29 / 34
乗務29 『氾濫』幕間①
しおりを挟む『氾濫』初日の第四陣も終わり、トードゥロ闘技場は静けさ…ではなく、無事初日を終えたことと、山のような肉のドロップ品に商人たち冒険者たちは盛り上がりを見せていた。
そんな中、冒険者ギルド運輸部旅客課スモールシダー営業所は、『氾濫』のためにいつもよりも稼働台数(運転手)を増やしているため、昼夜入れ替わりの時間は激しく忙しかったりする。
夕方の点呼を終えて夜番を送り出すと昼番の運転手が待ってましたと言わんばかりに納金にやってくるのである。
未収金(売掛のチケットやら)のチェックに、休憩時間のチェック、納金額のチェックをして、運転手には魔導納金カウンターに売り上げ金を納めてもらうのだが、魔導納金カウンターは一台しかないので、『納金待ち』という列が出来てしまうのだ。
もっとバラバラに帰って来てくれれば良いのに…。と思わないでもないが、乗り場に利用者が待っていれば乗せてしまうのは運転手の性だろう、時間が許す限り乗せてしまう。
もちろん稼働時間が過ぎてしまえばペナルティが発生するため、運転手は上手いこと見極めなければいけないのだが…。
まあ雨の日や、今回のように『氾濫』などではない限り、頻繁にあるわけではないので、少し我慢である。
…というワケで夜の運行管理者が来るまで、この作業は営業所長自らが一人でやっていたりする。
「(………くそぅ、本番初日だから朝早く来たから眠いっ、疲れたっ!………明日はもういつも通りの時間に来よう…)」
そう思いながら納金待ちの列を捌く営業所長。口に出さない辺り、大人である。
~~~~~~~~~~~~~~~~
「おはようございまぁす」
夜の運行管理者がのそりと出勤してくる。
納金待ちの列を捌き、その他自分の仕事を終えた所長は仕事を引き継ぎ、帰り支度をする。
「じゃ、あとよろしく………あ、明日は朝は普通に来るから」
そう言い残し、若干重たい身体を引きずり帰路に着いた。
引き継いだ運行管理者は昼番の日報を確認して、未収金(売掛のチケット)などを再確認し、魔導PCに入力していく。
魔導PCにはまるで現代の表計算ソフトが入っているかのような画像が魔導モニターに映し出されていて、表に沿って入力していくのだが…。
うむ、魔法しゅごい…。
夜八時になり、本日最後の点呼を行う。
営業所のカウンターを挟み、運転手が数人。納金待ちはいない。
「ご存知の通り、本日は『氾濫』の初日です。昼もまあまあ忙しかったようなのでおそらく夜もそれなりに忙しいと思います。また『氾濫』の影響で周辺の魔物が活性化しているかもしれませんので、走行中に遭遇した場合は逃げるか戦うか、お客様を優先に考えて対応してください」
『逃げるか戦うか』
逃げる場合、大抵はタクシーのスピードに魔物は追い付けないので、道を塞がれていない限り『逃げる』が正しい対応と言えるだろう。
戦う場合は、『運転手』は『ニホン人』の血を引いているため魔力量が多く、またソレに比例して強かったりする運転手が多い。
上記の『道を塞がれて』いる場合は、乗客に断りを入れて戦闘に移る場合があったりする。
また『逃げる・戦う』の他に『奥の手』もあったりするのだが…。
「あ、あと闘技場周辺だと酔っ払った冒険者とか多いと思うので、あまりモメたりしないように気を付けてください。では気を付けて、いってらっしゃい」
点呼を終え、入力作業の続きに入る。
このあとは、苦情や事故などがない限り、営業所内はしばらくは忙しくはならないだろう。
忙しくなるのは日を跨いで二時を過ぎてからになる。
二時を過ぎた辺りから、朝から出ている隔日勤務の運転手と夕方に出ている夜番の運転手が帰ってくるのだ。
これもバラバラに帰って来てくれると納金がスムーズに進むワケなのだが…。
コレが二時~四時が暇だったりすると、四時以降にバタバタと帰って来て、激しく忙しくなったりする、という状況になってしまったりする。
「(………『氾濫』中はそうなるだろうな…)」
…と、予想はしているようだ。
そして時間は過ぎていき…。
二時…暇。
「………」
三時……暇。
「…………」
四時………。
「………………(ぐぅ…マジで纏めて帰ってくんなっ!?捌ききれんっ!!………あっ、そろそろ五時出の人たちも来そうじゃんっ!?やべぇっ!!)」
予想通りではあるものの、やはり平常時より稼働台数が多いため、またしても納金待ちの例が出来てしまうのは仕方のないことだろう。
所長は早く来ないとは言っていたが、五時にはもう一人、別の運行管理者が出勤してくるので、それまで耐え抜くしかないっ!と捌いていく…。
こうしてスモールシダー営業所の『氾濫』初日が終わっていき、同時に二日目が始まる…。
…と言っても夜番の運転手は帰ってくるのが遅い人は七時半頃になる人もいたりするのだが…。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
今回のネタ①:魔導納金カウンター=お金を計算して表示。『確定/完了』ボタンを押すとそのまま納めてくれる魔導具。
今回のネタ②:稼働時間=昼番、夜番、隔勤、それぞれ働く時間は定められています。
今回のネタ③:ペナルティ=次回の乗務禁止とか。
今回のネタ④:魔導PC=魔法しゅごい。
今回はちゃんとタクシーネタで。
次回もよろしくお願いします。
0
あなたにおすすめの小説
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります
はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。
「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」
そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。
これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕!
毎日二話更新できるよう頑張ります!
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました
チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。
完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。
【捕食】
それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。
ゴブリンを食べれば腕力を獲得。
魔物を食べれば新スキルを習得。
レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。
森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。
やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。
これは――
最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる