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村人に襲われる

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 "化け物は黙ってなさいよ"その言葉が頭から離れない。


 化け物はお前だろ!!!今まで私がどんだけ我慢してあなたの世話をしてきたと思ってるのよ!!男に何度言い寄られても頭の片隅であなたを思い断ってきたのに、自分は貴族に結婚を申し込まれてすぐに承諾して!どれだけ自己中心的なのよ!!許さない!許さない!!


 怒りにとらわれた私の耳に家のドアがノックされる音が聞こえてくる。ヘンゼルはもう家を出て私しかいないのに…もしかして私の正体に気付いてくれたのかも!

 私は勢いよく扉を開けるとそこにいたのはクワや鎌を持った村の男たちだった。


「化け物を取り押さえろ!」


 隣のおじさんの言葉で数人の男が私を床に押さえつける。そしてそのまま髪を掴まれ森の中へと引きずられる。


 痛い痛い!怖い!!やめて乱暴しないで!!どこに連れてくのよ!?


 たどり着いたのは森の深くにある洞窟だった。この辺りは凶暴な動物たちも目撃されているので滅多の人が来ないことで有名だ。村の男たちは私を洞窟の中に投げ入れるとそのまま総出で岩を動かし私を洞窟の中に閉じ込めた。


「どうしてこんなことするのよ!!!出して!ここから出して!!」

「うるさいぞ化け物!今まではグレーテルに免じて見逃してやっていたがこれからは違う。お前みたいな化け物がいると村に迷惑がかかるんだよ!そこで大人しく死んでろ」


 男たちが立ち去る音が聞こえる。


「やめて置いてかないで!助けてよ!!何で私がこんなことに…怖い。怖いよ~~~~!!!!」


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 あれから何日経っただろうか。洞窟の中はいつも暗く今が朝か夜かもわからない。私は洞窟の中で滴る水だけをたよりに生き続けていた。いっそ死んでしまったほうが楽なのに、何度もそう思ったが何故かそう思うたびにヘンゼルが頭に浮かび私を生き延びさせる。

 ただひたすら恐怖に耐える日々、それは突然終わりを告げる。洞窟の入り口を塞いでいた岩が壊され光が差し込む。そして一人の女性の声が聞こえてきた。


「誰かいるのだろ?返事をしろ」


 返事をしたくても声が出ない。何度やっても出るのはかすれた息だけ。私はここにいる。ここにいるから助けて……


 歩くことすらままならず倒れこんだグレーテルを抱きかかえたのは先ほどの女性だった。


「君だったか。やっと見つけたよ」


 薄れゆく意識の中燃えるような赤い髪をした女性は私を見て優しく笑いかけてくれたのだけが見えた。


 
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みんなの感想(1件)

闇鍋
2020.12.28 闇鍋

初めて読みました、これからどうなるのかドキドキしちゃいます…
お姉さん幸せになって欲しい!
最近寒いので体大切にしてください。

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