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トランス・セクシャル・オンライン
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「……マズった。ヒロインの側かよ」
初期設定を終え、辛抱たまらんという言葉そのものの気持ちでゲーム開始ボタンを押した僕は、ログイン早々自分のバカさ加減に頭を抱えた。
スリーサイズ89・62・86――バストをあえて90未満とするところに玄人のこだわり。髪型は黒髪のショート。若干釣り目のクール系美人で、唇の左下によだれぼくろあり。乳首は大きめで陥没ぎみ。陰毛は薄く、クリトリスは少し大きめ。普段は押し殺しているが性欲は強く、男に開発されるために生まれてきたような女――
……そんなありったけの理想をつっこんだスペックのヒロインが、まさか自分の身体になって返ってこようとは思わなかった。
『トランス・セクシャル・オンライン』
どこかで聞いたようなタイトルだが、れっきとした新作VRゲームである。
フルダイブ型VRシステムが実用化されてもう久しいが、ファンタジーMMOだとかそういったものが流行っているかというと、実のところそうではない。なんでも試験運用の段階で実際に死ぬプレイヤーが続出したらしく、どこの国でも行政からストップがかかったのだ。
その代わりというべきか、先駆けて隆盛を極めたのはやはりエロメディアだった。性的な快感というものはVRシステムと親和性が高かったらしく、実際のそれと遜色ないものになるまでに時間はかからなかった。
だが、そうなるとここにも行政から規制がかかる。理由は少子化の加速である。実際のそれと変わりないセックスがVRでお気楽に楽しめるのだから、結婚する人間が減るのは自明の理である。
結果、アダルト向けVRゲームは地下に潜った。人々は法を犯してでもそれをやりたがり、危ない橋を渡って入手したあやしげなゲームであろうと果敢にダイブし、日夜、仮想現実世界でのアバンチュールに励んでいるのだ。
「……ようやく手に入れたのになあ」
午後の日差しが入ってくるワンルームマンションとおぼしき部屋に、ぶかぶかのTシャツとショーツ一枚のしどけない姿で仰向けに寝転がって、僕は深いため息をついた。
……正直、このゲームを入手するために払った苦労を思うとため息では済まない。
大学の講義をサボって肉体労働を入れまくり、必死に稼いだ三ヵ月分のバイト代。胡散臭いサイトをはしごしてようやくたどり着いた裏ショップと、そこで手に入れた御禁制のブツ。震える手でインストールし、祈るような気持ちでヘッドギヤをかぶった瞬間……。
――そんな記憶が走馬灯のように頭を駆け巡り、不覚にも涙が出そうになった。
「……とりま、ログアウトするか」
そう思って僕はコンソールを開いた。
―――――――――――――――
NAME:マコト
舌:12
唇:15
首筋:10
乳首:11
脇の下:20
背中:16
へそ:8
クリトリス:18
陰唇:8
Gスポット:1
ポルチオ:0
太腿:12
足首:8
足裏:19
足指:2
クリトリス・オーガズム ×
Gスポット・オーガズム ×
ポルチオ・オーガズム ×
―――――――――――――――
これが現在の僕のステータスだ。……男らしく実名プレイとばかりにガッツリ入力された本名がいっそう虚しい。
細かく設定された各部のステータスは性的な開発度合いをあらわしているのだろう。その丁寧なつくりこみに興味は尽きないが、自分自身が開発される側となると話は別だ。
できるだけ元値に近い値段でソフトを売り払う方法を模索しながら、僕はコンソールにログアウトボタンを探した。
――けれども、ログアウトボタンはどこにもなかった。
初期設定を終え、辛抱たまらんという言葉そのものの気持ちでゲーム開始ボタンを押した僕は、ログイン早々自分のバカさ加減に頭を抱えた。
スリーサイズ89・62・86――バストをあえて90未満とするところに玄人のこだわり。髪型は黒髪のショート。若干釣り目のクール系美人で、唇の左下によだれぼくろあり。乳首は大きめで陥没ぎみ。陰毛は薄く、クリトリスは少し大きめ。普段は押し殺しているが性欲は強く、男に開発されるために生まれてきたような女――
……そんなありったけの理想をつっこんだスペックのヒロインが、まさか自分の身体になって返ってこようとは思わなかった。
『トランス・セクシャル・オンライン』
どこかで聞いたようなタイトルだが、れっきとした新作VRゲームである。
フルダイブ型VRシステムが実用化されてもう久しいが、ファンタジーMMOだとかそういったものが流行っているかというと、実のところそうではない。なんでも試験運用の段階で実際に死ぬプレイヤーが続出したらしく、どこの国でも行政からストップがかかったのだ。
その代わりというべきか、先駆けて隆盛を極めたのはやはりエロメディアだった。性的な快感というものはVRシステムと親和性が高かったらしく、実際のそれと遜色ないものになるまでに時間はかからなかった。
だが、そうなるとここにも行政から規制がかかる。理由は少子化の加速である。実際のそれと変わりないセックスがVRでお気楽に楽しめるのだから、結婚する人間が減るのは自明の理である。
結果、アダルト向けVRゲームは地下に潜った。人々は法を犯してでもそれをやりたがり、危ない橋を渡って入手したあやしげなゲームであろうと果敢にダイブし、日夜、仮想現実世界でのアバンチュールに励んでいるのだ。
「……ようやく手に入れたのになあ」
午後の日差しが入ってくるワンルームマンションとおぼしき部屋に、ぶかぶかのTシャツとショーツ一枚のしどけない姿で仰向けに寝転がって、僕は深いため息をついた。
……正直、このゲームを入手するために払った苦労を思うとため息では済まない。
大学の講義をサボって肉体労働を入れまくり、必死に稼いだ三ヵ月分のバイト代。胡散臭いサイトをはしごしてようやくたどり着いた裏ショップと、そこで手に入れた御禁制のブツ。震える手でインストールし、祈るような気持ちでヘッドギヤをかぶった瞬間……。
――そんな記憶が走馬灯のように頭を駆け巡り、不覚にも涙が出そうになった。
「……とりま、ログアウトするか」
そう思って僕はコンソールを開いた。
―――――――――――――――
NAME:マコト
舌:12
唇:15
首筋:10
乳首:11
脇の下:20
背中:16
へそ:8
クリトリス:18
陰唇:8
Gスポット:1
ポルチオ:0
太腿:12
足首:8
足裏:19
足指:2
クリトリス・オーガズム ×
Gスポット・オーガズム ×
ポルチオ・オーガズム ×
―――――――――――――――
これが現在の僕のステータスだ。……男らしく実名プレイとばかりにガッツリ入力された本名がいっそう虚しい。
細かく設定された各部のステータスは性的な開発度合いをあらわしているのだろう。その丁寧なつくりこみに興味は尽きないが、自分自身が開発される側となると話は別だ。
できるだけ元値に近い値段でソフトを売り払う方法を模索しながら、僕はコンソールにログアウトボタンを探した。
――けれども、ログアウトボタンはどこにもなかった。
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