婚約者を押し付けられたので妹好みに鍛え上げます

京月

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婚約者を押し付けられた

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 私の妹はとてもワガママだ。

 そんな妹を心配して父様が婚約者を決めたのだけど。


「私こんな婚約者いらない。お姉ちゃんにあげる」


 妹に押し付けられた婚約者はそれはまあ見事に女性受けしない見た目をしていた。

 身長は180くらい、体重は120キロ程、顔にはニキビがあり、髪はぼさぼさ、少し体臭がきつい。

 父様も家柄だけで選んだらしく、初めて婚約者にあった時は少し引いたらしい。

 家同士の決まり事だから無下にするわけにもいかず、私か妹のどちらかが結婚しないといけないのだけど。


「すみません。こんな僕のせいで嫌な思いをさせてしまってすみません」


 性格まで暗い。

 何だか腹が立って来た。

 
「なんで謝るの?」

「え?だって僕のせいであなたが嫌な目に」

「私が嫌なんて言った?」

「いえ。でも怒ってますよね?」

「ええ!怒ってるわ!でもそれは身勝手な妹と自信を持っていないあなたに怒っているのよ」

「…自信なんて、モテるわけないじゃないですか」

「そうね。ならつけなさい」

「え?」

「私があなたを妹好みのイケメンにしてあげる」
 

◇◇


 先ずは体重を落とすところから。

 とにかく走らせた。


「ぜぇ…ぜぇ…」

「誰が休んでいいって言ったの?」

「そんな…」

「走りなさい!」


 彼の体重はみるみる落ちていった。

 並行して筋肉を鍛えさせている。

 それから2ヵ月程、体は完璧に仕上がった。

 こう見ると中々背中が大きくてグッとくるものがある…かもしれない。


 次は肌荒れ。

 スキンケアを片っ端から行う。


「肌が治れば印象はガラッとかわるわ」

「顔がべちゃべちゃします」

「文句を言わない!」


 ニキビが消えた。

 よく見ると整った顔立ちをしているかも。


 ヘアケアも怠らない。

「油を髪に塗って大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫よ。それはヘアオイルって言うの」


 艶を取り戻した髪を短く切りそろえることで妹好みにしていく。

 意外と男前に仕上がった。


 体臭は食生活を改善すれば大丈夫。


「普段何食べているの?」

「お肉ばかりです」

「じゃあここから2ヵ月は野菜だけね」

「そんな!!」

「だめ」

「ひどいですよ」

 
 最近婚約者君はよく笑うようになった。

 それもそうか、半年以上ほぼ毎日一緒にいるわけだし。

 仕上がった婚約者君は以前とは見違えるほど男前になった。

 これは完全に妹の好みだ。

 ちなみに私と妹の好みは一緒。
 
 特に意味はないけどね。


「さぁ!!妹をギャフンと言わせてあげなさい!」

「…」

「どうしたの?」

「いえ。行ってきます」


 遠くから2人の動向を見つめる。

 妹舞い上がっているな。

 それはそうか、あんなにイケメンなんだし。

 あれ?なんで私悲しいのだろう…。


「どうだった」

「告白されました」

「そう。よかったじゃない」

「断りました」

「なんで?なら何のために頑張ってきたの?」

「姉さんのためです!姉さん、僕と結婚してください!!」
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