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それから二か月
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「うーん……今日も良い天気。ノノ、お散歩いこう!」
「かしこまりました。どのようなルートで行きましょうか」
「冒険者ギルドに寄って何か依頼がないか聞いて、何も無かったらミス・テールマンに例の件を報告しよ」
「冒険者ではないので報告なんてしなくて良いんですけどね……」
「駄目だよ、お世話になってるんだから」
「かしこまりました……どっちかっていうとお嬢様の方が依頼受注をしてる気がしてる」
ケーキを作ってから二か月。
私とノノはずいぶんといろんなところを歩き回った。城塞都市ヴェントの内部はほぼ網羅した……と思うし、近隣の村にも色々と足を延ばした。
さすがにこのヴェントに残り続けることが難しかったアーヴァインは帝都に連行され、代わりに冒険者ギルドの新ギルド長が来た。五十代ぐらいで片目が切り傷で潰れた感じの強面さんだった。
のだけど。
「あらぁ? アナタがギルド長なんてずいぶん出世したのねぇ……アタシに尻を撫でまわされて泣きながら逃げてたのに」
「ひっ!? テテテッ、テールマン!?」
「おだまり。アタシのことは”ミス”・テールマンとお呼びって何度も教えたでしょう!」
「ひぃぃぃぃぃっ!」
どうやらミス・テールマンの知り合いだったらしい。しかもあんまり好かれてない感じの。
「コイツが駆け出し冒険者としてイキってたから、先輩として喝を挿入れてあげたのよ♡」
「か、勘弁してください……”ミス”・テールマンのあねさん……!」
「うふふ♡ ずいぶん素直になったわよねぇアナタも♡」
結局、お偉いさんは「ミス・テールマンのあねさんがいるのに俺がギルド長なんてできるわけないだろ! 尻が……じゃねぇ、命がいくつあっても足りねぇ!」とのことで帝都に戻ってしまったのだ。
結果、ミス・テールマンがギルド長を続投することになったわけだ。
「ごめんくださーい」
「あらぁマリィちゃん! おはよう。今日はどうしたのかしらぁ」
「何か困ってることがないかと思って!」
「ンまぁ! 優しくて素敵なコね! ご褒美に冒険者ギルドのBランク章をあげちゃうワよ?」
「勝手にお嬢様をギルドに加入させようとしないでください。お嬢様はあくまでも”善意で”受けているのです」
「分かってるワよ、もう、イケズなんだからぁ……でも今日はないのヨ。ここのところマリィちゃんとノノちゃんが大活躍してくれたから、塩漬け依頼も高難易度依頼もぜーんぶ片付いちゃったの♡」
何もないのか。
じゃあ、予定通りに報告をしよっかな。
「あのね。私たち、そろそろ城塞都市を出ていこうと思うの」
「ハァ!? 待って、何が気に入らなかったの? 市長? それとも冒険者? 市民? 言ってくれればソイツの手足を縛って森に放り込んでくるからすぐ教えて!」
「駄目だよ!? そんなことしたらモンスターに襲われちゃうじゃん!」
「そ、それじゃ何で……? 誰かに嫌なこと言われた? それともセクハラ? 手首とか切り落とす?」
「落とさないよ!」
「落ち着いてください。お嬢様は別に気に入らないことがあってここを離れるわけではありません」
「じゃあ何でよ!」
うっ……なんか言いづらい。
ミス・テールマンとノノを交互に見ていると、私の代わりにノノが説明してくれた。
「目的はズバリ、食い倒れです」
「くい……だおれ…………?」
「ええ。超古代文明に伝わる由緒正しい儀式ですね」
食い倒れ。
それは美食の極みとも言われる儀式だ。
「食べたことのないものや言葉を失うほど美味しいもの、手に入れるのが難しく味を言葉で表すのも難しい珍味を歩けなくなるまで食べ、五体投地で食材への感謝を表す儀式ですね」
「歩けなくなるまで!?」
「ええ。過酷な儀式です……ですが、この数か月でお嬢様はずいぶんと体力をつけられましたし、ぜひともやりたいと」
食い倒れって美味しいもの食べて寝るだけだと思ってたから、ノノに詳細を聞いたときはすごくびっくりした。
でも、よく考えたらすごく大切なことだと思ったのだ。
私が何気なく食べているお肉や魚、野菜は皆生きている。
美味しい食材たちの命をいただいて生きている……否、生かしてもらっているのだ。
超古代文明の人たちもそういった感謝を示すために食い倒れをしてたんだって考えたら、私もやりたくなったのだ。
「そのために、まだ食べたことのないものが待つ地域に赴くのです」
「……二人の考えは分かったワ。命を頂く……その慈愛はまさに聖女と呼ぶにふさわしいし、止めないワ」
「ありがとうございます」
「ただ、ロンドやドルツたちには教えてあげてネ」
「あ、ロンドさんは知ってますよ。一緒に行くって準備も進めてます」
「はぁ!? なんでアイツだけ!?」
「なんか、偶然にも私たちが行きたい方向に商談があるんだとか」
「絶対嘘よ!」
もう、何言ってるの。
わざわざ嘘吐いてまで私たちについてくる意味なんてないでしょ!
……もしかして、ノノ狙い……?
確かにノノは美人だし優しいしスタイル良いし料理も上手だ。その上ぎゅってすると良い匂いするから気持ちは分からなくもないけど……。
ロンドさんもやり手の商人さんだし、ノノを任せられなくはない……いやでもお金大好きだし、もっとノノを大切にしてくれる人じゃないとノノのことを任せられないよ!
だからダメだね、うん。
ノノがどうしてもって言うんじゃなきゃ交際は認められません!
「お嬢様? 何やら面白いくらい表情が変わっていましたが、何を考えていたのですか?」
「……ノノの幸せについて?」
「ありがとうございます。私は果報者ですね」
あっ、ぎゅってしてくれた。
へへ、嬉しいな。
「それで、ドルツたちには?」
「まだなので、後で伝えておきましょう」
「そうしてあげて。知らない間にマリィちゃんたちがいなくなったと分かったら、あの二人が帝都で賞金首になるワ」
「えっ!? 何で!?」
「……アーヴァイン殿下がね……色々とね」
「なるほど。さすがに可哀想なので早めにお伝えしましょう」
「? うん」
よく分からないけどノノが分かってるなら良いかな。
その後もミス・テールマンに『出発前に済ませておくこと』なんかのアドバイスをもらった。
凄腕冒険者だっただけあって旅には慣れてるみたいだし、すっごく参考になった。
相談して良かった!
「かしこまりました。どのようなルートで行きましょうか」
「冒険者ギルドに寄って何か依頼がないか聞いて、何も無かったらミス・テールマンに例の件を報告しよ」
「冒険者ではないので報告なんてしなくて良いんですけどね……」
「駄目だよ、お世話になってるんだから」
「かしこまりました……どっちかっていうとお嬢様の方が依頼受注をしてる気がしてる」
ケーキを作ってから二か月。
私とノノはずいぶんといろんなところを歩き回った。城塞都市ヴェントの内部はほぼ網羅した……と思うし、近隣の村にも色々と足を延ばした。
さすがにこのヴェントに残り続けることが難しかったアーヴァインは帝都に連行され、代わりに冒険者ギルドの新ギルド長が来た。五十代ぐらいで片目が切り傷で潰れた感じの強面さんだった。
のだけど。
「あらぁ? アナタがギルド長なんてずいぶん出世したのねぇ……アタシに尻を撫でまわされて泣きながら逃げてたのに」
「ひっ!? テテテッ、テールマン!?」
「おだまり。アタシのことは”ミス”・テールマンとお呼びって何度も教えたでしょう!」
「ひぃぃぃぃぃっ!」
どうやらミス・テールマンの知り合いだったらしい。しかもあんまり好かれてない感じの。
「コイツが駆け出し冒険者としてイキってたから、先輩として喝を挿入れてあげたのよ♡」
「か、勘弁してください……”ミス”・テールマンのあねさん……!」
「うふふ♡ ずいぶん素直になったわよねぇアナタも♡」
結局、お偉いさんは「ミス・テールマンのあねさんがいるのに俺がギルド長なんてできるわけないだろ! 尻が……じゃねぇ、命がいくつあっても足りねぇ!」とのことで帝都に戻ってしまったのだ。
結果、ミス・テールマンがギルド長を続投することになったわけだ。
「ごめんくださーい」
「あらぁマリィちゃん! おはよう。今日はどうしたのかしらぁ」
「何か困ってることがないかと思って!」
「ンまぁ! 優しくて素敵なコね! ご褒美に冒険者ギルドのBランク章をあげちゃうワよ?」
「勝手にお嬢様をギルドに加入させようとしないでください。お嬢様はあくまでも”善意で”受けているのです」
「分かってるワよ、もう、イケズなんだからぁ……でも今日はないのヨ。ここのところマリィちゃんとノノちゃんが大活躍してくれたから、塩漬け依頼も高難易度依頼もぜーんぶ片付いちゃったの♡」
何もないのか。
じゃあ、予定通りに報告をしよっかな。
「あのね。私たち、そろそろ城塞都市を出ていこうと思うの」
「ハァ!? 待って、何が気に入らなかったの? 市長? それとも冒険者? 市民? 言ってくれればソイツの手足を縛って森に放り込んでくるからすぐ教えて!」
「駄目だよ!? そんなことしたらモンスターに襲われちゃうじゃん!」
「そ、それじゃ何で……? 誰かに嫌なこと言われた? それともセクハラ? 手首とか切り落とす?」
「落とさないよ!」
「落ち着いてください。お嬢様は別に気に入らないことがあってここを離れるわけではありません」
「じゃあ何でよ!」
うっ……なんか言いづらい。
ミス・テールマンとノノを交互に見ていると、私の代わりにノノが説明してくれた。
「目的はズバリ、食い倒れです」
「くい……だおれ…………?」
「ええ。超古代文明に伝わる由緒正しい儀式ですね」
食い倒れ。
それは美食の極みとも言われる儀式だ。
「食べたことのないものや言葉を失うほど美味しいもの、手に入れるのが難しく味を言葉で表すのも難しい珍味を歩けなくなるまで食べ、五体投地で食材への感謝を表す儀式ですね」
「歩けなくなるまで!?」
「ええ。過酷な儀式です……ですが、この数か月でお嬢様はずいぶんと体力をつけられましたし、ぜひともやりたいと」
食い倒れって美味しいもの食べて寝るだけだと思ってたから、ノノに詳細を聞いたときはすごくびっくりした。
でも、よく考えたらすごく大切なことだと思ったのだ。
私が何気なく食べているお肉や魚、野菜は皆生きている。
美味しい食材たちの命をいただいて生きている……否、生かしてもらっているのだ。
超古代文明の人たちもそういった感謝を示すために食い倒れをしてたんだって考えたら、私もやりたくなったのだ。
「そのために、まだ食べたことのないものが待つ地域に赴くのです」
「……二人の考えは分かったワ。命を頂く……その慈愛はまさに聖女と呼ぶにふさわしいし、止めないワ」
「ありがとうございます」
「ただ、ロンドやドルツたちには教えてあげてネ」
「あ、ロンドさんは知ってますよ。一緒に行くって準備も進めてます」
「はぁ!? なんでアイツだけ!?」
「なんか、偶然にも私たちが行きたい方向に商談があるんだとか」
「絶対嘘よ!」
もう、何言ってるの。
わざわざ嘘吐いてまで私たちについてくる意味なんてないでしょ!
……もしかして、ノノ狙い……?
確かにノノは美人だし優しいしスタイル良いし料理も上手だ。その上ぎゅってすると良い匂いするから気持ちは分からなくもないけど……。
ロンドさんもやり手の商人さんだし、ノノを任せられなくはない……いやでもお金大好きだし、もっとノノを大切にしてくれる人じゃないとノノのことを任せられないよ!
だからダメだね、うん。
ノノがどうしてもって言うんじゃなきゃ交際は認められません!
「お嬢様? 何やら面白いくらい表情が変わっていましたが、何を考えていたのですか?」
「……ノノの幸せについて?」
「ありがとうございます。私は果報者ですね」
あっ、ぎゅってしてくれた。
へへ、嬉しいな。
「それで、ドルツたちには?」
「まだなので、後で伝えておきましょう」
「そうしてあげて。知らない間にマリィちゃんたちがいなくなったと分かったら、あの二人が帝都で賞金首になるワ」
「えっ!? 何で!?」
「……アーヴァイン殿下がね……色々とね」
「なるほど。さすがに可哀想なので早めにお伝えしましょう」
「? うん」
よく分からないけどノノが分かってるなら良いかな。
その後もミス・テールマンに『出発前に済ませておくこと』なんかのアドバイスをもらった。
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