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優しい友達
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*優しい友達*
~親友~
「私ね、好きな人が出来たんだ!!」
そう嬉しそうな顔で親友の恵美は
私の部屋のベッドに腰をかけながら言う。
ズキッとした心と表しようのない不快な感情に襲われつつ、一瞬で表情を作り、笑顔で「良かったね!どんな人なの??」と質問すると、
「尚先輩!!」と彼女は即答した。
相変わらずキラキラした目で話す恵美は
私のこの気持ちに気付くはずもなくそのまま
話を続けた。
「尚先輩、カッコいいし優しいし、頭も良いし
バトミントンも上手だし尊敬出来るところしか
ないもん!!」
恵美は、今年バトミントン部に入部して、1つ学年が上の尚先輩に優しく接して貰っているうちに
どうやら彼に惚れてしまったようだ。
文武両道で身長も185センチあり、顔もそこそこ良く、性格の明るさも兼ね備えているあの男は
女子たちの間で絶大な人気を誇っている。
でも、私は知っている。彼がどういう人間かを。
「尚先輩、モテるし、ライバル多そうじゃない...??」
私がそう言うと、恵美はむっとした顔をして反論する。
「それはそうだけど!!!でも、私今度、デートに誘われたもん!!」
''デート''その言葉に私は思考が一瞬停止する。
「ど、どこにデートに行くの??」
自分でも少し動揺しすぎたかな?と思ったが
尚先輩にデートに誘われて浮かれている恵美は
私の変化には全く気付かない。
「今度の日曜日、お昼ご飯を食べに行って、その後は尚先輩の家で、一緒に映画みるの!!」
初デートが家...??
密室で2人っきり...。
男と女である限り、何もないことはないだろう。
恵美だって、先輩の家にいくこと=そういうこと
だって期待しているはずだ。
「そっか。楽しんで来てね!」
心の中の黒い感情を上手く隠して、私は目の前にいる彼女にそう告げる。
「また、尚先輩とのデートが終わったら
琴葉に報告するから!
じゃぁ、また学校でね!」
言いたいことを言い終えて満足したのか恵美は立ち上がり、ベットの下に置いてあった自分の
スークルバックを持ち、私の部屋を後にした。
~決意~
1人残された部屋でカチカチと時計の針が動く音だけが静かに響く。
妙な寂しさと悲しさと苛立ちで胸が締め付けられて苦しい。
ふと、机の上に置いてある鏡に自分の顔が写り
嫌気がさす。
恵美は、目がぱっちり二重で鼻も高く、笑った時に見える八重歯がとても可愛い女の子だ。
少し茶髪で髪の長さは胸まであり、緩く巻いてあるカールはさらに彼女の可愛さを引き立てている。
それに対して私は、生まれた時から一重で団子鼻、歯並びも悪くて、肩まである短めの髪の毛はあまり手入れ出来ていないので、一度も染めたことがないのに傷んでいる。
恵美と一緒に並んでいると時々、周りの人達からお前はどうせ、引き立て役だと言われる。
でも、その度に彼女は私なんかの為に、本気でそいつらのことを怒ってくれた。本気で私のことを心配してくれた。
''琴葉は私の大事な友達。可愛くて私が大好きな子。"
そう言ってくれた時は心の底から嬉しかった。
あぁ、どうして、私は女なんだろう。
ずっと、こんなに近くにいるのに。
誰よりも大切にしているのに。
こんなに愛してるのに。
あいつよりも私の方が幸せに出来るのに。
あいつはどうせ、恵美を傷つけるだけだよ?
尚先輩が女好きってこと知ってるでしょ?
何人もあいつに泣かされてきたんだから。
悔しい。憎い。
他の誰を傷つけてもどうでもいい。
でも、私の1番大切なものに汚い手で触れることは絶対に許さないから。
私はあることを心に決め、
その日が来るのをじっと我慢することにした。
~日曜日の憂鬱~
ザーザーと外から雨の音が聞こえる。
湿気が多く、ジメジメしていて憂鬱だ。
今の私の気持ちのように。
自分の部屋の窓から見える外の景色をぼんやりと眺めていると
ピーンポーン
と玄関チャイムの音が鳴る音がした。玄関に向かい、「はーい、どちら様ですか...??」
私がそう聞いてもドアの外からは何も反応がない。誰だろう?と思いつつ、私はドアスコープを覗く。
すると、そこには雨が降っているのに
傘もささずに下を向いて立っている恵美がいた。
急いで、ドアを開けると、恵美はそのまま
私に勢いよく抱きついてきた。
「...こ、琴葉...尚...尚先輩が...」
彼女は小刻みに震えていた。まるで、猛獣に狙われている子ウサギのように。
どれぐらいの間、外に居たのだろう?
身体はすっかり冷え切っている。
背中を優しくさすり、「何があったの...?」と聞くと、彼女は「尚先輩が...死んだって....」そう小さく呟くと我慢してきたものが溢れ出したのか子供みたいに大声で泣き出した。
可哀相に...。
あぁ、泣かないで。
もう、大丈夫だから。
あんなやつの為に涙を流さないで。
何も言わずに彼女をぎゅっと抱きしめ、頭を撫でながら私は不気味な笑いを浮かべていた。
~真相~
今日は恵美とあいつのデート当日。
私は、あいつに会いに行っていた。
会いに行くと行っても、もちろん約束はしていない。あいつが家を出た時からバレないように尾行していただけだ。
最寄りの駅の改札を通り、駅のホームで右手に携帯、両耳にイヤホンをつけて、おそらく音楽を聴きながら電車を待っていたあいつに徐々にそっと近づき、電車が来たタイミングで背中を押した。
落ちていく瞬間、咄嗟に振り向いたあいつは、ぎょっと目を見開いて驚いていた。一気に血の気が引いて恐怖に歪んだ顔は傑作だった。でも、君が悪いんだよ?人が大事に大事にしてきた宝物を壊そうとしてきたから。私は何も悪くない。私は自分のものを守っただけ。
電車が急ブレーキを踏む音、周囲から漏れる悲鳴、ざわめき、グチャッと身体がバラバラになる音、その雑音を聴きたくなくて私はすぐにその場を後にした。
私はずっと恵美が好きだった。
小学校の頃、学校ではいじめられて
家に帰ると今度は両親から虐待を受けて
どこにも自分の居場所がなかった。
苦しくて何度も死のうと考えた。
でも、そんな時、彼女が私に希望の光をくれたの。いじめから助けてくれて、友達になってくれて、つまんない毎日から辛い日々から私を救ってくれたから。
恵美は私にとってヒーローだから。
誰よりも愛しい人だから。
だから貴方が何度、道を間違えそうになっても、その度に私は貴方を助けて守ってあげる。
それが私の優しさだから...。
私だけがあなたを幸せにできるの。
それを気付いてもらうために...。
ねぇ、次は誰を消せばいい...?
END
~親友~
「私ね、好きな人が出来たんだ!!」
そう嬉しそうな顔で親友の恵美は
私の部屋のベッドに腰をかけながら言う。
ズキッとした心と表しようのない不快な感情に襲われつつ、一瞬で表情を作り、笑顔で「良かったね!どんな人なの??」と質問すると、
「尚先輩!!」と彼女は即答した。
相変わらずキラキラした目で話す恵美は
私のこの気持ちに気付くはずもなくそのまま
話を続けた。
「尚先輩、カッコいいし優しいし、頭も良いし
バトミントンも上手だし尊敬出来るところしか
ないもん!!」
恵美は、今年バトミントン部に入部して、1つ学年が上の尚先輩に優しく接して貰っているうちに
どうやら彼に惚れてしまったようだ。
文武両道で身長も185センチあり、顔もそこそこ良く、性格の明るさも兼ね備えているあの男は
女子たちの間で絶大な人気を誇っている。
でも、私は知っている。彼がどういう人間かを。
「尚先輩、モテるし、ライバル多そうじゃない...??」
私がそう言うと、恵美はむっとした顔をして反論する。
「それはそうだけど!!!でも、私今度、デートに誘われたもん!!」
''デート''その言葉に私は思考が一瞬停止する。
「ど、どこにデートに行くの??」
自分でも少し動揺しすぎたかな?と思ったが
尚先輩にデートに誘われて浮かれている恵美は
私の変化には全く気付かない。
「今度の日曜日、お昼ご飯を食べに行って、その後は尚先輩の家で、一緒に映画みるの!!」
初デートが家...??
密室で2人っきり...。
男と女である限り、何もないことはないだろう。
恵美だって、先輩の家にいくこと=そういうこと
だって期待しているはずだ。
「そっか。楽しんで来てね!」
心の中の黒い感情を上手く隠して、私は目の前にいる彼女にそう告げる。
「また、尚先輩とのデートが終わったら
琴葉に報告するから!
じゃぁ、また学校でね!」
言いたいことを言い終えて満足したのか恵美は立ち上がり、ベットの下に置いてあった自分の
スークルバックを持ち、私の部屋を後にした。
~決意~
1人残された部屋でカチカチと時計の針が動く音だけが静かに響く。
妙な寂しさと悲しさと苛立ちで胸が締め付けられて苦しい。
ふと、机の上に置いてある鏡に自分の顔が写り
嫌気がさす。
恵美は、目がぱっちり二重で鼻も高く、笑った時に見える八重歯がとても可愛い女の子だ。
少し茶髪で髪の長さは胸まであり、緩く巻いてあるカールはさらに彼女の可愛さを引き立てている。
それに対して私は、生まれた時から一重で団子鼻、歯並びも悪くて、肩まである短めの髪の毛はあまり手入れ出来ていないので、一度も染めたことがないのに傷んでいる。
恵美と一緒に並んでいると時々、周りの人達からお前はどうせ、引き立て役だと言われる。
でも、その度に彼女は私なんかの為に、本気でそいつらのことを怒ってくれた。本気で私のことを心配してくれた。
''琴葉は私の大事な友達。可愛くて私が大好きな子。"
そう言ってくれた時は心の底から嬉しかった。
あぁ、どうして、私は女なんだろう。
ずっと、こんなに近くにいるのに。
誰よりも大切にしているのに。
こんなに愛してるのに。
あいつよりも私の方が幸せに出来るのに。
あいつはどうせ、恵美を傷つけるだけだよ?
尚先輩が女好きってこと知ってるでしょ?
何人もあいつに泣かされてきたんだから。
悔しい。憎い。
他の誰を傷つけてもどうでもいい。
でも、私の1番大切なものに汚い手で触れることは絶対に許さないから。
私はあることを心に決め、
その日が来るのをじっと我慢することにした。
~日曜日の憂鬱~
ザーザーと外から雨の音が聞こえる。
湿気が多く、ジメジメしていて憂鬱だ。
今の私の気持ちのように。
自分の部屋の窓から見える外の景色をぼんやりと眺めていると
ピーンポーン
と玄関チャイムの音が鳴る音がした。玄関に向かい、「はーい、どちら様ですか...??」
私がそう聞いてもドアの外からは何も反応がない。誰だろう?と思いつつ、私はドアスコープを覗く。
すると、そこには雨が降っているのに
傘もささずに下を向いて立っている恵美がいた。
急いで、ドアを開けると、恵美はそのまま
私に勢いよく抱きついてきた。
「...こ、琴葉...尚...尚先輩が...」
彼女は小刻みに震えていた。まるで、猛獣に狙われている子ウサギのように。
どれぐらいの間、外に居たのだろう?
身体はすっかり冷え切っている。
背中を優しくさすり、「何があったの...?」と聞くと、彼女は「尚先輩が...死んだって....」そう小さく呟くと我慢してきたものが溢れ出したのか子供みたいに大声で泣き出した。
可哀相に...。
あぁ、泣かないで。
もう、大丈夫だから。
あんなやつの為に涙を流さないで。
何も言わずに彼女をぎゅっと抱きしめ、頭を撫でながら私は不気味な笑いを浮かべていた。
~真相~
今日は恵美とあいつのデート当日。
私は、あいつに会いに行っていた。
会いに行くと行っても、もちろん約束はしていない。あいつが家を出た時からバレないように尾行していただけだ。
最寄りの駅の改札を通り、駅のホームで右手に携帯、両耳にイヤホンをつけて、おそらく音楽を聴きながら電車を待っていたあいつに徐々にそっと近づき、電車が来たタイミングで背中を押した。
落ちていく瞬間、咄嗟に振り向いたあいつは、ぎょっと目を見開いて驚いていた。一気に血の気が引いて恐怖に歪んだ顔は傑作だった。でも、君が悪いんだよ?人が大事に大事にしてきた宝物を壊そうとしてきたから。私は何も悪くない。私は自分のものを守っただけ。
電車が急ブレーキを踏む音、周囲から漏れる悲鳴、ざわめき、グチャッと身体がバラバラになる音、その雑音を聴きたくなくて私はすぐにその場を後にした。
私はずっと恵美が好きだった。
小学校の頃、学校ではいじめられて
家に帰ると今度は両親から虐待を受けて
どこにも自分の居場所がなかった。
苦しくて何度も死のうと考えた。
でも、そんな時、彼女が私に希望の光をくれたの。いじめから助けてくれて、友達になってくれて、つまんない毎日から辛い日々から私を救ってくれたから。
恵美は私にとってヒーローだから。
誰よりも愛しい人だから。
だから貴方が何度、道を間違えそうになっても、その度に私は貴方を助けて守ってあげる。
それが私の優しさだから...。
私だけがあなたを幸せにできるの。
それを気付いてもらうために...。
ねぇ、次は誰を消せばいい...?
END
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