10 / 179
本編
第9 初めての事 3
しおりを挟む
そのまま身動きが取れなくなったレフラの方へ、その武官の腕が伸ばされてくるのが見えていた。
(や、イヤだ、怖い、ギガイ様ーーー!!)
思わずギュッと目をつぶる。その身体が一瞬で後方へと引き寄せられ、そのままフワリと持ち上げられた。
馴染んだ感触と温かさが、レフラの身体を包み込む。
怯えて強張った身体はすっかり冷えきっていたのだろう。触れ合う所から体温がゆっくりと伝わってくる。
その温もりに励まされるように恐々と目を開いて見上げれば、ギガイの蜂蜜色の目がレフラを心配げに見つめていた。
どこよりも安心できる場所だった。ギガイの腕の中に収まっていることを確認した身体から、力が抜けて震え出す。
「こ、こわ、かった…ぎ、がい、さま……こわかった…」
「あぁ、もう大丈夫だ」
耳元からも聞き慣れたギガイの声音が聞こえてくる。それと同時に身体をさする掌も優しくレフラを宥めていた。
「どういうつもりだ、威圧は使うなと言ったはずだ」
だが背に添えられた温もりの優しさに反して、次に聞こえてきた声音はあまりに冷酷な響きを持っていた。
恐る恐る、視線をギガイが睨む方へ向けてみる。
いつの間にいつもの3人も訓練棟へ来ていたのだろう。
エルフィルとリランの2人の剣が、レフラが最後に見た武官の喉元に左右から突きつけられている状況だった。その上、ギガイに抱えられているレフラの前にも、ラクーシュがレフラを庇うように剣を構えて立っている。
そんな初めて見るひどく険しい表情の3人の姿に、レフラは驚いて目を瞬いた。
「答えろ。どういうつもりで意に背いた」
「も、もうしわけ、ございません…あや、まって……とっさに行って、しまったので、本当に、意に背くつもりが、あった訳では、ございません……」
やはりまだ周りと比べれば、だいぶ若く見える武官だった。真っ青な顔でガタガタと震えている様子からは、嘘を吐いているようには思えない。
いまだ怯えは残っていた。それでも、そんな武官の様子にレフラの胃の辺りがキュッと引き攣っていく。
だけどそんな若い武官の様子を前にしても、ギガイだけではなくリラン達の張り詰めた空気さえ緩む様子は見られなかった。
「話しに成らないな。貴様は同じようなことを戦場で言って通じると思っているのか」
ギガイの言っている言葉は理解はできる。
1つの連携ミスが下手をすれば命に関わることだってあるはずなのだ。命令に反した者が許される前例を作ることも好ましくないことだって分かっていた。
レフラと違ってギガイは多くの民の命を背負っているのだ。
だからいくら冷酷に見えようとも、覇者として立つギガイが決めたことなら、黙って受け入れるつもりはある。
それでもそんなレフラが戸惑ってしまうほどに、顔を青ざめたその武官は、あまりにまだ若く未熟に見えていた。
だからこそ、レフラはギガイへ聞かずにはいられない状況だった。
(や、イヤだ、怖い、ギガイ様ーーー!!)
思わずギュッと目をつぶる。その身体が一瞬で後方へと引き寄せられ、そのままフワリと持ち上げられた。
馴染んだ感触と温かさが、レフラの身体を包み込む。
怯えて強張った身体はすっかり冷えきっていたのだろう。触れ合う所から体温がゆっくりと伝わってくる。
その温もりに励まされるように恐々と目を開いて見上げれば、ギガイの蜂蜜色の目がレフラを心配げに見つめていた。
どこよりも安心できる場所だった。ギガイの腕の中に収まっていることを確認した身体から、力が抜けて震え出す。
「こ、こわ、かった…ぎ、がい、さま……こわかった…」
「あぁ、もう大丈夫だ」
耳元からも聞き慣れたギガイの声音が聞こえてくる。それと同時に身体をさする掌も優しくレフラを宥めていた。
「どういうつもりだ、威圧は使うなと言ったはずだ」
だが背に添えられた温もりの優しさに反して、次に聞こえてきた声音はあまりに冷酷な響きを持っていた。
恐る恐る、視線をギガイが睨む方へ向けてみる。
いつの間にいつもの3人も訓練棟へ来ていたのだろう。
エルフィルとリランの2人の剣が、レフラが最後に見た武官の喉元に左右から突きつけられている状況だった。その上、ギガイに抱えられているレフラの前にも、ラクーシュがレフラを庇うように剣を構えて立っている。
そんな初めて見るひどく険しい表情の3人の姿に、レフラは驚いて目を瞬いた。
「答えろ。どういうつもりで意に背いた」
「も、もうしわけ、ございません…あや、まって……とっさに行って、しまったので、本当に、意に背くつもりが、あった訳では、ございません……」
やはりまだ周りと比べれば、だいぶ若く見える武官だった。真っ青な顔でガタガタと震えている様子からは、嘘を吐いているようには思えない。
いまだ怯えは残っていた。それでも、そんな武官の様子にレフラの胃の辺りがキュッと引き攣っていく。
だけどそんな若い武官の様子を前にしても、ギガイだけではなくリラン達の張り詰めた空気さえ緩む様子は見られなかった。
「話しに成らないな。貴様は同じようなことを戦場で言って通じると思っているのか」
ギガイの言っている言葉は理解はできる。
1つの連携ミスが下手をすれば命に関わることだってあるはずなのだ。命令に反した者が許される前例を作ることも好ましくないことだって分かっていた。
レフラと違ってギガイは多くの民の命を背負っているのだ。
だからいくら冷酷に見えようとも、覇者として立つギガイが決めたことなら、黙って受け入れるつもりはある。
それでもそんなレフラが戸惑ってしまうほどに、顔を青ざめたその武官は、あまりにまだ若く未熟に見えていた。
だからこそ、レフラはギガイへ聞かずにはいられない状況だった。
20
あなたにおすすめの小説
こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡
なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。
あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。
♡♡♡
恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる