91 / 95
嫁入り……?
しおりを挟む放たれた疑似太陽を、魔力を使って逸らす。
ノノも歯を食いしばって刃を止める。
なぜか。
「キュキュキュッ! キュウィ! キュ、キュ~!!」
魔王種を庇うようにルビーが立ちはだかったからだ。ルビーは頭のいい子だからそんなことをすればどうなるかくらいわかっているはずだった。
実際、当の魔王種はぽかんと呆けたまま尻もちをついていた。
『予測:魔王種のナノマシン適合率は11.7%。現生種としては驚異的ですが、ナノマシンと融合した個体名ノノや、回復魔法で無理やり適合した個体名マリアベルとは比べるべくもありません』
えっと、ちなみに私とノノのナノマシン適合率は……?
『計測:概算ですが、個体名ノノは58.8%。個体名マリアベルは拒絶反応を癒しながら無理やり適合させたことで、220%を超えております』
うん。
よく分からないけど、魔王種に負けることはないって思えばいいかな。
「……お、お主、何をしておったのじゃ?」
「? ルビーの知り合い?」
「わ、我が眷属じゃ! 唯一の家族じゃぞ!?」
魔王種は腹ばいになってルビーに抱き着き、頬ずりをしていた。
「だいたい何じゃあのでたらめな威力の攻撃は! お主ら、我を殺す気じゃったろ!?」
「えっ? うん」
「何を当たり前のことを言ってるのですか」
「えっ……ナチュラルに怖いんじゃが……我は超古代より連綿と受け継がれし裁定者じゃぞ!? 殺して良い訳なかろう!」
って言われてもそれが何なのか知らないし。
それに。
「お嬢様を傷つけようとしたならば当然の報いです」
「ノノに嫌なことしようとした人を許すはずないよね……何、嫁候補って」
「裁定者の地位を受け継ぐ子が必要なのじゃ……そのためには我と番える者が必要じゃった」
すっかりこころのくじけた魔王種から話を聞くこと小一時間。
ヘルプの解説とか補足も込みでどうにか理解したのは、
・魔王種はナノマシン適合率が高い生命体の総称
・その中でもこの魔王は超古代文明時代に設定された「役職」を持つ者
・世界を滅ぼすような暴走をした者や、悪人を裁く権利を与えられている
とのことだった。
「とはいえ、我にできるのは裁くかどうか判断する植物を生やすことのみ」
ほれ、と地面から生やされたのは、先ほどとは別の植物だった。
『鑑定:
善悪の花粉 悪意に応じて体を変異させる
吸魔草 悪意を吸って綺麗な花を咲かせる』
ヴェントに現れた異形の怪物も、これによって変異した者なんだとか。
「恣意的に選んだことは間違いないが、本人たちに素養がなくばただの草花じゃ。我のせいにしてくれるなよ?」
魔王種はそう言いながら、私とノノをチラチラ見た。
「そ、それでじゃな? そのう……お主らは我よりもずっと強かった。じゃから嫁にするのはもうあきらめた。じゃが、お主らからみて我はどうだった? 強かったか?」
「分かんないけど、たぶん?」
「おそらく今までに戦った者の中では一番……?」
私とノノが曖昧なのは、ほぼ戦うまでもなく決着してしまったからだ。
それでも強かったという評価が嬉しかったのか、魔王種は顔を上げた。
「ならば、我を嫁にしてくれ!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
718
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる