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10日常が戻ったはず?
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さて、皆様ご機嫌よう。
私こと「シルビア=サフィール」は、現在、王城にあるエリオット様の執務室で、彼女と仲良く書類と睨めっこをしています。
「ふぅ……流石に目にくるわね」
「量が量ですから、仕方ないですよ」
と言うのも、彼女が次期王位継承権を得た事で、私は次期王の配偶者となる事が決まり、今度、王城にて私のお披露目のための式典が開かれる事となった。
ようは「婚約式」である。
そのため、各国の要人が集められるに際し、その人物達の国と名前を覚える必要があったのだ。
まぁ、エリオット様は王族だけあり、各国の要人とは顔見知りも同然。覚える必要はほぼ無いと言ってよかった。
そんな中、問題は私だ。
幾ら宰相の息子とは言え、近隣国ならまだしも、諸外国の王族方なぞ会った事もなく、一から叩き込む必要があった。
と言う訳で、現在、私はエリオット様の指導の元、各国の要人が記載された書類と、かれこれ数時間睨めっこをしていた。
「シルビア、今日はこの辺で終わらせる?明日は学校だし。無理はさせられないわ」
「んー、そうですね。今日のぶんは終わりましたし、明日また下校したら城に上がります」
「そう?じゃあ、庭でお茶でもしましょ?」
それから私達は、城の庭園へと移動し、侍女によって用意されたテーブルへと着いた。
現在庭園では、王妃様が育てられている青い薔薇が見事に咲き誇っている。
「どうぞ」
私達の目の前に、侍女の手により丁寧にティーカップが置かれていく。
私は置かれた紅茶を手に取ると、ゆっくりとカップに口をつけ、体の力を抜いた。
「流石に長時間は疲れますね」
先程から、風に乗って運ばれてくる薔薇の香りが気持ちを落ち着かせてくれる。
はっきり言って、長時間集中していたせいで、体がコリ固まって辛い。
まぁ、大切な事だから弱音を吐くつもりはないけど…。
「ところで、シルビア。勉強の方は進んでいて?このままでは貴方の義理兄様に次期宰相候補をもっていかれてしまうわよ?」
「そうですね。ここ数年は学業の傍ら父上の側で勉強させて頂いていますが、やはり義理兄上は父上の補佐官だけあって優秀ですし……まぁ、頑張るしかないですね」
心配そうに私の表情をうかがうエリオット様に、笑顔で返す。
父上の補佐官で、一番上の姉の夫。
将来、宰相の地位を目指している私が今一番超えなくてはならない相手。
そんな兄は、将来宰相に着くかどうかはまだ考えていないそうだが、実力主義の父は、息子だからと、私を次期宰相候補に挙げてくれるほど優しくはない。
このまま何もしなかったら、きっと父は兄を推薦するはずだ。
「ですが、やれる事はやっておくつもりですよ?」
肩の力を抜くためのお茶なはずが、やはりと言うべきか、結局将来の話しなど、難しい話題になって行く。
思わず、そんな空気に対し乾いた笑いがでた。
<やれやれ………甘い空気には程遠いなぁ>
それに、自画自賛する訳ではないが、私は勉強が出来る方だ。
それなのに、まだまだ義理兄上には敵わない事に、気が滅入ってしまう。
全く…あの人どんだけだよ。
歳と実績を埋めるのって大分キツイなぁ。
まぁ、同じ土俵に上がるなら意地でも蹴落とすけどね。
幾ら身内だからって、容赦する気ないし……ふふふ。
そんな中。
「今、大丈夫かい?」
そう言いながら私達に近づいて来たのは、なんと「国王陛下」だった。
「あら?お久しぶりね」
ただ、陛下はお一人ではなく、一人の男性を連れ立っていた。
どうやら、エリオット様は彼と面識があるようだ。
と言う事は、他国の王族関係かな?
赤銅色の短めな髪に、赤い瞳。
一見、落ち着いた優しさを醸し出す風貌だが…。
これはこれは…。
私こと「シルビア=サフィール」は、現在、王城にあるエリオット様の執務室で、彼女と仲良く書類と睨めっこをしています。
「ふぅ……流石に目にくるわね」
「量が量ですから、仕方ないですよ」
と言うのも、彼女が次期王位継承権を得た事で、私は次期王の配偶者となる事が決まり、今度、王城にて私のお披露目のための式典が開かれる事となった。
ようは「婚約式」である。
そのため、各国の要人が集められるに際し、その人物達の国と名前を覚える必要があったのだ。
まぁ、エリオット様は王族だけあり、各国の要人とは顔見知りも同然。覚える必要はほぼ無いと言ってよかった。
そんな中、問題は私だ。
幾ら宰相の息子とは言え、近隣国ならまだしも、諸外国の王族方なぞ会った事もなく、一から叩き込む必要があった。
と言う訳で、現在、私はエリオット様の指導の元、各国の要人が記載された書類と、かれこれ数時間睨めっこをしていた。
「シルビア、今日はこの辺で終わらせる?明日は学校だし。無理はさせられないわ」
「んー、そうですね。今日のぶんは終わりましたし、明日また下校したら城に上がります」
「そう?じゃあ、庭でお茶でもしましょ?」
それから私達は、城の庭園へと移動し、侍女によって用意されたテーブルへと着いた。
現在庭園では、王妃様が育てられている青い薔薇が見事に咲き誇っている。
「どうぞ」
私達の目の前に、侍女の手により丁寧にティーカップが置かれていく。
私は置かれた紅茶を手に取ると、ゆっくりとカップに口をつけ、体の力を抜いた。
「流石に長時間は疲れますね」
先程から、風に乗って運ばれてくる薔薇の香りが気持ちを落ち着かせてくれる。
はっきり言って、長時間集中していたせいで、体がコリ固まって辛い。
まぁ、大切な事だから弱音を吐くつもりはないけど…。
「ところで、シルビア。勉強の方は進んでいて?このままでは貴方の義理兄様に次期宰相候補をもっていかれてしまうわよ?」
「そうですね。ここ数年は学業の傍ら父上の側で勉強させて頂いていますが、やはり義理兄上は父上の補佐官だけあって優秀ですし……まぁ、頑張るしかないですね」
心配そうに私の表情をうかがうエリオット様に、笑顔で返す。
父上の補佐官で、一番上の姉の夫。
将来、宰相の地位を目指している私が今一番超えなくてはならない相手。
そんな兄は、将来宰相に着くかどうかはまだ考えていないそうだが、実力主義の父は、息子だからと、私を次期宰相候補に挙げてくれるほど優しくはない。
このまま何もしなかったら、きっと父は兄を推薦するはずだ。
「ですが、やれる事はやっておくつもりですよ?」
肩の力を抜くためのお茶なはずが、やはりと言うべきか、結局将来の話しなど、難しい話題になって行く。
思わず、そんな空気に対し乾いた笑いがでた。
<やれやれ………甘い空気には程遠いなぁ>
それに、自画自賛する訳ではないが、私は勉強が出来る方だ。
それなのに、まだまだ義理兄上には敵わない事に、気が滅入ってしまう。
全く…あの人どんだけだよ。
歳と実績を埋めるのって大分キツイなぁ。
まぁ、同じ土俵に上がるなら意地でも蹴落とすけどね。
幾ら身内だからって、容赦する気ないし……ふふふ。
そんな中。
「今、大丈夫かい?」
そう言いながら私達に近づいて来たのは、なんと「国王陛下」だった。
「あら?お久しぶりね」
ただ、陛下はお一人ではなく、一人の男性を連れ立っていた。
どうやら、エリオット様は彼と面識があるようだ。
と言う事は、他国の王族関係かな?
赤銅色の短めな髪に、赤い瞳。
一見、落ち着いた優しさを醸し出す風貌だが…。
これはこれは…。
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