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本編
第33 移り香を咎めて 12
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「今ではマテ茶で解毒もできれば対策も可能な毒だが、あの毒は本来、傀儡を作り上げることを目的とした毒で、下手をすれば廃人にだってされかねない。それをこの程度の毒は平気なはずだ、と人に擦り付けながら閨に誘っている状況で本気なはずはないだろう。だからそんなに気にするな」
そう言いきったギガイが堪えるような表情を浮かべていたレフラの頬を優しく何度も撫でていく。
「……本当ですか?」
それでも不安なのだろう。向けられた目は薄らと涙が揺れていた。
「大丈夫だ、気にするな」
眦に指を添えて拭ってやる。安心させるように頷けば、少し迷うような表情を浮かべた後に、レフラがコクッと頷いた。
本当の所はあの白族長が本気かどうかなど、1度も気を払ったことさえないのだから分かってはいなかった。
『七部族の長でいらっしゃるギガイ様ですもの、私程度の毒などものともされないはず。それに万が一にでも効けば、私を寝台へ招いて下さるでしょう?』
会う都度にそう言って首筋へ手を伸ばしてきていた姿を思えば、本気の可能性の方が高いかもしれない。だがギガイにとってはレフラの負担さえなくなれば、あの者の真意などどうでも良いことだった。
(どちらにしても、レフラにとって憂いとなるものは、取り除くことには変わらないからな)
それに、そんなことよりもいまはレフラのことだった。
レフラの頬にかかる髪を掻き上げてやりながら、フッと思わずギガイの口元が綻んだ。
「それにしても……嫉妬をしていたのか」
その後に続けた言葉も、ガラにもないような声音だった。
だけど。
抱き上げて欲しいと腕を伸ばしていたのも、首筋へ額を擦り付けていたのも、茶を取りに行こうとした時のベッドの上での様子も。
全てギガイが他の誰かを抱き寄せたと勘違いをした嫉妬からのものなのだ。改めてその姿を思い返せば、泣かせてしまった後ろめたさがありながらも、どうしても顔が綻んでしまう。
「誤解は解けたか?」
ギガイの言葉やその態度に、本当に心配することは無かったのだとようやく安心した様子だった。ついさっきまで思い悩んでいるように見えていた表情がだんだん変わっていき、今では紅くなって気まずそうに視線をさまよわせていた。
このままだとスネられそうだと思いながらも、唯一無二としている者から向けられた独占欲が嬉しくないはずがない。
その姿にも思わず笑ってしまえば、眦を紅く染めたレフラが恨めしそうににらんでくる。
「……だって、知らなかったんです。仕方ないじゃないですか。それなのにそんな風に笑わなくたって……」
「いや、私だけを強請っていた姿が嬉しくてな」
むくれて尖らせていた唇に軽く唇を触れ合わせていく。
「強請ることがただでさえ苦手なお前だ。そんなお前が一生懸命強請ったのが私の腕の中だと思えば、幸せにも感じればお前への愛おしさだってさらに増してくる」
キスのために近付いた距離で微笑めば、レフラの顔はますます真っ赤になって熱くなっていた。
「もともと私が抱えるのはお前だけだ。あんな風に強請らなくとも、お前だけのものだ。だから安心しろ」
真っ赤な顔にもキスを落とせば、レフラの掌がギガイの唇を覆ってきた。過去にもあったその行動に、ギガイが目を瞬かせた。
そう言いきったギガイが堪えるような表情を浮かべていたレフラの頬を優しく何度も撫でていく。
「……本当ですか?」
それでも不安なのだろう。向けられた目は薄らと涙が揺れていた。
「大丈夫だ、気にするな」
眦に指を添えて拭ってやる。安心させるように頷けば、少し迷うような表情を浮かべた後に、レフラがコクッと頷いた。
本当の所はあの白族長が本気かどうかなど、1度も気を払ったことさえないのだから分かってはいなかった。
『七部族の長でいらっしゃるギガイ様ですもの、私程度の毒などものともされないはず。それに万が一にでも効けば、私を寝台へ招いて下さるでしょう?』
会う都度にそう言って首筋へ手を伸ばしてきていた姿を思えば、本気の可能性の方が高いかもしれない。だがギガイにとってはレフラの負担さえなくなれば、あの者の真意などどうでも良いことだった。
(どちらにしても、レフラにとって憂いとなるものは、取り除くことには変わらないからな)
それに、そんなことよりもいまはレフラのことだった。
レフラの頬にかかる髪を掻き上げてやりながら、フッと思わずギガイの口元が綻んだ。
「それにしても……嫉妬をしていたのか」
その後に続けた言葉も、ガラにもないような声音だった。
だけど。
抱き上げて欲しいと腕を伸ばしていたのも、首筋へ額を擦り付けていたのも、茶を取りに行こうとした時のベッドの上での様子も。
全てギガイが他の誰かを抱き寄せたと勘違いをした嫉妬からのものなのだ。改めてその姿を思い返せば、泣かせてしまった後ろめたさがありながらも、どうしても顔が綻んでしまう。
「誤解は解けたか?」
ギガイの言葉やその態度に、本当に心配することは無かったのだとようやく安心した様子だった。ついさっきまで思い悩んでいるように見えていた表情がだんだん変わっていき、今では紅くなって気まずそうに視線をさまよわせていた。
このままだとスネられそうだと思いながらも、唯一無二としている者から向けられた独占欲が嬉しくないはずがない。
その姿にも思わず笑ってしまえば、眦を紅く染めたレフラが恨めしそうににらんでくる。
「……だって、知らなかったんです。仕方ないじゃないですか。それなのにそんな風に笑わなくたって……」
「いや、私だけを強請っていた姿が嬉しくてな」
むくれて尖らせていた唇に軽く唇を触れ合わせていく。
「強請ることがただでさえ苦手なお前だ。そんなお前が一生懸命強請ったのが私の腕の中だと思えば、幸せにも感じればお前への愛おしさだってさらに増してくる」
キスのために近付いた距離で微笑めば、レフラの顔はますます真っ赤になって熱くなっていた。
「もともと私が抱えるのはお前だけだ。あんな風に強請らなくとも、お前だけのものだ。だから安心しろ」
真っ赤な顔にもキスを落とせば、レフラの掌がギガイの唇を覆ってきた。過去にもあったその行動に、ギガイが目を瞬かせた。
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