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7 時の魔女
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賑わう人々。
ある店では、元気な女将さんが大根を片手に客を引き、ある店では、怪しい店主が魔具を両手いっぱいに持ち売り込んでいる。
武具屋の前では…………何あれ、ムサイ筋肉ダルマの店主が商品の甲冑を纏いつつ筋肉アピールしてる。
本当、何て平和なのかしらぁ。
ご機嫌よう、皆様。
本日、私ことシフォンは元気に街を探索中です。
先日の殿下とのお茶は、本当に厄災だったとしか言いようがなく、家に帰るなり散々ミミリアに愚痴らせてもらった。
ミミリア自身も、あの状況に大激怒しており、抗議文をトール兄様宛てに書きまくっていたけど…………便箋五十枚近くって、どんだけよ。
逆に兄様が不憫に感じてくるわ。
そうそう、普通なら公爵家の子息、ましてや王弟の息子に侍女如きが抗議文など…と思うだろうけど、彼女にはそれがまかり通るのです。
まぁ、簡単に言うと、ミミリアの母親が王弟殿下であるキュロス公爵と乳兄姉だったという事です。しかも、ミミリア自身もトール兄様と乳兄妹です。
そして、彼女の生家も王家に近い一族という事もあり、昔から兄様とはほぼ対等な関係を築いています。
「でもさぁ、ミミリア?あの量はどうよ?兄様あれ読み終わった瞬間引き篭もるんじゃないの?」
片手に珈琲の入った容器を持ちながら、もう片方の手には先程購入したクレープ。
どう見ても公爵令嬢とはかけ離れた姿の私と、私の少し後ろを歩く、両手に購入物の紙袋を持ったミミリア。
「…………はぁ」
その瞬間、盛大な溜息を吐きながらミミリアは私にジト目を向けてきた。
「シフォン様、甘いです!あの程度で引き篭もるものですか!あのトール様がそんな繊細な神経をお持ちだと思いますか?」
何と言うか…………。
ミミリアのトール兄様に対する態度は、相変わらずキッツイわね。
「まぁ、兄様も一応私を助けてくれようとしたみたいだし…………ね?」
「全く!シフォン様はお優しすぎです!大体、側近の仕事と言うのは主人の「教育」も兼ねておりますのに!」
うん?「教育」って…………ミミリアさん。
と、そんな愚痴と言うか、雑談をしつつ、私達は今日の最終目的地に到着した。
街の本通りを一つ奥に入った路地裏の一角。
「ファズール魔法堂」と書かれた看板がぶら下がる小さな魔具屋。
普通に考えて公爵令嬢が来る様な店ではないが、私とミミリアはもう何年もここに通っている。
「こんにちは~」
気の抜けた挨拶と共に入口の扉を開くと、魔具屋独特の薬の香りが漂ってきた。
店内は小ぢんまりしており、小さなカウンターに、薬品や魔具の置かれた陳列棚があるだけ。
これといって飾り気のない店だが、その実態は全く違う事を私達は知っている。
「あらん?今日だったかしら?シフちゃんとミミーちゃんが来る日」
店に入ると、奥から私以上に気の抜けた声が聞こえてきた。
そして、気怠げに、カウンター越しにその声の主である女性が現れた。
「ガレット師匠こんにちは」
「ご無沙汰しております、ガレット師匠」
「うふふ、ご機嫌様、二人とも」
うーん、相変わらずのボンキュボンね。
目の前の女性の名は「ガレット・ファズール」さん。本名かどうかは不明だけど、彼女からそう教えてもらったので、ずっとその名で呼んでいる。
見た目はと言うと、はっきり言って、夜のお姉さんだ。
金の長い巻髪に、オレンジ色の妖艶な垂れ目。そして女の私でさえ誘われそうな色っぽい唇。
深くスリットが入った、今にも胸元がはだけそうな紺色のドレスを纏い、スタイルも抜群で…………。
…………本当に羨ましい。
で、何故私が彼女の事を師匠と呼んでいるかと言うと。
「で?この間出した魔法陣の宿題は解けたのかしらん?」
「まぁ、一応頑張りましたので、答え合わせお願いします」
簡単に言うと、ガレット師匠は私達の魔法の先生なのだ。
私達が幼少期、たまたま街で悪いお兄さんに絡まれ、助けてくれたのが彼女。
あの日は無断で屋敷を抜け出しており、護衛もなく、微々たる魔法しか使えなかった私達は大ピンチだった。
そこに颯爽?と現れた酔っ払い…………ではなく、ガレット師匠が酔いに任せて、そのお兄さん方をボコボコにしてくれたのが始まり。
そして、あの後ほろ酔いながらも、師匠は私達を店まで連れて行ってくれ、すり傷等の治癒をしてくれた。
それから、師匠はすっかり酔いもさめ、その足で屋敷まで送り届けてくれたのだ。
いや、あの時は本当にビビったわよ。
お兄さんに絡まれたのもだけど、師匠の容赦無いフルボッコにはこっちが震え上がったわぁ。
そんな事もあり、屋敷に戻った私達は、その後両親達から大目玉をくらった。
そして、後日両親を伴いお礼のご挨拶に来たのだが「気まぐれに助けただけ」と言う、なんとも男前なセリフを言われ、私達は揃って彼女に惚れてしまったのだった。
それから私達は、どうにかこうにか頼み込んで、師匠の弟子にしてもらう事ができた。
そして、後に判明した事だが、師匠はこの世界にいる「七人の魔女」の一人だった。
この世界には魔女と呼ばれる超越者が七人いる。
四元素の魔女と言われる、「地の魔女」、「水の魔女」、「火の魔女」、「風の魔女」。
そして、空間の魔女と言われる「光と闇の魔女(この魔女は双子と言われている)」、「時の魔女」。
この七人の魔女達は、遥か昔より存在しており、気まぐれに人々に手を貸してきた。
特に、四元素の魔女は主要国の相談役を務めており、その存在は多くの人々に知られている。
だが、それと反対に、最も力のある魔女と言われる「光と闇の魔女」と「時の魔女」は、その存在が幻と言ってもよかった。
顔がわれている四元素の魔女達とは違い、一切表舞台に姿を表さない存在。
のはずだったのだが、人間嫌いと言う訳ではなかったらしい。
現に、「時の魔女」である師匠は、私達に隠す事なくその正体を教えてくれた。
自分が気に入った相手になら、別に隠す事もしないらしい。
師匠の話では、我が国の王様は彼女とお茶友らしいし。
因みに、師匠がこんな場所で魔具屋をしている理由だが、単なる趣味らしい。
まぁ、その正体を知った私達の当時の反応はと言うと…………うん、察してください。
もぉ、超絶ビックリしたわよね!本当に。
因みに余談だが、今学園で魔法学の成績が上位なのも、一概に師匠のおかげと言うわけだ。
本当、師匠には感謝感謝である。
と、話は戻ります。
今回、師匠から出されていたのは「空間固定」の魔法陣の構築。
出題された幾つかの術式を組み合わせ、一つの魔法陣を作成しなさいと言う課題だった。
この魔法陣を上手く機能させる事が出来ると、異空間を固定する事が可能になる。
代表的な物と言えば、マジックバッグだろうか。
バッグ自体に異空間の固定を行い、膨大な量の物質を収納出来るアレ。
師匠は、私達から魔法陣の描かれた用紙を受け取ると、サッと目を通しながら「ふぅ」っと、色気たっぷりな溜息を吐いた。
そして、挑発をする様にゆっくりと手招きをする。
「二人とも、紙の上では正解。でも実際に術を使えないと意味はないわ。裏で見てあげるからいらっしゃいな?」
ふふっと、妖艶な笑みと共に店の奥へと連れて行かれる。
カウンターの奥にある扉を開け、続く廊下を真っ直ぐに突き当たった部屋に入る私達。
部屋の中は、中庭と隣接しており、この中庭で私達はいつも魔法を習っている。
「さて、どちらからでも良いわよ?いつもみたいに、暴走しても結界があるから問題ないわん」
うーん、いちいち色気が多い師匠だ。
私が男だったらほっとかないわね。
「では、僭越ながら私が」
そう言って、一歩前に出るミミリア。
そして、そのまま一気に魔法陣を描ききった。
「いかがでしょうか?」
芝生の地面に、青白く光る魔法陣が完成した。
相変わらず、ミミリアはこういった細かい作業を要する魔法が得意である。
一応、私もオールマイティに魔法は使えるが、繊細な魔法は少々苦手だ。
こんなんだから、「アイツ」に脳筋とか言われるんだろうけど。
創り上げた魔法陣に対し、目を細めながら確認した師匠は、ニッコリと笑みを作り納得した様に頷いた。
その様子にミミリアが安堵の表情になる。
さて、では次は私か……………。
「よろしいわ。では、次はシフちゃんね?」
「はい。宜しくお願いします!」
私は、集中すると、魔力を練りながら魔法陣の形成を開始した。
ある店では、元気な女将さんが大根を片手に客を引き、ある店では、怪しい店主が魔具を両手いっぱいに持ち売り込んでいる。
武具屋の前では…………何あれ、ムサイ筋肉ダルマの店主が商品の甲冑を纏いつつ筋肉アピールしてる。
本当、何て平和なのかしらぁ。
ご機嫌よう、皆様。
本日、私ことシフォンは元気に街を探索中です。
先日の殿下とのお茶は、本当に厄災だったとしか言いようがなく、家に帰るなり散々ミミリアに愚痴らせてもらった。
ミミリア自身も、あの状況に大激怒しており、抗議文をトール兄様宛てに書きまくっていたけど…………便箋五十枚近くって、どんだけよ。
逆に兄様が不憫に感じてくるわ。
そうそう、普通なら公爵家の子息、ましてや王弟の息子に侍女如きが抗議文など…と思うだろうけど、彼女にはそれがまかり通るのです。
まぁ、簡単に言うと、ミミリアの母親が王弟殿下であるキュロス公爵と乳兄姉だったという事です。しかも、ミミリア自身もトール兄様と乳兄妹です。
そして、彼女の生家も王家に近い一族という事もあり、昔から兄様とはほぼ対等な関係を築いています。
「でもさぁ、ミミリア?あの量はどうよ?兄様あれ読み終わった瞬間引き篭もるんじゃないの?」
片手に珈琲の入った容器を持ちながら、もう片方の手には先程購入したクレープ。
どう見ても公爵令嬢とはかけ離れた姿の私と、私の少し後ろを歩く、両手に購入物の紙袋を持ったミミリア。
「…………はぁ」
その瞬間、盛大な溜息を吐きながらミミリアは私にジト目を向けてきた。
「シフォン様、甘いです!あの程度で引き篭もるものですか!あのトール様がそんな繊細な神経をお持ちだと思いますか?」
何と言うか…………。
ミミリアのトール兄様に対する態度は、相変わらずキッツイわね。
「まぁ、兄様も一応私を助けてくれようとしたみたいだし…………ね?」
「全く!シフォン様はお優しすぎです!大体、側近の仕事と言うのは主人の「教育」も兼ねておりますのに!」
うん?「教育」って…………ミミリアさん。
と、そんな愚痴と言うか、雑談をしつつ、私達は今日の最終目的地に到着した。
街の本通りを一つ奥に入った路地裏の一角。
「ファズール魔法堂」と書かれた看板がぶら下がる小さな魔具屋。
普通に考えて公爵令嬢が来る様な店ではないが、私とミミリアはもう何年もここに通っている。
「こんにちは~」
気の抜けた挨拶と共に入口の扉を開くと、魔具屋独特の薬の香りが漂ってきた。
店内は小ぢんまりしており、小さなカウンターに、薬品や魔具の置かれた陳列棚があるだけ。
これといって飾り気のない店だが、その実態は全く違う事を私達は知っている。
「あらん?今日だったかしら?シフちゃんとミミーちゃんが来る日」
店に入ると、奥から私以上に気の抜けた声が聞こえてきた。
そして、気怠げに、カウンター越しにその声の主である女性が現れた。
「ガレット師匠こんにちは」
「ご無沙汰しております、ガレット師匠」
「うふふ、ご機嫌様、二人とも」
うーん、相変わらずのボンキュボンね。
目の前の女性の名は「ガレット・ファズール」さん。本名かどうかは不明だけど、彼女からそう教えてもらったので、ずっとその名で呼んでいる。
見た目はと言うと、はっきり言って、夜のお姉さんだ。
金の長い巻髪に、オレンジ色の妖艶な垂れ目。そして女の私でさえ誘われそうな色っぽい唇。
深くスリットが入った、今にも胸元がはだけそうな紺色のドレスを纏い、スタイルも抜群で…………。
…………本当に羨ましい。
で、何故私が彼女の事を師匠と呼んでいるかと言うと。
「で?この間出した魔法陣の宿題は解けたのかしらん?」
「まぁ、一応頑張りましたので、答え合わせお願いします」
簡単に言うと、ガレット師匠は私達の魔法の先生なのだ。
私達が幼少期、たまたま街で悪いお兄さんに絡まれ、助けてくれたのが彼女。
あの日は無断で屋敷を抜け出しており、護衛もなく、微々たる魔法しか使えなかった私達は大ピンチだった。
そこに颯爽?と現れた酔っ払い…………ではなく、ガレット師匠が酔いに任せて、そのお兄さん方をボコボコにしてくれたのが始まり。
そして、あの後ほろ酔いながらも、師匠は私達を店まで連れて行ってくれ、すり傷等の治癒をしてくれた。
それから、師匠はすっかり酔いもさめ、その足で屋敷まで送り届けてくれたのだ。
いや、あの時は本当にビビったわよ。
お兄さんに絡まれたのもだけど、師匠の容赦無いフルボッコにはこっちが震え上がったわぁ。
そんな事もあり、屋敷に戻った私達は、その後両親達から大目玉をくらった。
そして、後日両親を伴いお礼のご挨拶に来たのだが「気まぐれに助けただけ」と言う、なんとも男前なセリフを言われ、私達は揃って彼女に惚れてしまったのだった。
それから私達は、どうにかこうにか頼み込んで、師匠の弟子にしてもらう事ができた。
そして、後に判明した事だが、師匠はこの世界にいる「七人の魔女」の一人だった。
この世界には魔女と呼ばれる超越者が七人いる。
四元素の魔女と言われる、「地の魔女」、「水の魔女」、「火の魔女」、「風の魔女」。
そして、空間の魔女と言われる「光と闇の魔女(この魔女は双子と言われている)」、「時の魔女」。
この七人の魔女達は、遥か昔より存在しており、気まぐれに人々に手を貸してきた。
特に、四元素の魔女は主要国の相談役を務めており、その存在は多くの人々に知られている。
だが、それと反対に、最も力のある魔女と言われる「光と闇の魔女」と「時の魔女」は、その存在が幻と言ってもよかった。
顔がわれている四元素の魔女達とは違い、一切表舞台に姿を表さない存在。
のはずだったのだが、人間嫌いと言う訳ではなかったらしい。
現に、「時の魔女」である師匠は、私達に隠す事なくその正体を教えてくれた。
自分が気に入った相手になら、別に隠す事もしないらしい。
師匠の話では、我が国の王様は彼女とお茶友らしいし。
因みに、師匠がこんな場所で魔具屋をしている理由だが、単なる趣味らしい。
まぁ、その正体を知った私達の当時の反応はと言うと…………うん、察してください。
もぉ、超絶ビックリしたわよね!本当に。
因みに余談だが、今学園で魔法学の成績が上位なのも、一概に師匠のおかげと言うわけだ。
本当、師匠には感謝感謝である。
と、話は戻ります。
今回、師匠から出されていたのは「空間固定」の魔法陣の構築。
出題された幾つかの術式を組み合わせ、一つの魔法陣を作成しなさいと言う課題だった。
この魔法陣を上手く機能させる事が出来ると、異空間を固定する事が可能になる。
代表的な物と言えば、マジックバッグだろうか。
バッグ自体に異空間の固定を行い、膨大な量の物質を収納出来るアレ。
師匠は、私達から魔法陣の描かれた用紙を受け取ると、サッと目を通しながら「ふぅ」っと、色気たっぷりな溜息を吐いた。
そして、挑発をする様にゆっくりと手招きをする。
「二人とも、紙の上では正解。でも実際に術を使えないと意味はないわ。裏で見てあげるからいらっしゃいな?」
ふふっと、妖艶な笑みと共に店の奥へと連れて行かれる。
カウンターの奥にある扉を開け、続く廊下を真っ直ぐに突き当たった部屋に入る私達。
部屋の中は、中庭と隣接しており、この中庭で私達はいつも魔法を習っている。
「さて、どちらからでも良いわよ?いつもみたいに、暴走しても結界があるから問題ないわん」
うーん、いちいち色気が多い師匠だ。
私が男だったらほっとかないわね。
「では、僭越ながら私が」
そう言って、一歩前に出るミミリア。
そして、そのまま一気に魔法陣を描ききった。
「いかがでしょうか?」
芝生の地面に、青白く光る魔法陣が完成した。
相変わらず、ミミリアはこういった細かい作業を要する魔法が得意である。
一応、私もオールマイティに魔法は使えるが、繊細な魔法は少々苦手だ。
こんなんだから、「アイツ」に脳筋とか言われるんだろうけど。
創り上げた魔法陣に対し、目を細めながら確認した師匠は、ニッコリと笑みを作り納得した様に頷いた。
その様子にミミリアが安堵の表情になる。
さて、では次は私か……………。
「よろしいわ。では、次はシフちゃんね?」
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