氷河期ホームレスの異世界転生 ~俺が失ったものを取り戻すまで~

おひとりキャラバン隊

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真実を背負う頃

地球(9)全盛期の日本

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 1985年の年末は、みんなでNHKの紅白歌合戦を見て過ごす事になった。

 イクス特製の年越し蕎麦に、これまたイクス特製のおせち料理を食べ、初笑いの番組を見て1986年の正月を過ごす。

 何とも優雅な日常だ。

 1980年代は、年末年始はどこの店も閉まっていた。

 正月の3ケ日は、そうやって日本国民が英気を養う為の期間でもあったのだ。

 鮫沢内閣の国民からの支持率は90%を超える高さだ。

 旅客機事故が外国勢力の陰謀によるものだという噂はテレビでも報道されて、鮫沢は500名以上の日本人の命を救った英雄として、広く支持を受けている様だった。

 しかし、国会で所信表明の際「旅客機事故がアメリカの陰謀」だとか「アメリカの支配」という言葉を使った鮫沢には、アメリカ大使館より「撤回しろ」とのクレームがあったらしい。

 しかし鮫沢はこう返したそうだ。

「アメリカの支配下では無いなら、日米地位協定の内容を抜本的に変更しても良いという理解で宜しいか?」

 これに対してアメリカが否定し、その代わりに「経済制裁を行う」という手段に出るという脅しがあったらしい。

 しかし鮫沢も負けていなかった。

「そもそも、アメリカで起こった左翼集団の暴動によって死亡した中曽路首相の事件の責任はアメリカ政府にあるのだ。政府要人さえ守れないアメリカに、日本国土を守れるという妄想は捨てるべきでは無いか?」

 と返されたアメリカ政府は、グウの音も出なかったそうだ。

 とはいえ、プライドだけはどこよりも高いアメリカ政府は、11月1日より日本に対して次の様な経済制裁を加えて来た。

 まずは小麦と大豆の輸出規制。さらに石油の輸出規制。次いで医薬品の輸出規制。そして、日本国債の海外への販売を禁止、日本製のカメラや自動車の輸入を禁止、更に日本人のアメリカ渡航には特別なビザを必要にするというものだ。

 おかげで日本国内の小学校では給食に出すパンが不足し、急遽国産の米で代用する事になった。

 しかしこれは日本にとって何も悪い事では無かった。

 俺も前世では給食のパンが大嫌いだった。

 日本人は白米が食べられた方がいいに決まっている。

 日本が困ったのは石油の輸入が出来なくなった事だ。

 ガソリンの価格が急騰し、自動車産業にも打撃があった。

 しかし、日本には既にプロパンガスで動くエンジンがあり、自家用車の買い替えが進んで、景気の上昇が伺えた。

 日本製のガソリンや軽油で走る自動車やトラックは、アメリカ以外の国、とりわけアジアの発展途上国では人気だった。

 燃費が良くて故障が少ない日本車は、アメリカ以外の市場で販路を拡大していった。

 ヨーロッパではアメリカの圧力に屈する国も多かったが、日本製の自動車やカメラの輸入制限は無かったし、ドイツ車などは日本への輸出のチャンスと見て、むしろ積極的に交渉を迫ってきているという。

 そしてティアが開発したリチウムイオン電池が間もなく日本政府が推奨する新しい電池として承認される予定だ。

 これが承認されれば、ライドとメルスによって既に完成している純日本国内製の電気自動車が発表される事になる。

 石油不足によって経営が厳しくなったガソリンスタンド等には、電気ステーションを国の補助金で設置できる様に制度が作られた。

 つまり、日本中にあるガソリンスタンドがこれを活用する事で、どこでも自動車への充電が可能になるという訳だ。

 日本はこれから豊かになる。

 国内需要だけでも充分に国民が幸福になれるくらいの経済の循環が起こるだろう。

 小麦粉は不足したが、代わりにイクスが考案した「米粉」が発売され、そのノウハウを無償で製粉会社に提供する事で、米の需要は一気に増大した。

 日本中の農家がこれによって豊かになり、日本は戦後初の食料自給率80%超えを実現する事になった。

 これらはアメリカによる経済制裁が発表されてから、たった2ヶ月での出来事だ。

 もちろんこれらの施策は俺達が事前に準備してきたものだが、国民には鮫沢の手腕として認識されている。

 医薬品の輸入に関しては、アメリカ製の薬品が入らないのはむしろ好都合だった。

 これまで沢山輸入していたから「日本は製薬技術が遅れているのだろう」とアメリカは見ていた様だが、実のところはそうではない。

 ただ、これまでの日本の厚生大臣がアメリカに忖度そんたくして来ただけに過ぎなかったのだ。

 しかし、日米の政府の動きとは別に、民間企業の間でも日米摩擦が発生していた。

 それは、ガイアとテラに任せていた株式取引に関する情報から始まった。

「ショーエンさん、アメリカのオレンジコンピューターとマクロソフトをご存じですよね?」

 おせち料理をつまみながら話し出したガイアは、前世で2000年代を生きた人間なら誰でも知っているIT企業名を口にした。

「ああ、それがどうした?」

「今その2社が、僕とテラが見た事も無い様な動きをしているんです」

「ほう?」

 ガイアの言うという表現は、俺とガイア達だけに通じる隠語だ。

 これは「前世でも見た事が無い」という意味で、ティアや他のメンバーに、俺達が地球出身者だと知られない様にする為だ。

「どんな動きだ?」

 俺が訊くと、ガイアはデバイスを通じて情報を送って来た。

 その内容はこうだ。

 ジャンボ旅客機が墜落した日、俺達が作った旅客機に乗って無事に大阪に到着した乗客の中に、17名の日本人技術者が居たらしい。

 それは、最近徐々に家庭にも普及しだしたパソコンのOSに関する技術者だったらしく、どうやら彼らはオリジナルのOSを開発しており、その検証の為に大阪の大学に向かうところだったらしいのだ。

 1980年代のPCのOSと言えば、MS-DOSと呼ばれる、マクロソフトが作ったルールに従って指令テキストを入力しなければ動かないタイプのものと、オレンジコンピューター社が作った、アイコンをクリックする事で操作できるタイプのOSの2種類しか無かった。

 8ビットや16ビットで動く性能の低さから、俺達はそもそも使う必要さえ感じていないが、17人の日本の技術者達が作った「コロンOS」と呼ばれるそのOSは、前世の俺達がスマホなどで使用していた「直感的操作」が出来るタイプの画期的なOSだというのだ。

 もちろん、16ビットのハードウェアで出来る事といえばたかが知れているが、その概念が既にこの時代に生まれていたという事に俺も驚きを隠せなかった。

「このOSって、10年後にマクロソフトから発表される『窓達95』よりも先進的じゃないか?」

「ええ、そうなんですよ。僕もテラもとても驚きましたよ。まさか85年にこんなOSを考え付く人間が居たなんて考えもしなかったですからね」

 これは俺も予知していなかった事で、偶然か必然かは分からない。

 しかし、ジャンボ旅客機が墜落させられたのは、もしかしたらプラザ合意に反対したからという理由だけでは無い可能性もあった訳だ。

「なるほどな・・・、なら、このコロン社という会社の株を大量に取得しておくのがいいんじゃないか?」

「ええ、そう思って20%の株式は既に取得しています。もしショーエンさんが参入するというなら、更に買い増して49%まで購入できますよ」

「よし、じゃあ買えるだけ買っておいてくれ。次の鮫沢との会談でこの話をして、この国の通信インフラ整備を国策に押し上げてやろう」

「分かりました」
 そう返事したガイアは「ふふふ・・・、1986年はものすごい年になりそうですね」
 と不敵な含み笑いをしながら言ったのだった。

△△△△△△△△△△△△

 その年、ガイアか買った株は大いに値上がりしていた。

 コロン社の株はまだ上場していなかったが、鮫沢の発案という形でコロン社を国有企業化し、俺達が持っていた株も高値で売却できた。

 人天堂のファミコンゲームソフトはRPGに変革をもたらした「ドラゴンクエスティ」の発売により株価も大いに値上がりしていた。

 ガイアが「オニックス社」の株を大量購入していた事は言うまでも無いだろう。

 前世の記憶では国鉄が民営化を発表した年ではあったが、この世界では、鮫沢が国営化の継続を発表した。

 そもそも、前世の日本では度々行われた国営企業の民営化というのは、ほとんどがアメリカの圧力によるものだ。

 前世の記憶では、電電公社はNTTに、国鉄はJRに、郵便局はジャパンポストに、更に水道局まで民営化された時には国民が水道の水を安心して飲めなくなるという社会問題が発生する最悪の出来事だった。

 しかし、この世界では国営企業は国営のまま継続され、おかげで通信インフラの整備も順調に進み、世界で初めてのインターネット通信が日本で展開されるのを待つばかりになった。

 そもそも、電話線を経由して行われるインターネットなど効率が悪すぎる。

 シーナが作った無線インターネット技術は、前世で2000年頃に普及を始めたものとは比較にならない高次元の通信技術だ。

 通信速度は勿論、セキュリティの高さはピカイチだ。

 そして、半導体事業を国営化する事で、レアアースの採掘や生産工場を国内に作る事が出来、運搬のコストも安く済む為に国内の精密機器類の価格は前世の頃と比べてもずいぶんと安価で購入できる様になる。

 俺達が考案したそうした技術は鮫沢の手助けもあって、ほぼ全てが俺達と国との共同出資企業として展開する事が出来た。

 自動車産業に至ってはライドとメルスが作った技術基準を国内自動車メーカーにガイドラインとして配布し、国内産の自動車のエンジンやトランスミッションの技術は各段に向上した。

 それらは全てライドとメルスが取得した特許に基づいており、自動車メーカーの業績向上は、ライドとメルスの収益にも結び付く結果となる。

 更に好景気に沸く日本に対し、アメリカからは輸入が出来なかったが、ヨーロッパの高級ブランドが続々と日本市場に展開を始めていた。

 日本では景気が良くなっただけではない。

 人々の信仰心も向上していた。

 鮫沢が国会で発言する度に「龍神のご加護に感謝を」という言葉を発する為、国民は「龍神のご加護を得られれば、きっともっと豊かになれる」と信じ込んだ様だ。

 テレビ番組でもそうした龍神にまつわる番組を特番で放送する事が多くなり、人々は金銭的にも豊かになり、信仰心も強くなり、文化的にも歴史を重んじる風潮が生まれ、日本中で受け継がれて来た神事であるお祭りなども積極的に開催されていった。

 前世の俺は、お祭りというのは参加するのが楽しいのであって、伝統を守るのは大変で面倒だと考えていた。

 しかし、それもアメリカによる「日本人の価値観を変える為のプロパガンダ」の影響だったという事なのかも知れない。

 地球上で世界一歴史の長い日本という国の神事が軽んじられて良い訳は無いのだ。

 事実、そうした神事には、歴史的に「神」と呼ばれた人々が何を成してきたのか、そして何を伝えていくべきと言われて来たのかがうたわれている。

 それは惑星開拓団が地球に来て人々に何を伝えたか、そして何を受け継がせたのかを世代を超えて伝えていく為に必要な情報が詰まっていたのだ。

 なので、こうした神事は人類の歴史が続く限り受け継がれなければならない。

 激しい祭りでは事故によって死者が出る事もある。

 しかし、それでも祭りは禁止してはいけないし、人類にとってかけがえのない情報を受け継ぐ為の儀式は無くしてはいけないのだ。

「どうだ、ガイアにテラ。アメリカは日本から基地を撤退すると思うか?」

 俺は前世でアメリカ人だったガイアとテラにそう訊いてみた。

「そうですね、アメリカは日本市場を失ってからは中国の市場を狙っているみたいですから、日本の基地を手放すつもりは無いと思いますよ」

「私もそう思う。アメリカは共産党の国が根本的には嫌いだもの。多分、ソ連が崩壊する歴史が、中国の崩壊という形にすり替わって発現するんじゃないかって思うわ」

 二人の見解はもっともだ。

 しかし、俺は別の見解を持っていた。

「中国が『世界の工場』として機能していく事に間違いは無いと思うが、共産主義を崩壊させるのは無理だろうな。何せ、中国共産党は、アメリカよりも覇権思想が強い連中だ。むしろ中国がアメリカ市場を乗っ取ろうとして、結局は政治的に衝突する事になると思うが、どう思う?」

「なるほど・・・、それはそうかも知れませんね」

 ガイアは腕を組んで俺の話を細部まで飲み込んで理解しようとしている様だった。

「いえ、僕が知っているアメリカは、『世界の警察』であり、『正義のヒーロー』というイメージでしたから、そんな陰謀があるとは少し信じるのに時間を要するだけです」

 なるほどな。

 俺は情報津波で色々な陰謀も知る事が出来るが、ガイアもテラもそうした特殊能力は持っていない様だし、前世でも信じて居た筈のアメリカ政府がそんなドロドロした陰謀まみれの国だなんて、信じたくは無いというところなのだろう。

 しかし現実はこの通りだ。

 前世で今後起こる戦争も、全てアメリカが絡み、全ての戦争で戦後の石油利権をアメリカが奪取していた。

 1991年の湾岸戦争も、表向きにはイラクがクウェートに侵攻した事がキッカケと言われており、当時の大統領だったフセイソが悪者とされていたが、実際にはフセイソはアメリカの陰謀によってかけられたワナにはまり、アメリカの采配でクェートの軍隊がイラクに軍事的嫌がらせをかけ続けていた事に報復する形でイラク軍をクウェートに侵攻させたものを、西側メディアは「イラクが罪の無いクウェートの民間人を殺している」などと報道してフセイソ大統領を悪の権化に仕立て上げたのがキッカケだ。

 フセイソはそれまでアメリカとは石油の流通によって良好な関係を築いていたが、度重なるアメリカからの石油価格の値引きを迫られていたのを断り続けており、それがクェート軍を使っての嫌がらせへと発展した事に危機を感じて、アメリカの言いなりになったウェートに制裁をかける為に侵攻しただけの事だ。

 事実、クェート側には国連軍が加わり、イラクのフセイン政権はダメージを受け、アメリカの思惑通り、安価で石油を流通する仕組みを作っていく事になっていく訳だ。

 更に2001年にはアメリカで同時多発テロが起こった時に、フセイソ大統領はそれがアメリカの「自作自演」と見抜いており、国際会合の席でアメリカの被害について「自分で蒔いた種だ」と述べていた。

 フセイソを生かしておいては「同時多発テロが自作自演であった事がバラされる」と警戒したアメリカは、「イラクに大量破壊兵器がある」という話を捏造し、軍隊を派遣してイラク国内を壊滅させ、フセイソ大統領の殺害にまで至る事になる。

 もちろん大量破壊兵器などイラクが持っている訳は無いし、戦後もアメリカ政府は「大量破壊兵器は見つからなかった」と公表はしていたのだが、それを咎めたメディアは放送権を剥奪されたりして、結果的に世界にアメリカの悪事が大々的に取り上げられる事は無くなっていた。

 更にアメリカは同時多発テロの報復としてアルカノイドというテロ組織を名指しで非難し、表向きは報復という形アフガニスタンへ侵攻する事になる。

 アフガニスタンは世界でも屈指の石油産出国で、しかもドル基軸の取引をしない国としても有名だった。

 しかし、結果的にはアメリカの偽旗作戦にせはたさくせんによってアメリカでの同時多発テロはアフガニスタンに責任があると責任を擦り付けられ、アメリカはアフガニスタンへの侵攻の結果、政権の転覆と石油利権の獲得に成功した訳だ。

 さらにアフリカ北部のリビアという国では、カダファという大佐が政権を担っていたが、西欧諸国に経済的に食い散らかされて来たアフリカ諸国を救う為に、独自の銀行を作ってアフリカ諸国に無金利で融資をし始めた。

 さらに石油をドル基軸で取引させようとするアメリカに対抗し、独自の銀行が発行するアフリカで通用する通貨を発行しようとしたところ、これまたアメリカの陰謀によって「カダファはリビアの独裁者で国民を苦しめている」という嘘の報道を世界中で流され、国連軍がリビアを侵攻してカダファ大佐は大金を掴まされた国民によって殺害されるという最後を遂げる事になった。

 他にも沢山の戦争があり、その全てにアメリカが絡んでおり、更に全ての戦争の後に莫大な利益を得て来たのもアメリカだった。

 前世の記憶を情報津波で得た情報とつなぎ合わせると、どうしてもそのような結果に結びついてしまうのだ。

 そして、アメリカの裏にはレプティリアンが居る。

「これでも正義の国だと思うか?」

 と俺が言うと、ガイアとテラは目を伏せて、悲しそうに首を横に振った。

「何もアメリカの国民が悪い訳じゃない。彼らはとても良い人達が多いし、俺もアメリカの文化は好きだぜ。だけど、この時代に始まった地獄の計画を、今の内に潰しておかないと、やがて来る2020年頃には奴らの計画は最終段階に突入してしまう。そうなればもう、取返しが付かないんだ」

「そうでしたね。ショーエンさんは、日本のそうした苦しみを知っているんですものね」

 俺にそう言ったテラの目は、少し悲し気でもあった。

「分かりました。僕も日本の事は大好きでした。アニメもゲームも日本のものが一番だったし、ファッションも食べ物も日本のものが大好きでした。車もカメラも何もかも、日本製というだけで安心できたし、僕も中国製ばかりになるアメリカなど見たくはありません」
 とガイアは決意した様にそう言い、「最後までショーエンさんに付いて行きますよ」
 とそう言ってくれた。

「ありがとう。期待してるぜ」

 俺達はそうして1986年を駆け抜ける事になった。

 特に自動車産業への影響は大きかった。

 ティアが開発したリチウムイオン電池と電気モーターは省電力で高効率なエンジンへと昇華し、ライドとメルスが開発したトランスミッションとサスペンションは日本製の自動車の乗り心地と走りの安定性を各段に向上し、シーナが開発した通信技術は、日本中の道路に設備を設置する事で、事故や故障があってもすぐに位置を特定できる安全機能へと繋がった。

 その資金は特許の収益は勿論、ガイアとテラの株式投資による利益も大きく貢献し、その収益はグループ会社であるイクスやミリカの会社の研究開発費にも使われた。

 鮫沢の力も大いに役立っている。

 政治的に国内の交通インフラの整備は加速してゆき、地震や災害に強い道路の整備が急ピッチで進んでいた。

 やがて来る1995年に阪神地方を襲う大地震にも耐える為の整備でもあるが、その地震でさえアメリカの地震兵器が原因であった可能性が排除できないのだ。

 そうした事を念頭に整備を進め、やがては2011年にも来るかも知れない東北地方の地震への対策も進めなくてはならないだろう。

 更に、2035年時点でもまだ来ていなかった南海トラフ地震の脅威にも耐えられる都市計画を進める必要もある。

 都市計画とは建設と土木事業であるが故に時間がかかるのだ。

 今から始めても災害が起きるまでに間に合うかどうかは分からない。

 しかし、俺が知る災害規模を大きく減衰させる事ができるならば、これはやっておく価値がある。

 この国が「神に守られた国」であり続ける為に。

 そうして1986年を駆け抜けた俺達は、あっという間に1987年の正月を迎える準備を始める事になった。

 イクスが作る年越し蕎麦と、絶品のおせち料理。

 日本が好景気に沸いた1986年の年末は、テレビも明るい話題が多くて人々も皆幸せそうだった。

 鮫沢政権の支持率は98%にまで高まっており、もはや長期政権が確約された様なものだった。

 しかも景気だけでなく、食事の改善も進んでおり、国民のガン死亡率が減っている事が厚生省の調査によって明らかになっている。

 アメリカからの輸入食材や薬を使わなくなった事が影響しているのかどうかは定かでは無いが、俺はその可能性が高いと考えている。

 そして、人々が幸福に満たされる事で自然免疫力も高まっているのだろう。

 インフルエンザ等の重症化も減っている傾向にあるそうだ。

 ヨーロッパのどこかの国の経済アナリストがテレビでこう言っていた。

「日本は歴史も長く、人々は明るく謙虚で、しかも親切な人が多い。街は綺麗で経済も豊か。しかも技術力は高く、世界中のどこにも無い様な整備された道路を高性能な自動車やバイクが走っていて、ゲームやアニメも面白いものがあり、更に犯罪率は先進国で最下位! ここまで完璧な国が他にあるでしょうか? アメリカに経済制裁を受けている国とは思えない程です」

 日本を大絶賛するそのアナリストは、最後にこう言った。

「社会学者、エズルが1979年に発表した著書を引用して、今こそジャパン アズ ナンバーワン! と言いたいですね。もうこの言葉しか出てきません!」

 この言葉は、1979年の流行語大賞にノミネートされた言葉ではあるが、1987年の訪れを楽しみに待っていた俺達は、今、アメリカが水面下で恐ろしい動きをしている事を、知る由も無いのだった・・・
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