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第三話

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「失礼します!王様緊急事態です!」


 王は大臣たちとともに会議の最中だった


「何事だ」


「聖龍様がこちらに向かっております!!」


「なんだと!何故だ?」


「分かりません!」


 どういうことだ、聖龍様は洞窟から出ないはず


「失礼します!」


「今度は何事だ!」


「聖龍様が王都に到着いたしました!王様との面会を求めております」


「分かった、今行く」


 城の庭に出ると上空に聖龍様が飛んでいるが見える

 聖龍様は目と鼻の先まで近づいてくる

 
「お久しぶりです、聖龍様」


「久しいな王よ、ずいぶんと老けたな」


「最後に会ったのは30年前になりますので当然かと」


 しかしこの三十年間聖龍様が洞窟を出たことなど無かった

 そもそも聖龍様に関する記録の中でこんな事態は一度の無かった


「この度はどうされたのですか?」


「貴様のバカ息子についてだ」


「ゼラードのことですか?」


「そうだ、奴は私の大好きなラーシェを随分といじめてくれていたらしい。そんな奴が王となる国などと契約を結ぶことなど不毛だからな、契約を破棄するためにここに来た」


 聖龍様は頭の上にいる聖女をいたわりながら王に用件を伝える


「!?待って下さい!!」


「猶予など与えぬ。ではさらばだ」

 
 聖龍様は有無を言わせずどこかに飛んで行ってしまった

 まずいことになった

 聖龍様との契約とはこの国が聖龍様に守られている事を意味する

 それが無くなれば他国からの侵略を受けることになる

 そうなれば国の存続すら危うい


「ゼラードを呼んで来い!!すぐにだ!!!」


 しばらくするとゼラード王子がやって来る


「どうされたのですか父上」


「どうしたのではない!!貴様婚約者の聖女になにをしたんだ!!」


「え…特に何も…」


「嘘をつくな!!聖龍様がお前の聖女に対する仕打ちに怒り契約を打ち切ると言っておられている」


「!…僕はどうなるのでしょうか…?」


「聖龍様にまかせる」


「そんな…」


 数日後、聖龍様がまた王都に来た


「貴様がゼラードか」


「……」


 ゼラード王子は完全に委縮してしまっている


「返事もできないのか貴様は」


「は、初めまして…」


「貴様のラーシェに対する非道は全て聞き及んでいる。そして私は貴様が王となるなら契約はしない」


「ラーシェに対する非道は謝罪します。ですからどうか契約の続行を…」


「自らの保身しか考えない屑が」


「……」


「契約を継続する方法を一つだけ提示してやる」


「それは一体」


「貴様の国外追放だ」


「そんな…」


「王よどうするのだ、代案は認めんぞ」


「…分かりました。その提案を受け入れます」

「父上!」


「すべては貴様の自業自得だゼラード受け入れろ」


「…はい」


 ゼラードはその数日後王位継承権を剥奪され国外追放された


「ありがとう聖龍様」


「いいのよラーシェ、私はあなたのことが大好きだから」


「私も大好きよ」

 
 こうして聖女と聖龍は死が二人を別つまで仲よしであった
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