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第五話 復讐者の来訪
復讐者の来訪 03
しおりを挟む同時刻ーーー
黒い戦闘服を身に包んだ『九人姉妹』の次女キルバレンは同じ服を着た妹のアーシェリとフィオリンを連れて南エリア5の森林地帯の麓では
数日前、姉のゼオン達が二本角を持つ紫髪の悪魔と遭遇した現場に来ていた
戦いから数日経った今、現場確認で来た訳ではなく、任務依頼を受けて護衛を受けて、この地に踏み入れていた
先日のピーヌス目撃を受け、ゼオン達の任務の後から昨日まで軍部の警備隊だけでなく、本隊までもが出動し、ここ数日間は全面警戒に当たっていた
その全面警戒状態は本日早朝からようやく解除され、本隊は撤収し警備隊は暫く残留するということとなった後ーーー
それまで多少暗雲を示していた現場付近の経済状況は活発化したが、人々は完全に不安を払拭しきることが出来ず、護衛の為にキルバレン達にも依頼が寄せられて今現在に至る
全面警戒中に破損した一部の家屋や道路は補修されてある程度は元どおりになったが、キルバレンが見てきた中でこの場所が最も事件の跡が未だ強く残っていた
傾いた木々の数々、補修しきれていない大きな地面の抉れた後に、小さな礫が当たったかのような建造物の数多くの傷跡ーーー
「ここで…」
おそらく『神器霊核』が衝突した場所なのだろう
自分よりも強い筈の姉ーーーそしてセレーラル、マレーシャが、三人がかりでも歯が立たなかった相手が戦った所に立っているというだけで自然と身が硬ってしまう
アーシェリも似たようなことを感じていたようで、補修途中の抉れた地面を見ながらしかめっ面を晒していた
今まで姉妹全員が自分たち以上の実力者と実戦をしたことがない
キルバレンにとって、そういった相手との戦いでここにいるアーシェリやフィオリンに対して取り返しがつかない状況になってしまうことを予期すること自体恐怖でしかなく、先程から誰とも会話が進んでいなかった
その反面アーシェリは姉妹が負かされたという怒りと強い闘争心を感じており、相手をどうコテンパンにするのか頭の中でイメージを膨らませながら落ち着きなく周辺をウロウロと歩き回る
そんな彼女達の今回の任務は護衛といっても、権力者や代表者といった護衛ではなく、補修作業をしている作業員達の身の回りを警護する内容だった
このエリア一帯に警備隊が残っているとはいえ、その警戒網は薄く広げられた状態でしかなく、特に激戦があったであろう場所の補修には未だ不安の声が上がっていた為、彼女達が担当することとなった
とはいえ長時間常に緊張状態が保てる訳でもなく、補修作業に関しては何の技術も知識もないが、敵が現れない今の現状では手持ち無沙汰となって暇を持て余している状況に落ち着いていられず、三人とも補修作業において、知識を学び作業体験もしていた
「なんつーか…変わった任務になっちまいそーだよな」
こんな作業をするつもりは無かったと、袋に入ったコンクリートの補修剤を肩に担いで、アーシェリが苦言ともいえない言葉をキルバレンに向けて零す
「しょうがないですよ、私たちはエリア外周を見張ったり、エリア内を巡回している警備隊とは違って護衛対象から離れる訳にはいきません」
「そーはいってもなぁー…」
「このエリアの補修作業員のところにも誰かしら護衛がついていて同じような状況ですよ」
それにーーと言葉を続けてキルバレンが指を刺した先に、作業員の男性に作業を教えてもらっている末っ子のフィオリンがいた
「あの子はあんな感じですから」
どうやらフィオリンは補修剤を使って、コンクリート床一面の凹凸部分のムラを無くす作業を興味本位で学んで、体験作業をしているようだ
「楽しそーにしてんなー、あいつにとってはまだいろんなことが新鮮で楽しーんだろーな」
まるで自分の子供を見守るかのようにアーシェリは優しい眼差しでフィオリンを見つめながら呟きながら、担いだ補修剤を背負い直して彼女達のもとへと歩いていった
遠回しに緊張を解すような言葉をアーシェリに言ったキルバレンだが、会話中も、アーシェリが離れた今も周囲に対する警戒心を捨てず、神経を過敏に張り巡らせる
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