戦場10のお題

灰雲

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1.鉄の感触

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…重い。

これが初めて持った銃の感想だった。
果たして何が重かったのか、
銃自体か、殺す覚悟か、それとも…

殺される覚悟か…。


夜中の奇襲、気づいた時には敵に懐の深くまで潜り込まれていた。
陣の周りに居た見張りを音もなく消し、潜り込んできた敵に遭遇したのは
何の因果か1年目の新兵、しかも一度も戦場に出たことの無い、本当の新人ルーキー

「死にたくなきゃ撃てっ!!」

銃声の中、上官から聞いた敵の情報はゲリラ、
それもこの数ヶ月でいくつも拠点を潰してきた玄人ベテラン

「来るな…来るなぁっ!!」

仲間が物言わぬモノになっていく中、
恐慌状態になりながら撃つも
銃の射線が安定するはずはなく、至近弾がせいぜい。

ドガッ…

「っ!?」

恐怖で動かない体に鞭打って、
やっと銃口を向けたところで蹴り飛ばされ、銃も手の中から彼方へ。

「なんだ、新米か。」

「っ…!!」

明瞭な視界に映ったのは仲間の血を吸った凶器。
それが自分に振り降ろされる動きを見ながら、
動かない体は生きることを諦めたようで。

「お休みだ、来世は長生きしろよ。」

ブシュッ…

暗転する視界の中、最期に感じたのは身体を切り裂く…


―鉄の感触―


――あとがきという名の言い訳――

初陣と最期の戦場、ベテランゲリラにこの基地は殲滅されました。
軍事用語ではなく、文字通りの全滅です。

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