見習い薬師は臆病者を抱いて眠る

XCX

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40.新婚なのにまさかのセックスレス 後編

片付けを終えたティオは、小川へと向かい、軽く体を清めた。同時に香油を尻穴に塗りつけ、中を解す。洞窟に戻ってそれほど経たないうちに、ザクセンが戻ってきた。彼の姿を目にした途端、ティオは駆け寄り飛びついた。

「ザクセンさん、おかえり」
「ああ、ただいま。タータだが、イェゼロが明日の朝まで預かってくれるそうだ」
「そっか。…タータには申し訳ないことをしちゃったな…」
「そうだな。明日は思いきり甘やかしてやろう」
「うん。タータの好きなものを作って、いっぱいわがままを聞いてあげよう」
「それと、イェゼロから煎じ薬を持たされた。必要になるだろうから、と…」

 イェゼロにはお見通しだとわかり、抱き合いながら二人は苦笑いを浮かべた。どちらからともなく、唇を重ねる。

「…んぅ、ふ…」

 舌が触れただけで、気持ち良さのあまり腰に電流のようなものが走る。力の入らない腰を、体に巻きついた逞しい腕が支える。

「ティオ、一人でしていたのか?香油の匂いがする…」

 ザクセンは肌の匂いを嗅ぐと同時に、ティオの首筋に唇を這わせた。

「ぅんっ…、自分で、…中、準備して…んぃ…っ!?」
「ティオ…それは俺がしたいといつも言っているだろう」

 ちりりとした痛みが首筋に走り、ティオは肩を竦めた。どうやら強く肌を吸われたらしい。青年は、魔獣の不機嫌そうな顔に苦笑した。
 ザクセンはティオが一人で、後ろに受け入れる準備をするのが気に食わないと常々口にする。体への負担が大きいのはティオだし、交尾は二人でするのだから、というのが彼の言い分だ。

「ごめん。でも、早く中に欲しくて…」
「せっかく時間があるんだ。俺はもう少しじっくり、お前の体を触りたいんだが…」
「それは、一回シてからにしよ、ね…?俺、もう我慢できない…っ。自分で触ってたから、中、疼いて苦しいんだ…っ」

 下半身を擦りつけて、唇を啄めば、ザクセンの瞳に情欲の炎がともる。ふわりと体が浮き上がったかと思えば、地面に敷いた獣の毛皮の上に押し倒された。激しい口づけを受けながら、性急な手つきで服を脱がされる。

「ティオ、入れるぞ」

 こくこくと小さく何度も頷く。後孔に熱い塊があてがわれるのが分かって、期待に心臓が弾む。先端が中の襞をかき分けて、ゆっくりと侵入してくる。背筋をぞわりと何かが駆け上ってきて、ティオは大きく体を震わせた。口から勝手に声が漏れる。

「もう達したのか…?」

 驚いた様子で目を丸くするザクセンに、ティオは首を傾げる。腹部に手を伸ばせば、確かに精液が散っていた。体を重ねる度に、淫乱になっていく自分の体にさすがに羞恥を感じる。赤くなっているであろう顔を手で隠すと、いぶかしむザクセンによってはずされそうになる。

「顔を隠してどうしたんだ?」
「だ、だって…俺の体、どんどんはしたなくなってる…入れられただけで、イっちゃうなんて…!」
「嫌なのか?俺は嬉しいんだが」

 真剣な顔で答えるザクセンの瞳は、欲望でぎらついていた。ティオは、嫌じゃないと頭を振る。彼が自分の痴態で興奮してくれるのであれば、嫌だとは全く思わなくなり、羞恥などどこかに吹き飛んでしまう。

「ふ、…うぅ…、ンっ」

 我慢しきれなくなったとばかりに、ザクセンが律動を開始する。ずっと待ち望んでいた刺激に、はしたない声がひっきりなしに口から出た。腰を両手で掴まれ、硬い肉棒で最奥を何度も力強く貫かれて、ティオは喘ぐことしかできない。

「っぁ…は、…んく、ふ、あ…っ」

 ティオの意思とは関係なしに、後孔を満たす肉棒に襞が絡みつく。もっともっととねだるように、強く締めつける。ザクセンのことが好きだという感情が全身に溢れてしまう。
 気持ちいい。頭の中は、その気持ちでいっぱいだった。脳がとろけてしまうのではないか、という錯覚にまで陥る。

「ザクセン、さん…っ、イく…っ!」
「ッは…ティオ…!」

 中を激しくかき回され、ティオは早くも二度目の絶頂を迎えた。青年の奥底に精液を種付けたザクセンが、荒く呼吸をしながら脱力して覆いかぶさってくる。
 ようやく最後まで体を重ねることができて、充足感に包まれる。だが、まだ足りない。それはザクセンも同じようだった。己に真っ直ぐ向けられている翡翠の瞳が、爛々と輝いている。美しい瞳だと、うっとりと見つめてしまう。
 ティオは伴侶の名前を呼んだ。ザクセンは微笑んで返事をした。青年の頭を撫で、額に口づけを降らせる。

「…俺、魔獣姿のザクセンさんも、ここに受け入れたい…」

 ティオの発言に、大狐は大きく目を見開いた。

「何を言う…無理だ」
「全部は入らないかもだけど、…先端だけなら、いけるんじゃないかって、俺…」
「駄目だ。獣形態での性器をぶちこめば、お前の体は真っ二つに裂けるぞ」

 ザクセンは脅してみるも、ティオは全く意に介さないようだった。

「でも、狐姿がザクセンさんの本当の姿だろ…?お願い、ちょっと試すだけ、ね?」

 潤んだ瞳の青年に懇願されて、ザクセンは渋々魔獣へと変化した。人型の時よりも大きな体躯に見合ったイチモツに、ティオは小さく息を呑んだ。ティオの腕よりも少し細いくらいで、長く太い。こんな凶器を尻穴に突っこめば、骨盤どころか内臓もただでは済まないだろう。

「そ、そんなに大きいの…」
「だから言っただろう。無理だ」
「…うー…」

 至極残念そうな面持ちのティオに、まさか本気で受け入れるつもりだったのか、と大狐の方が面食らってしまう。しかも声色を聞くに、完全に諦めたわけではなさそうなのが分かる。見た目に反して性に積極的な青年が、ぶっ飛んだ行動に出るのはないかと不安に見舞われたザクセンは、先手を打つことにした。
 前脚を使い、ティオの体を仰向けからうつ伏せに転がす。なに?、と肩越しに振り返る彼の腿に、ザクセンは男根を擦りつけた。

「挿入は無理だが、…腿の間に挟んでもらえれば、この姿の俺でも十分に気持ち良くなれるだろう」
「そっか…!」

 その手があるか、と途端に表情を輝かせたティオは、大狐に向かって腰を突き出した。足の間に差しこまれた立派なイチモツに指を添え、腿で挟む。反り立ったそれが、ぐっと下腹部を押し上げてくる。臀部にザクセンの柔らかい毛があたって、少しくすぐったい。

「動くぞ」

 了承すると同時に、ずん、と突き上げられる。重い衝撃に体を起こしていられなくなり、ティオの上半身は地面に突っ伏した。質量の大きい熱の塊が腿の間を行き来し、ティオの陰茎をごりごりと擦り上げる。

「…ひ、ぁ…ッ!?」

 人型の状態で性器を合わせて扱くのとは全く違う、味わったことのない感覚に、ティオはたまらず喘いだ。強烈な快感に、目の前がちかちかする。まるでよだれのように先走りがあふれて、それを潤滑油に触れ合う部分が卑猥な音を立てた。

「あ、あぁっ、…!」

 滑りが良くなり、ザクセンの動きも早くなる。ティオの目からは生理的な涙が流れていた。激しく揺さぶられて、たまらず大狐の前脚に縋る。頭上からは、獣の荒い息遣いが聞こえてくる。

「…ア、もぉ…っ、だめ、ぇ…っ!」

 ティオが射精したのと同時に、ザクセンも吐精した。人型の時よりも量の多い、白濁した体液が青年の下半身を汚す。腿を精液が伝い落ちる感覚に、ティオは小さく体を震わせた。
 乱れる呼吸を整えていると、大狐の舌が頬を這う。それから唇を舐められ、ティオは口づけに応えた。初めての体験に頭の中が、快楽で痺れている。これはこれで悪くないが、やっぱり挿入を伴った性行為の方が好きだな、とティオは思った。

「ティオ…、俺はやはりお前の中に入って果てたい」
「うん。…来て」

 甘えるように頬を擦りつけてくるザクセンの吐息は、熱を孕んでいた。同じタイミングで同じことを考えていたのが嬉しくて、ティオは微笑んだ。伴侶の承諾を得たザクセンは人型に変わり、未だ萎えることを知らない欲望の塊を青年の中へと押しこんだ。
 それから二人は、まるで発情期の獣のように、時を忘れて肌を重ねた。空腹を満たすために果実をつまむ時さえ、口移しで食べさせ合った。二人の性欲が治まったのは、夜になってからだった。体液や汗でぐちゃぐちゃな体を清めるために小川に向かったのに、また盛ってしまったのが最後だった。洞窟に戻る頃には、ティオは悲惨な状態だった。腰砕けで身動きが取れず、声は完全に涸れていた。

「ティオ、すまない。調子に乗りすぎた」

 ザクセンの腕に抱かれ、不味い煎じ薬を飲み干したティオは苦い顔をしながらも頭を振って否定した。じとりと彼を睨みつける。

「ザクセンさん、交尾した後に謝るの禁止。俺だってしたくて受け入れてる、って何度も言ってるだろ。本当に無理だったら、嫌だってちゃんと言ってる」
「わかった」

 青年のかすれた声に、大狐は苦笑する。

「…でも、さすがに今後も月に一日くらいしか交尾ができないとなると、体が辛いかも」
「そうだな。週に一日、いやせめて二週に一日は二人の時間が欲しいところだ。イェゼロにタータを預かってもらえないか、相談してみよう」
「なんだか、タータに申し訳ないな…」
「タータがもう少し大きくなれば、俺たちが洞窟を抜け出しても、何とも思わなくなるだろうがな」
「…それはそれで複雑だなあ」

 眉間にシワを寄せたティオは、唸りながらザクセンの肩に頭を乗せた。息子にそれとなく察せられて、性生活に気を遣われるのを想像し、なんとも言えない気持ちになっていた。

 *

「ただいまあっ」

 翌朝、父親に連れられて帰宅したタータの元気な声が洞窟内に大きく響いた。ティオはしゃがみこみ、笑顔で子狸を出迎えた。たった一晩いなかっただけなのに、タータが戻ってくると急に洞窟内が活気に満ちあふれる気がする。

「おかえり、タータ」
「もう仲直りした?また仲良しになった?」
「うん、したよー。心配かけてごめんね」
「ううん。オイラもね、久しぶりにじいじのところ泊まって楽しかった!ソルダートともいっぱい遊んで、夜はじいじに絵本読んでもらったんだ!」

 鼻息荒く興奮した様子で昨日の出来事を話すタータは、親の贔屓目なしに見ても、可愛らしく愛おしい。

「…あれ?ティオ、首のところどうしたの?赤くなってる」
「え、どこ?」
「んとね、ここ!」

 小さな手が触れたのは、昨晩ザクセンに強く吸われたところだった。予期せずキスマークになっているらしく、ティオは恥ずかしさのあまりうろたえた。ザクセンに視線をやるも、どうかしたかと言わんばかりに悠然と体を地面に横たえている。

「虫さされ?」
「あっ、う、うん、そう!虫さされ!」
「じゃあ、虫さされにきく薬作ろ!オイラも手伝う!」

 無邪気な笑顔にノーと言えず、促されるままティオはタータと共に虫さされ用の塗り薬を調合した。だが、その薬にキスマークを薄くする効果などあるはずもない。
 数日経っても、首には赤い印が残っていた。ティオは、「虫さされ治らないねえ」と無垢な瞳で首を傾げるタータへの返答に困る羽目になった。
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