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第3話 百年前の残滓
百年前の残滓 05
しおりを挟む「…………痛い」
自然と強まっていたゼオンの腕の中で呟いたマレーシャは俯いていた無表情な顔上げてゼオンを見る
相変わらず無表情を表していたが、その雰囲気から先程と打って変わって落ち込んで沈んでいた様子は鳴りを潜めており、いつも通りの落ち着いた様子を見せていた
向けられた顔を見つめること数秒、マレーシャは首を傾げてゼオンの反応を待つと
「この生意気な奴め~!」
と頭上から髪の毛をくしゃくしゃとかき回されてしまった
胸中の不安や悔しさといった内面は多少残っているものの、いつも通りの様子を取り戻したセレーラルとゼオンはむっつりとしながら慌てて髪の毛を整え直すマレーシャをみて笑う
そうして抱き合っていると、廊下奥の階段から見慣れた紫色の髪をした『九人姉妹』五女・アーシェリが診療室前に不釣合いな黒と紫色をを主体としたゴスロリ服を纏って歩いて来ていた
「お前ら、こんな廊下のど真ん中でなに抱き合っているんだよ…」
アーシェリの開口第一声で指摘されたゼオンとセレーラルは周りの目を気にしながら急いで抱き合っていた手を退けてお互いに一歩離れる
幸い周りには他に誰もいなかったので、ゼオンとセレーラルは安心感からため息をつく
一連の動作を一歩離れた位置で見るアーシェリは穏やかな表情で胸を撫で下ろす
「とにかく、大丈夫そーで安心したぜ
大した外傷が無いっつー話は聞いたからアウリとシェリエールには黙っといたけど、あたしはすげー心配したんだぞ?」
任務に出向いているキルバレンとルリア、フィオリンはともかく
ゼオン達が本部の診療所に連れられた事をアーシェリは誰かから連絡を受けてアウリとシェリエールには心配かけないように直ぐに一人でこちらに足を運んだのだろう
アーシェリは腕を組んで仁王立ちのようなポーズをとりながら、態度や口調とは裏腹に優しい声で今一度再確認の為に三人に問いかける
「で、本当に大丈夫なのか…?ヤバイ怪我とか本当にねーんだよな…?」
「心配する程でもないよん!打身が酷かっただけで大きな怪我はないからね~」
「そのかわり暫くは安静にするように言われたから任務には行けなくなったけどな」
セレーラルとゼオンはアーシェリの問いに胸を張って無傷を表現しながら続けて言葉を返す
そして安心感からアーシェリは口元に手を添えながら肩を震わせて微笑していた
「いてっ!」
「おいおい…」
それでも鈍い痛みは残っており、二人は痛みから体を麻痺させながらも笑い返す
側から見るとじゃれあっているように見えるが、その光景を眺めていたマレーシャの頭の中ではトラとネコの様子をゴリラが心配する風景が出来上がっていた
どうやらマレーシャもこれまでのやり取りですっかり普段の自分を取り戻していたのだろう
そんなマレーシャの両肩に手を乗せながらアーシェリはもう一つ聞きたいことを口にする
「なら良かったぜ
それでお前ら、任務はどうだったんだ?
何つーか、確かまた『ピーヌス』の撃退だったよな?」
「いやねぇ~それなんだけど……」
「うーん、何というべきか…」
任務のことについて聞かれた瞬間、ゼオンとセレーラルは罰が悪いような顔をして、アーシェリはマレーシャに聞こうとして彼女と目を合わせると無表情を保っていたが、視線を逸らして目が泳ぎ始めた
やっぱり、失敗したのかーーと
三人の様子と怪我の具合から好ましい結果ではなかったことは察しがついていたが
「いや~任務自体は成功したんだけど…」
「……そうだな、とりあえず三人で昨日の任務と同じ森の麓に行ったんだが…」
しかしアーシェリの予想に反して任務は成功したらしく、三人の挙動が不自然なのは別の要因があるのかと、質問を重ねようとしたらゼオンが遮るように口を挟む
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