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真実に触れる頃
テキル星(3)王城の晩餐
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「こ、これは・・・」
とイクスが目を輝かせて目の前に並べられた料理の数々を見回していた。
俺達は王城の中に3つの部屋を用意してもらい、それぞれの部屋にキャリートレーを運び込んだ後、メイド達の案内で朝食会場まで来ていた。
そこはパーティ会場の様な大きな部屋で、部屋の中央には長さ20メートルはありそうな大きなテーブルが置かれており、その上には「これぞ中世ファンタジー」と言いたくなるような、銀の食器に盛られた料理が「これでもか!」と言わんばかりに並べられていた。
ビュッフェ形式の様にも見えるが、テーブルには俺達用の椅子も準備されていて、それぞれの椅子の隣に、紺色のローブを着たメイド達が控えていた。
なるほど。
メイド達が俺達の代わりに料理を皿に取ってくれるつもりの様だな。
前世でバブル期にテレビでそんなのを見た気がするぜ。
俺はデバイスの無音通話で、
「みんな、気持ちは解るが、毅然としていろよ」
と通達しておいた。
そりゃあ俺だって、こんなご馳走は転生してから初めての事だし、旨そうな料理を前にして興奮してないと言えば嘘になる。
が、ここで欠食孤児みたいな姿を見せてしまうと「神の使い」という立ち位置が揺らぎかねないからな。
ここは、この国の人間が求めている「神の御使い像」を演じておかなければならないだろう。
俺達はメイド達に促されるままに席に着き、テーブルの向かい側にある4つの椅子に着くであろう国王達を待つ事にした。
その間もイクスは料理を見回し、何やらデバイスに記録しているし、ミリカも見た事の無い衣装を着ているこの国の人間の姿を思い出しながらデバイスに記録を続けている様だ。
テーブルのこちら側には7つの席が用意されていて、左から順に、ミリカ、イクス、シーナ、俺、ティア、メルス、ライドが席に着いていた。
少し年配のメイドが、数人のメイドに目配せをして指示を出した様だ。
数人がテーブルの端に置いてあったボトルの方に行き、グラスを用意してボトルの中味を注いでいる。
そして、そのグラスを車輪が付いた手押しワゴンの様なトレーに乗せて、俺達の前に一つずつグラスを配ってくれた。
グラスには、淡いピンク色をしつつ透明度の高い液体が入っており、ほのかに酸味があるフルーツの香りがする。
俺は念のため、グラスを見ながら情報津波を試してみた。
中味はアセロラに似たフルーツを絞った果汁を半年くらい発酵させた液体を、パパイヤの果汁の様なもので薄めた飲み物で、2%程度のアルコールが検出できる。
毒の類は入っていない様だが、なるほど、酒か。
俺達のメンバーで酒を飲んだ事があるのは、俺以外にはイクスとミリカだけだ。
これはイクスの研究の過程で酒が完成した時に、俺が酒の飲み方と、料理への活用法をデバイスで送っておいた為だ。
俺は一人の時にこっそり酒を楽しんでいたが、ティアやシーナがいくら成人していると言っても、まだ飲ませない方がいいだろうと俺は勝手に判断していた。
というのも、酒を飲んだイクスとミリカが酔っぱらって、二日酔いの為に2週間の休暇のうちの1日を無駄にしたというのをイクスから聞いていたからだ。
まあ、イクス達の肉体関係が発展したのも、酒の力があった様ではあるが。
俺は念のため、デバイスで「これは酒だ」という事をデバイスでみんなに通知しておく事にした。
そうしていると、ホールの入り口の扉が開き、国王と王妃、そして10歳前後の男女が二人部屋に入って来た。
子供は恐らく、王子と姫だろう。
「お待たせをして申し訳ありません。御使い様」
と国王は言いながら、テーブルの向かいの席に着いた。
王妃や子供達もメイドに椅子を引かれて席に着いていた。
「息子と娘のご紹介をさせていただきます」
と言って、今席に着いたばかりの王子と姫を立たせて
「息子のソルジュ。そして娘のフィーナです」
と言うと、王子と姫は軽く会釈をしただけで、また席に着いた。
国王はちらりと王妃の顔を見て頷き、俺達の方を見て
「此度は、王宮魔術師が大変ご不快な思いをさせた事、お詫びを申し上げます」
とその場で軽く頭を下げた。
「また、御使い様の旅の準備が整うまでとはいえ、御使い様が王城にお住まい頂ける事を、心より光栄に思っているところで御座います」
すると、王妃やメイド達も深々と頭を下げる。
王子と姫も、キョロキョロと周りを見て、慌てて同じ様に頭を下げた。
「そこで、ささやかでは御座いますが、本日の朝食を召し上がって頂ければと思い、こうして席を設けさせて頂きました」
とテーブルの上を見渡し、
「どれも我が国が誇る最高の食材ばかりをご用意させて頂いております。心行くまでお召し上がり頂ければ、この上無き喜びに御座います」
と言ってまた頭を下げた。
国王が頭を上げるのを待って、俺は席に着いたまま口を開いた。
「国王、そしてその妻、更にここで働く全ての者に、これらの供物を用意してくれた心遣いに感謝する」
と言って両手を広げ、
「旅立つまでの数日となるが、それまで世話になる事への感謝を、ここで先に述べておこう」
と言って、部屋の中を見渡した。
「この国には、グラスを持って乾杯をする慣習はあるか?」
と俺は国王に訊いた。
すると国王は「御座います」と言って、国王達の前にもグラスを用意する様にメイド達に指示をした。
国王と王妃がグラスを手に取り、俺もグラスを手に取った。
俺がデバイスで「俺の真似をしろ」とみんなに通知をすると、みんなもグラスを手にして、俺がするように顔の高さまで持ち上げた。
国王は俺が音頭を取るのを待っている様だった。
「では、この国の繁栄を願って乾杯するとしよう」
と言って、「乾杯!」
と声を上げた。
するとみんなも「乾杯!」と声をそろえた。
そこから食事が始まった。
俺がメイドに「あの料理を」と言うと、メイドが皿に盛りつけてくれる。
ティア達も俺の真似をして、メイドに「ショーエンと同じものを」と言って料理を運ばせていた。
イクスは「アレとコレと、あそこの肉もお願いします」と、色々な料理を盛りつけさせていた。
食事はどれも美味しかった。
料理の方向性としては、フランス料理に近いかも知れない。
フランス料理と言えばバターを大量に使う事で有名だが、これらの料理にもバターを多く使っているものがあって、テキル星では乳牛が存在している事が分かる。
ただ、パンは白パンしか無い様で、インド料理のナンに似ていた。
俺達はクレア星で色々な料理を試してきた事もあって、未知の料理でも旨いかどうかは見た目と香りで大体分かる様になっていた。
ここでも誰も臆する事なく料理に手を付けていて、みんな美味しそうに食べている。
「時に国王よ」
と俺は、腹八分目あたりで手を休めて口を開いた。
国王も手を休めて俺を見る。
「これからの俺達の旅は、この星を平和と安寧の星にする為の旅となる。そこで、この国の情勢、更に他の国の情勢についても話が聞きたい」
俺がそう言うと、国王はテーブルに置いたハンカチで口元を拭い、
「はい。お話させて頂きます」
と言って話し出した。
国王の話はこんな感じだ。
この星はバティカを含めて13の国があり、純粋な「開拓神の子孫」と呼ばれる王族と貴族が統治しているのが、この国「バティカ」である事。
そして、バティカの貴族がこの星を開拓してゆく中で、現地人を従えて国家として発展させたのが他の12の国なんだそうな。
で、それら12の国の初代国王は純粋なバティカの血筋なんだけど、王妃が必ずしもバティカの血筋とは限らず、これまで子々孫々と歴史が紡がれる中で、今では12の国王の中に、純粋なバティカの血筋は一人も居ないらしい。
全ての国には貴族制度があって、貴族になる条件は「家主がバティカの血筋を受け継いでいる事」なんだそうで、バティカの血が濃ければ濃いほど「高潔」とされて、貴族になりやすいんだそうな。
しかし、バティカ王国は、この星最初の国家であり、最も栄えている国でもあるので、国民が他の国に移住する事はものすごく稀との事で、12の国の王族貴族の「バティカの血の濃さ」は代々薄れていってるらしい。
なるほど。そりゃそうなるわな。
そこで、5代前のバティカ国王が、他の国々との交易を行う事を始め、主に衣服を作る生地の輸出を始める様になったんだとか。
バティカ商人は当然「純粋なバティカ人」なので、他の国に行くと、必ず王族や貴族から呼び出され、様々な人から結婚やら子作りやらを求められる様になったんだそうな。
ところが、生まれた子が「本物のバティカの血筋」かどうかが証明できないって事で、血縁関係を明確化する方法として「一夫多妻制」の制度を導入して、バティカ商人と、その国の貴族達との間で「バティカとの血縁がある証明」に使われて来たという訳だ。
なるほど。
この星の法で一夫多妻制を認めているのは、そういう経緯があったのか。
「で、そのバティカ商人というのはどれくらいの人数が居るんだ?」
と俺は素朴な疑問を投げかけた。
だって、どんなに絶倫だったとしても、行く先々で子種を求められてちゃたまんないだろう。
ところが、思っても居ない返事が返って来た。
「今、交易を行っているバティカ商人は居りません」
はあ? 何で?
「その理由は?」
と俺が訊くと、国王は少しため息をつき、少し言いにくそうな顔をして王子と姫の方をチラリと見た。
ああ、なるほど。
子供に聞かせたくない話なのね。
俺は、食事を終えて退屈そうにしている王子と姫を横目で見ながら王妃の方に顔を向け、
「国王の妻よ、子供達には他にやる事もあるだろう。子供達を連れて、先に席を外すがいいぞ」
と言った。
国王は、ほっとした様に息をつき、王妃が「恐れ入ります」と子供達を連れて部屋を出るのを確かめてから俺の質問に答えた。
「バティカ商人が向かう先々で、貴族達による奪い合いが起きる様になったのです」
と国王は言った。
バティカの血筋を欲しがる他国の貴族達は、自分達の家系を高貴な位置に保ちたいが為に、バティカ商人が来る度に血縁を結ぼうとしてくる訳だが、バティカ商人も数えきれないほどの妻が居るものの、「本当に愛する妻」を作る事が出来ない事を気に病んでいたんだそうな。
なるほどな。
前世で例えるなら、いわゆる「セックスフレンド」は沢山いるけど、本当に好きになった人と結婚できない事が嫌になったって感じかな。
で、バティカ商人の数はそうした背景もあって徐々に減っていき、残った数少ないバティカ商人の奪い合いが起きたという事か。
「さらにその奪い合いは過熱してゆき、とうとうバティカ商人が現地の貴族に殺される事件も起こったのです」
つまり、他の貴族に奪われるくらいなら、いっそ殺してしまえって事か。
家柄の序列を守る為に、これまで人気者だったバティカ人を殺す。
前世で例えるなら、私腹を肥やす利権を守る為なら、他人を不幸にしてもいいし「バレなきゃ殺しても構わない」って考えるサイコパスと同じか。
そして100年前、商人を寄こさなくなったバティカ王国に、他国が軍隊を寄こして侵攻して来て、国民を連れ去ろうとしたんだとか。
なるほど。
侵攻の理由はそれか。
しかし、神殿で神に祈りを捧げると、天より龍が舞い降りて、攻めて来た軍隊を一掃したとの事らしい。
「その龍は、どうやって侵攻してきた軍隊を一掃したのだ?」
と俺が訊くと、国王は額の汗を拭いながら続けた。
「我々はそれを、星々の伝承になぞらえて、フレア・ブレスと呼んでおります」
と言った。
なるほど、フレア・ブレスね。
宇宙を駆けるプレデス星人なら、太陽などの恒星が放つフレアの事は詳しいだろう。
バティカ王国もプレデス星人の末裔なのだから、まるでフレアの様なブレスを吐く龍を見て、そう名付けるのも頷ける。
国王が言うには、侵攻してきた軍隊は、一度のブレスで大半の兵士が蒸発して消えてゆき、二度目のブレスで残りの大半を蒸発させて、他は暴れる龍に押しつぶされたりめちゃくちゃにされたとかで、何とか生き残った10人足らずの兵士は必死で逃げて行ったそうだ。
なるほど、その敗走した兵士が自国に「龍神の怒り」として報告して、龍神を祭る神殿やら教会やらがいっきに普及した訳だな。
宇宙船アリア号で見た動画では「プレデスの技術によって一掃した」というような表現だったが、つまりは、龍の様な生き物を「遺伝子改変」で作り出してしまう事自体が「プレデスの技術」という事なのだろう。
だとすると、俺が夢で見たドラゴンもそうなのか?
人間とも会話が出来る、知的生命体であるドラゴン。
そんな怪獣を作り上げる技術が、プレデス星にはあるって事だ。
でも、俺も含めてプレデス星人は、知的ではあるが身体は貧弱だ。
そこまでの技術があるのなら、何故「自分達を強靭に作らなかった」のだろう?
「よく分かった、国王よ。ならば我々は龍神の使いを名乗って旅をしよう。バティカの商人となれば、低俗な貴族の餌食にも成りかねんからな」
と俺は言って話に区切りをつける事にした。
他にも訊きたい事は色々あるけど、旅の準備が終わるまでには時間もあるしな。
俺はみんなも食事を終えたのを確認し、両手を合わせて言った。
「ごちさーさまでした!」
するとティア達も
「ごちそーさまでした!」
と続く。
国王達は、不思議そうに俺達を見ながら
「よ、喜んで頂けて光栄です・・・」
と言うのが精いっぱいの様だった・・・
とイクスが目を輝かせて目の前に並べられた料理の数々を見回していた。
俺達は王城の中に3つの部屋を用意してもらい、それぞれの部屋にキャリートレーを運び込んだ後、メイド達の案内で朝食会場まで来ていた。
そこはパーティ会場の様な大きな部屋で、部屋の中央には長さ20メートルはありそうな大きなテーブルが置かれており、その上には「これぞ中世ファンタジー」と言いたくなるような、銀の食器に盛られた料理が「これでもか!」と言わんばかりに並べられていた。
ビュッフェ形式の様にも見えるが、テーブルには俺達用の椅子も準備されていて、それぞれの椅子の隣に、紺色のローブを着たメイド達が控えていた。
なるほど。
メイド達が俺達の代わりに料理を皿に取ってくれるつもりの様だな。
前世でバブル期にテレビでそんなのを見た気がするぜ。
俺はデバイスの無音通話で、
「みんな、気持ちは解るが、毅然としていろよ」
と通達しておいた。
そりゃあ俺だって、こんなご馳走は転生してから初めての事だし、旨そうな料理を前にして興奮してないと言えば嘘になる。
が、ここで欠食孤児みたいな姿を見せてしまうと「神の使い」という立ち位置が揺らぎかねないからな。
ここは、この国の人間が求めている「神の御使い像」を演じておかなければならないだろう。
俺達はメイド達に促されるままに席に着き、テーブルの向かい側にある4つの椅子に着くであろう国王達を待つ事にした。
その間もイクスは料理を見回し、何やらデバイスに記録しているし、ミリカも見た事の無い衣装を着ているこの国の人間の姿を思い出しながらデバイスに記録を続けている様だ。
テーブルのこちら側には7つの席が用意されていて、左から順に、ミリカ、イクス、シーナ、俺、ティア、メルス、ライドが席に着いていた。
少し年配のメイドが、数人のメイドに目配せをして指示を出した様だ。
数人がテーブルの端に置いてあったボトルの方に行き、グラスを用意してボトルの中味を注いでいる。
そして、そのグラスを車輪が付いた手押しワゴンの様なトレーに乗せて、俺達の前に一つずつグラスを配ってくれた。
グラスには、淡いピンク色をしつつ透明度の高い液体が入っており、ほのかに酸味があるフルーツの香りがする。
俺は念のため、グラスを見ながら情報津波を試してみた。
中味はアセロラに似たフルーツを絞った果汁を半年くらい発酵させた液体を、パパイヤの果汁の様なもので薄めた飲み物で、2%程度のアルコールが検出できる。
毒の類は入っていない様だが、なるほど、酒か。
俺達のメンバーで酒を飲んだ事があるのは、俺以外にはイクスとミリカだけだ。
これはイクスの研究の過程で酒が完成した時に、俺が酒の飲み方と、料理への活用法をデバイスで送っておいた為だ。
俺は一人の時にこっそり酒を楽しんでいたが、ティアやシーナがいくら成人していると言っても、まだ飲ませない方がいいだろうと俺は勝手に判断していた。
というのも、酒を飲んだイクスとミリカが酔っぱらって、二日酔いの為に2週間の休暇のうちの1日を無駄にしたというのをイクスから聞いていたからだ。
まあ、イクス達の肉体関係が発展したのも、酒の力があった様ではあるが。
俺は念のため、デバイスで「これは酒だ」という事をデバイスでみんなに通知しておく事にした。
そうしていると、ホールの入り口の扉が開き、国王と王妃、そして10歳前後の男女が二人部屋に入って来た。
子供は恐らく、王子と姫だろう。
「お待たせをして申し訳ありません。御使い様」
と国王は言いながら、テーブルの向かいの席に着いた。
王妃や子供達もメイドに椅子を引かれて席に着いていた。
「息子と娘のご紹介をさせていただきます」
と言って、今席に着いたばかりの王子と姫を立たせて
「息子のソルジュ。そして娘のフィーナです」
と言うと、王子と姫は軽く会釈をしただけで、また席に着いた。
国王はちらりと王妃の顔を見て頷き、俺達の方を見て
「此度は、王宮魔術師が大変ご不快な思いをさせた事、お詫びを申し上げます」
とその場で軽く頭を下げた。
「また、御使い様の旅の準備が整うまでとはいえ、御使い様が王城にお住まい頂ける事を、心より光栄に思っているところで御座います」
すると、王妃やメイド達も深々と頭を下げる。
王子と姫も、キョロキョロと周りを見て、慌てて同じ様に頭を下げた。
「そこで、ささやかでは御座いますが、本日の朝食を召し上がって頂ければと思い、こうして席を設けさせて頂きました」
とテーブルの上を見渡し、
「どれも我が国が誇る最高の食材ばかりをご用意させて頂いております。心行くまでお召し上がり頂ければ、この上無き喜びに御座います」
と言ってまた頭を下げた。
国王が頭を上げるのを待って、俺は席に着いたまま口を開いた。
「国王、そしてその妻、更にここで働く全ての者に、これらの供物を用意してくれた心遣いに感謝する」
と言って両手を広げ、
「旅立つまでの数日となるが、それまで世話になる事への感謝を、ここで先に述べておこう」
と言って、部屋の中を見渡した。
「この国には、グラスを持って乾杯をする慣習はあるか?」
と俺は国王に訊いた。
すると国王は「御座います」と言って、国王達の前にもグラスを用意する様にメイド達に指示をした。
国王と王妃がグラスを手に取り、俺もグラスを手に取った。
俺がデバイスで「俺の真似をしろ」とみんなに通知をすると、みんなもグラスを手にして、俺がするように顔の高さまで持ち上げた。
国王は俺が音頭を取るのを待っている様だった。
「では、この国の繁栄を願って乾杯するとしよう」
と言って、「乾杯!」
と声を上げた。
するとみんなも「乾杯!」と声をそろえた。
そこから食事が始まった。
俺がメイドに「あの料理を」と言うと、メイドが皿に盛りつけてくれる。
ティア達も俺の真似をして、メイドに「ショーエンと同じものを」と言って料理を運ばせていた。
イクスは「アレとコレと、あそこの肉もお願いします」と、色々な料理を盛りつけさせていた。
食事はどれも美味しかった。
料理の方向性としては、フランス料理に近いかも知れない。
フランス料理と言えばバターを大量に使う事で有名だが、これらの料理にもバターを多く使っているものがあって、テキル星では乳牛が存在している事が分かる。
ただ、パンは白パンしか無い様で、インド料理のナンに似ていた。
俺達はクレア星で色々な料理を試してきた事もあって、未知の料理でも旨いかどうかは見た目と香りで大体分かる様になっていた。
ここでも誰も臆する事なく料理に手を付けていて、みんな美味しそうに食べている。
「時に国王よ」
と俺は、腹八分目あたりで手を休めて口を開いた。
国王も手を休めて俺を見る。
「これからの俺達の旅は、この星を平和と安寧の星にする為の旅となる。そこで、この国の情勢、更に他の国の情勢についても話が聞きたい」
俺がそう言うと、国王はテーブルに置いたハンカチで口元を拭い、
「はい。お話させて頂きます」
と言って話し出した。
国王の話はこんな感じだ。
この星はバティカを含めて13の国があり、純粋な「開拓神の子孫」と呼ばれる王族と貴族が統治しているのが、この国「バティカ」である事。
そして、バティカの貴族がこの星を開拓してゆく中で、現地人を従えて国家として発展させたのが他の12の国なんだそうな。
で、それら12の国の初代国王は純粋なバティカの血筋なんだけど、王妃が必ずしもバティカの血筋とは限らず、これまで子々孫々と歴史が紡がれる中で、今では12の国王の中に、純粋なバティカの血筋は一人も居ないらしい。
全ての国には貴族制度があって、貴族になる条件は「家主がバティカの血筋を受け継いでいる事」なんだそうで、バティカの血が濃ければ濃いほど「高潔」とされて、貴族になりやすいんだそうな。
しかし、バティカ王国は、この星最初の国家であり、最も栄えている国でもあるので、国民が他の国に移住する事はものすごく稀との事で、12の国の王族貴族の「バティカの血の濃さ」は代々薄れていってるらしい。
なるほど。そりゃそうなるわな。
そこで、5代前のバティカ国王が、他の国々との交易を行う事を始め、主に衣服を作る生地の輸出を始める様になったんだとか。
バティカ商人は当然「純粋なバティカ人」なので、他の国に行くと、必ず王族や貴族から呼び出され、様々な人から結婚やら子作りやらを求められる様になったんだそうな。
ところが、生まれた子が「本物のバティカの血筋」かどうかが証明できないって事で、血縁関係を明確化する方法として「一夫多妻制」の制度を導入して、バティカ商人と、その国の貴族達との間で「バティカとの血縁がある証明」に使われて来たという訳だ。
なるほど。
この星の法で一夫多妻制を認めているのは、そういう経緯があったのか。
「で、そのバティカ商人というのはどれくらいの人数が居るんだ?」
と俺は素朴な疑問を投げかけた。
だって、どんなに絶倫だったとしても、行く先々で子種を求められてちゃたまんないだろう。
ところが、思っても居ない返事が返って来た。
「今、交易を行っているバティカ商人は居りません」
はあ? 何で?
「その理由は?」
と俺が訊くと、国王は少しため息をつき、少し言いにくそうな顔をして王子と姫の方をチラリと見た。
ああ、なるほど。
子供に聞かせたくない話なのね。
俺は、食事を終えて退屈そうにしている王子と姫を横目で見ながら王妃の方に顔を向け、
「国王の妻よ、子供達には他にやる事もあるだろう。子供達を連れて、先に席を外すがいいぞ」
と言った。
国王は、ほっとした様に息をつき、王妃が「恐れ入ります」と子供達を連れて部屋を出るのを確かめてから俺の質問に答えた。
「バティカ商人が向かう先々で、貴族達による奪い合いが起きる様になったのです」
と国王は言った。
バティカの血筋を欲しがる他国の貴族達は、自分達の家系を高貴な位置に保ちたいが為に、バティカ商人が来る度に血縁を結ぼうとしてくる訳だが、バティカ商人も数えきれないほどの妻が居るものの、「本当に愛する妻」を作る事が出来ない事を気に病んでいたんだそうな。
なるほどな。
前世で例えるなら、いわゆる「セックスフレンド」は沢山いるけど、本当に好きになった人と結婚できない事が嫌になったって感じかな。
で、バティカ商人の数はそうした背景もあって徐々に減っていき、残った数少ないバティカ商人の奪い合いが起きたという事か。
「さらにその奪い合いは過熱してゆき、とうとうバティカ商人が現地の貴族に殺される事件も起こったのです」
つまり、他の貴族に奪われるくらいなら、いっそ殺してしまえって事か。
家柄の序列を守る為に、これまで人気者だったバティカ人を殺す。
前世で例えるなら、私腹を肥やす利権を守る為なら、他人を不幸にしてもいいし「バレなきゃ殺しても構わない」って考えるサイコパスと同じか。
そして100年前、商人を寄こさなくなったバティカ王国に、他国が軍隊を寄こして侵攻して来て、国民を連れ去ろうとしたんだとか。
なるほど。
侵攻の理由はそれか。
しかし、神殿で神に祈りを捧げると、天より龍が舞い降りて、攻めて来た軍隊を一掃したとの事らしい。
「その龍は、どうやって侵攻してきた軍隊を一掃したのだ?」
と俺が訊くと、国王は額の汗を拭いながら続けた。
「我々はそれを、星々の伝承になぞらえて、フレア・ブレスと呼んでおります」
と言った。
なるほど、フレア・ブレスね。
宇宙を駆けるプレデス星人なら、太陽などの恒星が放つフレアの事は詳しいだろう。
バティカ王国もプレデス星人の末裔なのだから、まるでフレアの様なブレスを吐く龍を見て、そう名付けるのも頷ける。
国王が言うには、侵攻してきた軍隊は、一度のブレスで大半の兵士が蒸発して消えてゆき、二度目のブレスで残りの大半を蒸発させて、他は暴れる龍に押しつぶされたりめちゃくちゃにされたとかで、何とか生き残った10人足らずの兵士は必死で逃げて行ったそうだ。
なるほど、その敗走した兵士が自国に「龍神の怒り」として報告して、龍神を祭る神殿やら教会やらがいっきに普及した訳だな。
宇宙船アリア号で見た動画では「プレデスの技術によって一掃した」というような表現だったが、つまりは、龍の様な生き物を「遺伝子改変」で作り出してしまう事自体が「プレデスの技術」という事なのだろう。
だとすると、俺が夢で見たドラゴンもそうなのか?
人間とも会話が出来る、知的生命体であるドラゴン。
そんな怪獣を作り上げる技術が、プレデス星にはあるって事だ。
でも、俺も含めてプレデス星人は、知的ではあるが身体は貧弱だ。
そこまでの技術があるのなら、何故「自分達を強靭に作らなかった」のだろう?
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と俺は言って話に区切りをつける事にした。
他にも訊きたい事は色々あるけど、旅の準備が終わるまでには時間もあるしな。
俺はみんなも食事を終えたのを確認し、両手を合わせて言った。
「ごちさーさまでした!」
するとティア達も
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「よ、喜んで頂けて光栄です・・・」
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