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第四話 アクセルの力
アクセルの力 09
しおりを挟む憶測で終わるセレーラルが言葉に、ゼオンを含めた一同が頭を捻らせて思考を巡らせるものの
結局彼女達も『神器霊核』の原理についてよく理解できておらず、憶測に対して正しい答えを差し出すことは出来なかった
間を暫く開けて、アーシェリが論より証拠と言わんばかりに一つ提案する
「結局実際にやってみねーと分かんねーから、一度やってみねーか?」
「そうだな…なぁアーシェリ、一回頼めるか?」
「え!?あたしか!?…別にいーけど…まさかここで暴れろなんてことは言わねーよな?」
「そんなこと許したら家が潰れるだろ」
「まーな」
悪魔との戦闘時に相手の霊力を吸収した時、ゼオン達三人は戦いに無我夢中で、実際にその事実をしっかりと確認できていた者は誰一人としていなかった
その事実を解明すべく、アーシェリとゼオンは言葉のやりとりを行って互いに頷き合う
そして、席を立って少し離れた周りに物が置いていない場所でお互いに距離を取った
この広い空間で充分に距離を開けたのを確認したアーシェリは両手を開いて腰を落とし、瞬間的な突風を発生させると同時に紫色の霊気を勢いよく身体中から放つ
まるでゼオンの攻撃をその身で受け止めるような構えをとるように
その顔は若干恐怖にひきつっていたが
「よーし、こっちはいーぜ!」
「そう身構えるのはいいが、攻撃なんてしないから安心していいぞ」
「分かっていても、こえーもんは怖えんだよ!」
強がる姿勢を見せるアーシェリの前にゼオンはかつてのように、両手首に赤い輪が現し、更にそこからアクセルラインで繋がれた円盤ーーー『神器霊核』を背後に展開する
その円盤から次々と龍の顔が覗くように表に出てくると、その存在感に圧倒されたアーシェリが冷や汗を浮かべた
例え攻撃しないと分かっていても格上である姉の切り札を前に圧巻されるのは仕方のないことだが、彼女は負けまいと力強く気を張って意気込む
そんな状態の中、ゼオンが一体の龍をアーシェリに向けて放つと彼女の体に全身を使ってしがみついた
「うっ…!」
小さな悲鳴をあげて、咄嗟に眼を大きく見開いた状態で身構えたまま我慢すること約十秒間、凍りついたように体を強張らせる
しばらくしてアーシェリは恐る恐るゆっくりと眼を動かして、体に絡みついた龍を見ながら眉を潜めて疑問の声をあげる
「……何にも起きねーぞ?霊力を吸われてる感じもしねーし…」
「違うのか…」
悪魔との戦いのように龍の姿が肥大化することもなく、アーシェリの言う通り見た目的にも感覚的にも何も変化が起きた感じはしなかった
「うーん…」
「頭捻ってねーで、さっさとコイツを外してくれ!」
「あぁ、悪い悪い」
アーシェリに言われて、『神器霊核』を解除して彼女を解放した後、ゼオンは腕を組んで考え込む
あの時と似たかよったシチュエーションを再現させてもらったのだが、考えたところで思うように結果が出せなかったことに対するモヤモヤ感に頭を悩ませるだけだった
「なぁラル、ほんとに吸収できてたのか?」
「私からはそう見えていたけどね、実際に相手もそう言ってたし」
ゼオンのことを信用していない訳でないが、妙な勘違いやうっかりが多く、今回も何か思い違いがあったんじゃないかと勘繰るアーシェリだったが、どうやらそういう訳ではないらしい
目線を移して先にいるマレーシャもセレーラルの言葉に同調するように頷く
そしてアウリはその様子をよそにシェリエールの肩を叩いて彼女に協力を持ちかけていた
「ねぇねぇ!あうりんたちもやってみない?ぜおねえと違ってlevel2だからできるかどうかはわからないけどね」
シェリエールは不安な表情を示しながら、アウリの攻撃が自分に当たる想像を膨らませてしまい、かぶりを振って提案を断る
「いやだ、おまえはうっかり攻撃しそうだから」
「じゃああうりんは被験体の方でいいよ!」
無垢な笑顔でアウリは自ら技の受け役を提案すると、シェリエールは少し驚いた顔をして聞き返す
「ほんとうに、わたしが発動するがわでいいのか?」
「うん!」
「とりけすなら今だぞ」
「大丈夫だよ!」
「怪我してもしらないからな!」
「あうりんはしぇりちゃんを信じているから大丈夫!」
シェリエールの事を信じて疑わず、敬礼のポーズを決めて満面の笑みを見せるアウリに対して、彼女を傷つける恐れから焦燥感を感じていながらも、ここにきて自分から断りづらくなっていたシェリエールは、顔から冷汗が浮かびはじめていた
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