ぶのに分かるとダメって……」
( どう言う事だよ?)
「じゃあ……『リー』でもいいですか?」
「……いいわ、それで」
「敬語を止めても?」
「どうしてよっ」
「俺、稀代の魔獣術師だから、それに歳上だし」
「訳が分からないわ…………勝手にしなさい」
それから俺は、エリーゼ王女様を『リー』と呼ぶ様になった。
『リー』と呼ぶたびに、ツンと拗ねた様な顔をする彼女はめっちゃ可愛い。
**
今から一年程前だ。
偶然なのか、廊下ですれ違ったリーが足を止め俺に聞いて来た。
「ねぇジーク、あなた城の中に魔獣を呼び出せる?」
「……何するつもり?」
「今度のお茶会で、オスカー様とエスター様にショーをしてもらおうかと思っているの」
「ショー?」
オスカーなら瞬殺だし、問題はないか……そんな軽い気持ちで引き受けた。
( リーの頼みなら断ったりしない )
「出来るけど……必ず剣を持たせて置くんだよ、約束だからね」
「……分かったわ」
こうして王妃主催のお茶会で魔獣を召喚した。
オスカーとエスター令息もいる。多少獰猛な魔獣だが問題ないなと思っていたが、何故か彼等は剣帯していなかった。
( リー、なんて事を……)
見ている側で、通りかかったメイドの女の子が魔獣に傷つけられてしまった。
「ちょ……⁈ 」
こんなはずじゃない! けれどこの距離では、俺に魔獣を消す事は出来ない。側に行かないと……
( ピカリムぐらいの物なら移動させる事は出来るけど ……)
エスター令息がその子を抱え、凄い速さで城の中へ走っていく。
侍従が剣を運んでくると、オスカーがあっという間に魔獣を始末した。すると、王妃様が魔獣を退治したオスカーに、リーとの婚約を迫っている。
( 何だ、それが目的だったのか……王妃様も知らないのか、あの事)
*
怪我をしたメイドの子は助かった。しかし、完治する前に治療室から逃げる様に出て行った。( 何か訳あり?)
その後、今度はマリアナ王女が頼みがある、と言ってきた。
「俺はリーの頼みしか聞かないよ」
「そんなに難しい事じゃないわ、お姉様の知り合いとしての貴方に頼みたいの」
「何それ、知り合い?」
「そうよ、だって友達でも恋人でも婚約者でもないでしょう? たまにしか合わない人なら知り合いでしょう?」
「……そうだな」
「たまにでも会えたり、話が出来る様にして上げたのは誰のお陰かしら⁈ 」
「君……かな」
「そうよね? だったら私の頼みも聞きなさい」
マリアナ王女に強要され、俺はエスターの『花』を攫うことになった。
「簡単に見つからない所にして! 魔獣も出して、その女が魔獣に食べられちゃってもいいから!」
「……分かった」
竜獣人の『花』を攫うか……マリアナ王女は後の事は考えていないのか? そんな事したら、エスター令息に嫌われるだろう⁈
それに……ヤツらに見つけられない所なんてあるのかよ。
( いや、逆にすぐ見つけられる所にしてやる )
この間の茶会での事に、内心腹が立っていた俺が思いついたのは『北の塔』だった。
十年ほど前、ガイア公爵が軽々と登っていったあの塔。結局俺は一度も登って見た事が無かった。
どんな所か見てやろう、と下見がてらに入った北の塔の最上階は……
「ココって……もしかして竜獣人が『花』を連れ込む部屋だったりして」
そこは女受けしそうな部屋だった。
敷いてある絨毯はフカフカで、寝転んでも痛くは無いだろう。無駄に置いてあるクッションはどれも柔らかくカラフルな布で作られている。
「はっ? なんで風呂まであるんだ? 下には備蓄倉庫まであんのか……ここ、住めるんじゃねぇの?」
あの時見たガイア公爵は…………俺はまだ子供だったから分からなかったが……そういう事か……
俺は北の塔の噂の真相を理解した。
エスター令息の力量は分からないが、二体ぐらいは余裕だろうと魔獣を飛ばし、透明な鎖で塔の周りに繋いだ。
**
色々あった結果、マリアナ王女は隣国の王子と結婚した。まあ、お似合いだと思う。
マリアナ王女が旅立ったその日、偶然を装って俺はリーと会った。
「行っちゃったね、マリアナ王女様」
「……バカな子よね」
彼女は、少しだけ寂しそうな顔をして、庭園に咲く花を見ながら話す。
「リーは、まだ……オスカーの事、諦めないの?」
「そうね、オスカー様に『花』が現れたら、諦めるしか無いわね」
「諦めてどうするの」
「どうもしないわ」
「結婚は? しないの?」
彼女ももう二十歳になった。この国ならば、とうに結婚していてもおかしくは無い歳だ。
「私は、いずれ王位を継がなければならないもの……お父様が決めた相手と結婚するわ」
諦めた様な顔をして、エリーゼは言う。
「……知らないの? 君もシャーロット嬢誘拐の件に関わっているから、王位継承権はミリアリア王女に移ったんだよ。だから結婚は、誰としてもいいんだってさ」
「そんなの……知らないわ」
「聞いてなかったんだろ?」
「…………」
「王様が決めた相手と結婚してもいいのなら……俺と結婚しない? 実はもう、王様から許可も貰ってる」
一瞬目を見開いたリーは、俺の顔をジッと見た。
「ジークは……相変わらず私が好きなのね」
「知ってたの?」
「……知ってたわよ。誰だって気づくでしょう、最初にあった頃は女の子みたいだったのに……髪型もオスカー様と同じ様にするし、いつも……ジークは分かり易いのよ」
「バレてたのか」
「オスカー様に『花』が現れてしまったなら……考えてもいいわ」
「それって……俺と結婚してもいいって事?」
「……そうね、お父様が良いと言っているのなら……いいわ」
「……本当? 本当に? 本当⁈ 」
「本当、本当ってうるさいわっ」
あの時、少し頬を染めたリーはそう言った。
言った‼︎
**
そして現在にもどる。
「リーはそんなにオスカーがいいの?」
「……ずっと好きだったもの」
「俺もずっと君が好きだ」
「…………」
エリーゼは拗ねた様に何も話さない。
「分かったよ、リー、ちゃんと話をしよう」
ジークはいつもより少し低い声でそう言うと、エリーゼの手を取り外へ出た。
41
あなたにおすすめの小説
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
子供が可愛いすぎて伯爵様の溺愛に気づきません!
屋月 トム伽
恋愛
私と婚約をすれば、真実の愛に出会える。
そのせいで、私はラッキージンクスの令嬢だと呼ばれていた。そんな噂のせいで、何度も婚約破棄をされた。
そして、9回目の婚約中に、私は夜会で襲われてふしだらな令嬢という二つ名までついてしまった。
ふしだらな令嬢に、もう婚約の申し込みなど来ないだろうと思っていれば、お父様が氷の伯爵様と有名なリクハルド・マクシミリアン伯爵様に婚約を申し込み、邸を売って海外に行ってしまう。
突然の婚約の申し込みに断られるかと思えば、リクハルド様は婚約を受け入れてくれた。婚約初日から、マクシミリアン伯爵邸で住み始めることになるが、彼は未婚のままで子供がいた。
リクハルド様に似ても似つかない子供。
そうして、マクリミリアン伯爵家での生活が幕を開けた。
【完結】初恋の人に嫁ぐお姫様は毎日が幸せです。
くまい
恋愛
王国の姫であるヴェロニカには忘れられない初恋の人がいた。その人は王族に使える騎士の団長で、幼少期に兄たちに剣術を教えていたのを目撃したヴェロニカはその姿に一目惚れをしてしまった。
だが一国の姫の結婚は、国の政治の道具として見知らぬ国の王子に嫁がされるのが当たり前だった。だからヴェロニカは好きな人の元に嫁ぐことは夢物語だと諦めていた。
そしてヴェロニカが成人を迎えた年、王妃である母にこの中から結婚相手を探しなさいと釣書を渡された。あぁ、ついにこの日が来たのだと覚悟を決めて相手を見定めていると、最後の釣書には初恋の人の名前が。
これは最後のチャンスかもしれない。ヴェロニカは息を大きく吸い込んで叫ぶ。
「私、ヴェロニカ・エッフェンベルガーはアーデルヘルム・シュタインベックに婚約を申し込みます!」
(小説家になろう、カクヨミでも掲載中)
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
召喚先は、誰も居ない森でした
みん
恋愛
事故に巻き込まれて行方不明になった母を探す茉白。そんな茉白を側で支えてくれていた留学生のフィンもまた、居なくなってしまい、寂しいながらも毎日を過ごしていた。そんなある日、バイト帰りに名前を呼ばれたかと思った次の瞬間、眩しい程の光に包まれて──
次に目を開けた時、茉白は森の中に居た。そして、そこには誰も居らず──
その先で、茉白が見たモノは──
最初はシリアス展開が続きます。
❋他視点のお話もあります
❋独自設定有り
❋気を付けてはいますが、誤字脱字があると思います。気付いた時に訂正していきます。
【完結】幼な妻は年上夫を落としたい ~妹のように溺愛されても足りないの~
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
この人が私の夫……政略結婚だけど、一目惚れです!
12歳にして、戦争回避のために隣国の王弟に嫁ぐことになった末っ子姫アンジェル。15歳も年上の夫に会うなり、一目惚れした。彼のすべてが大好きなのに、私は年の離れた妹のように甘やかされるばかり。溺愛もいいけれど、妻として愛してほしいわ。
両片思いの擦れ違い夫婦が、本物の愛に届くまで。ハッピーエンド確定です♪
ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/07/06……完結
2024/06/29……本編完結
2024/04/02……エブリスタ、トレンド恋愛 76位
2024/04/02……アルファポリス、女性向けHOT 77位
2024/04/01……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる