エンゼルローズ

RASHE

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第1話 始まりの事件

始まりの事件 01

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「セイっっ!!」

勢いづいた声が響き渡るのは、日が傾いて暫く、薄い夕明かりに包まれた森にある電灯によって明るく照らされた館のホールの中だった

そこで黒いロングコートを着た赤髪を後ろに束ねている女性が全長1メートルに満たない黒い爬虫類のような生物を黒光する大剣で胴体を切り倒す


「よし、これで終わりか?」


そう言って周りを見渡して一息つくと、両手それぞれに持った所々にある赤いライン線が入っている二本の大剣『クリムゾンレッド』が、空気に溶け込むように四散する

同時に同じロングコートを着た紫髪で左側に髪を束ね、髪に左右異なる黒いリボンと黒いカチューシャを付けたサイドテールの少女と背丈が小さく長い金髪を後左右二本に束ねたツインテールの少女が別々の扉から姿を現した


「ああ、多分もういねーぜ」

「全部さがしたけど、もう悪魔はみなかったぞ」


そのホールには歪な生物たちが既に何体か斬り倒されており、とうに戦いの終わりを示していた


「そうか」


一声ついて少しの静寂の後、ホールの入り口から初老の男性が姿を現すと、男性は周りを見渡してから赤髪の女性に視線を送る


「もう…終わったかな?」


オドオドとしながら館に入ろうとする姿はまるで危険に足を踏み入れようとする小動物のようだが、危険が無さそうと判断すると手前よく堂々とした演技じみた仕草でホールに足を踏み入れる


「たった今終わったよ。
というかオッチャン!終わるまで隠れてて言ったじゃないか!?」

「大丈夫だよ。
君達の『九人姉妹』の腕は確かだし、一、二体相手なら商人の私でも戦えるからね」

「信用してくれているのは嬉しいんだけど…」


後頭部を手でかきながら、赤髪の女性・『九人姉妹』の長女ゼオン・ジークフリートは初老の男性に苦笑いを返す

彼女達『九人姉妹』は産業国家『Company Industrial Country』略称CICの兵士であり、トラック業者が流通ルートに下級悪魔が出現したのでこれらを対峙して欲しいとの依頼を受けて姉妹三人と依頼を遂行中で、依頼内容に沿って護衛として悪魔を討伐していたところである


そんな中、小柄の金髪少女が呆れた眼差しと右腕人差し指を紫髪の少女に向けながらぼやくように口を開く

「ほとんどこのゴリラが力づくであばれてただけだけど」

「おい!オメーまた私をゴリラ呼ばわりとかすんな!お前の方こそ暴れ足りなくて私に当たってるだけじゃねーのかよ!?」


「おいおい、喧嘩するなって全く…
まだ任務中だぞ、シェリーは悪口がすぎる
それにアーシェリもすぐに泣くなって
気を引き締めろよ」

「むぅ…」

「…泣いてねーよ…」


口喧嘩したゴリラ呼ばわりされた『九人姉妹』の五女で紫髪にリボンやカチューシャ等の派手な装飾を付けたアーシェリと悪口を言った八女のシェリエールは、長女のゼオンに連れられて、初老の男性と共に廃館を後にした



「ところでここ最近、『ピーヌス』の目撃情報が多くねーか?
ちょっと前までは余り見かけるようなことはなかったはずなのにな」

「そうだな、さっきの奴らも10体近くいたからなぁ…」


館を出て、近くの路上に止めてあるトラックに向けて足を運びながらゼオンとアーシェリは先ほど戦った爬虫類のような大型生物を思い起こす

奴ら…『ピーヌス』と呼ばれる悪魔は理性が無く感性のみに基づいて行動しており、理知的な判断が出来ない存在で特別な力を持つ一部の個体を除いては戦闘慣れしていない一般人でもある程度対処可能な弱小悪魔である

連中は基本上級悪魔の命令にのみ従順である反面、ピーヌス同士で徒党を組むことは無いとされているが…


「しかも、あんな大勢が一ヶ所に集まってるとこ初めて見たぜ
今まで精々いても2、3体ぐらいだったのにな」

「ま、たまにはあるさ!そういう時もな」


そんなことを話ながらぼんやりと歩いていると
、コンクリートの路上に止めてある一台の使い古されたような細かい傷跡が所々垣間見える年期物のトラックが見えてきた

その中では既に初老の男性とシェリエールが乗り込んでおり、足と腕を組みながらわざとらしく堂々とした態度でゼオンとアーシェリが乗り込むのを待っている


「まちくたびれたぞ」

「おいおい、1分も待ってないだろう」

「ハハハ、とりあえず森の麓まで送ってうちの仕事を助けてくれたかわりにラーメン屋さんで一杯奢ってあげるよ」

「お、マジか!?」

「でも、仕事の依頼料は貰ってるし…」


トラックの扉を跨ぎながら、ラーメンと聞いて嬉しそうにするアーシェリとは対照的にゼオンは少し遠慮がちな反応をとりながらトラックの助手席に座る


「なんだかんだ言ってオレたち三人分の依頼料は安くないでしょ」

「お嬢ちゃん達がおじさんの懐事情を気にせんでもええ」


エンジンキーを差し込んでエンジンをかけるも年期物であるせいなのか1、2回だけではエンジンは稼働せず、3回目にてようやくエンジンの回転音が響く

そうしてお世辞にも綺麗とはいえないかすり傷やオイルの染みが所々に付着しているトラックは薄暗い夜道の森を下り始める

車外は誰もいない暗い道路が続く静寂の中、車内の後部座席ではアーシェリとシェリエールがまたしてもお互いに軽口を叩きながら罵り合っている

決して中が悪いのではないのだが、『九人姉妹』の中でも感情起伏が激しいアーシェリとわがままで毒舌なシェリエールは普段からお互い気が違う部分が多く、やけに突っかかり合いが多い仲だ

そんな騒音じみた声を聞きながら初老の男性は砂利が多く不安定な道を走りながらトラックのハンドルを切り続ける


「商人の流通業は時間との勝負もあるからね
ここら一帯にあんなのに住み着かれると、どうしても迂回せなきゃならんし、近隣住民のお客さんも不安がって、外に流れちまうのさ」
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