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置き去りにされました2
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『鑑定:
剛腕大猩々《グレートゴリラ》 Sランク 食用可。魔石・毛皮・牙は高額。
爆炎猪《イオナズンボア》 Aランク 食用可。美味。魔石・毛皮・牙は高額。
大樹林蛇《エクゾディススネーク》 Aランク 食用不可。魔石・鱗・牙・毒袋は高額』
イノシシが美味しいらしいので残しておき、他は空間魔法で作った異空間に収納する。こうして置けば時間が経っても腐らず、そのまま取っておけるのだ。
「ノノ、ご飯お願いできる?」
「かしこまりました……と言いたいところですが、刃物や調理器具の類もろくに残っていませんね」
「じゃあ作るよ」
鉄格子を土魔法で加工していく。生き物みたいにうにょうにょした鉄格子が形を変えて包丁に姿を変えた。
『鑑定:
魔法鉄包丁 凄まじい切れ味を誇る包丁。土魔法で生成したため魔法耐性がある。マリアベル作』
……まぁ、切れないよりは切れた方が良いよね。
同じように鍋も作ったところでノノがイノシシを捌いてくれた。自分の体よりも大きなイノシシがサクサク切り分けられてお肉に変わっていくところは、まるで魔法のようだった。
ちなみにノノは同い年らしいけれど、私よりも頭一つほど大きい。
というか私が小さいみたい。
最前線は食料が少ないし、戦う兵士が優先と言われて野菜のカケラが少しだけ浮いたスープを食べていたのだけれど、完全に足りてなかったらしい。
自分に回復魔法をかければだいたいのことは耐えられてしまうので気づかなかったけれど、とてもじゃないけれどもうすぐ成人には見えないと言われてしまった。
「マリアベル様はいいところ一〇、一一歳といったところでしょうか」
「もうすぐ一五だよ!?」
「……いっぱい食べましょうね」
そう言いながら、お肉がたっぷり入ったスープと串焼きを作ってくれた。鉄串は私が魔法で作ったけれど、近くに生えていたハーブと岩塩のカケラがあったから、それを使ったらしい。
「おいひ……!」
「食べてから喋りましょう」
「らっふぇ! おいひいんらもん!」
はふはふ言いながらお肉を頬張る。口いっぱいに香ばしい匂いとガツンとした塩気が広がる。それを噛むとじゅわっとおいしい肉汁が口の中で大洪水。
美味しすぎて止まらない。
スープもお肉の脂にハーブの香りがたまらないし、何より温かい。
串焼きもスープも出来立てほやほやなのだ。
温かいものを口に入れるなんて何年振りのことだろう。一心不乱に食べていると、ノノがエプロンのすそで私の目元を拭ってくれた。
「……これからいくらでも、おなか一杯になるまで食べられます。だから、泣かないでください」
どうやら私は知らない間に泣いていたらしい。
ノノが作ってくれたご飯はとっても美味しかったけれど、久々のお肉に体がびっくりしてしまったらしくて途中で気持ち悪くなってしまった。
回復魔法と気合で何とか耐えて、食べられなかった分は空間魔法に入れておく。これでいつでも食べられる!
「これからどうしますか?」
「森から出たい……けど、ブレナバン王国には行きたくない」
食事中、ヘルプにも頼りながらノノとたくさんお話をしたお陰で自分が置かれている状況がよく理解できた。
騙されるのも、無理やり働かされるのも絶対に嫌だ。
「では森を進んで隣国に向かいますか。北ならばノースフォール王国。東ならばグレアランド帝国がございます」
「どんなところなの?」
「ノースフォール王国は雪に覆われた寒い国です。グレアランドはいくつもの王国が合体して出来た大きな国ですね」
寒いのは嫌だなぁ、とぼんやり考えていると、
『推奨:グレアランド帝国。多文化が混在しているため、多彩な食材と料理が特徴。ブレナバン王国とは敵対関係にあるため、追手が差し向けられる可能性が比較的低い。治安はイマイチ』
とのことで東に向かうことが決まった。
治安が悪いのは困るけれど、ノースフォール王国も別に治安が良い訳じゃないらしいしね。
行く場所が決まったので、一番不安だったことを訊ねる。
「ノノは……ついてきてくれる?」
「当たり前です! マリアベル様が嫌だと言わない限り、どこへでもお供させていただきますからね!」
「迷惑じゃ、ない……?」
「いいえ。ナノマシンとしても、一人の人間としてもマリアベル様のことを大切に思っています」
それは、大樹林に来てから一度として向けられたことのない優しさだった。
「……ありがとう」
「ああ、すみません。泣かないでください。大丈夫ですよ」
嬉しくて涙が零れた私が落ち着くまで、頭を撫でながら抱きしめてくれた。
剛腕大猩々《グレートゴリラ》 Sランク 食用可。魔石・毛皮・牙は高額。
爆炎猪《イオナズンボア》 Aランク 食用可。美味。魔石・毛皮・牙は高額。
大樹林蛇《エクゾディススネーク》 Aランク 食用不可。魔石・鱗・牙・毒袋は高額』
イノシシが美味しいらしいので残しておき、他は空間魔法で作った異空間に収納する。こうして置けば時間が経っても腐らず、そのまま取っておけるのだ。
「ノノ、ご飯お願いできる?」
「かしこまりました……と言いたいところですが、刃物や調理器具の類もろくに残っていませんね」
「じゃあ作るよ」
鉄格子を土魔法で加工していく。生き物みたいにうにょうにょした鉄格子が形を変えて包丁に姿を変えた。
『鑑定:
魔法鉄包丁 凄まじい切れ味を誇る包丁。土魔法で生成したため魔法耐性がある。マリアベル作』
……まぁ、切れないよりは切れた方が良いよね。
同じように鍋も作ったところでノノがイノシシを捌いてくれた。自分の体よりも大きなイノシシがサクサク切り分けられてお肉に変わっていくところは、まるで魔法のようだった。
ちなみにノノは同い年らしいけれど、私よりも頭一つほど大きい。
というか私が小さいみたい。
最前線は食料が少ないし、戦う兵士が優先と言われて野菜のカケラが少しだけ浮いたスープを食べていたのだけれど、完全に足りてなかったらしい。
自分に回復魔法をかければだいたいのことは耐えられてしまうので気づかなかったけれど、とてもじゃないけれどもうすぐ成人には見えないと言われてしまった。
「マリアベル様はいいところ一〇、一一歳といったところでしょうか」
「もうすぐ一五だよ!?」
「……いっぱい食べましょうね」
そう言いながら、お肉がたっぷり入ったスープと串焼きを作ってくれた。鉄串は私が魔法で作ったけれど、近くに生えていたハーブと岩塩のカケラがあったから、それを使ったらしい。
「おいひ……!」
「食べてから喋りましょう」
「らっふぇ! おいひいんらもん!」
はふはふ言いながらお肉を頬張る。口いっぱいに香ばしい匂いとガツンとした塩気が広がる。それを噛むとじゅわっとおいしい肉汁が口の中で大洪水。
美味しすぎて止まらない。
スープもお肉の脂にハーブの香りがたまらないし、何より温かい。
串焼きもスープも出来立てほやほやなのだ。
温かいものを口に入れるなんて何年振りのことだろう。一心不乱に食べていると、ノノがエプロンのすそで私の目元を拭ってくれた。
「……これからいくらでも、おなか一杯になるまで食べられます。だから、泣かないでください」
どうやら私は知らない間に泣いていたらしい。
ノノが作ってくれたご飯はとっても美味しかったけれど、久々のお肉に体がびっくりしてしまったらしくて途中で気持ち悪くなってしまった。
回復魔法と気合で何とか耐えて、食べられなかった分は空間魔法に入れておく。これでいつでも食べられる!
「これからどうしますか?」
「森から出たい……けど、ブレナバン王国には行きたくない」
食事中、ヘルプにも頼りながらノノとたくさんお話をしたお陰で自分が置かれている状況がよく理解できた。
騙されるのも、無理やり働かされるのも絶対に嫌だ。
「では森を進んで隣国に向かいますか。北ならばノースフォール王国。東ならばグレアランド帝国がございます」
「どんなところなの?」
「ノースフォール王国は雪に覆われた寒い国です。グレアランドはいくつもの王国が合体して出来た大きな国ですね」
寒いのは嫌だなぁ、とぼんやり考えていると、
『推奨:グレアランド帝国。多文化が混在しているため、多彩な食材と料理が特徴。ブレナバン王国とは敵対関係にあるため、追手が差し向けられる可能性が比較的低い。治安はイマイチ』
とのことで東に向かうことが決まった。
治安が悪いのは困るけれど、ノースフォール王国も別に治安が良い訳じゃないらしいしね。
行く場所が決まったので、一番不安だったことを訊ねる。
「ノノは……ついてきてくれる?」
「当たり前です! マリアベル様が嫌だと言わない限り、どこへでもお供させていただきますからね!」
「迷惑じゃ、ない……?」
「いいえ。ナノマシンとしても、一人の人間としてもマリアベル様のことを大切に思っています」
それは、大樹林に来てから一度として向けられたことのない優しさだった。
「……ありがとう」
「ああ、すみません。泣かないでください。大丈夫ですよ」
嬉しくて涙が零れた私が落ち着くまで、頭を撫でながら抱きしめてくれた。
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