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農場見学-2
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このビルの中には、農場はもちろん研究・開発や経理・総務などの一般的に会社と呼ばれる組織に必要な部門すべてが入っている。まずは三十階にある物流を見せてもらうことになった。
「物流が三十階ですか?」
「うん、物流が三十階」
味来はうれしそうに、いやドヤ顔で言った。物流は一階と三十階にある。三十階にはドローンが配備されており、少量の場合はすべてドローンによる配達が行われている。まだドローンの高度や飛行する時間帯、飛行範囲など規制が厳しく、一度に飛ばせる数も決められているという。
それでも農はとても効率的で進んでいるなと感じた。味来からの説明を受けながら、三十階に到着してまた驚いた。
「なんじゃこりゃ」
「だから、物流」
味来はまたうれしそうにドヤ顔で言った。
「やぎくんはいいリアクションをするね」
「これを初めて見たら誰だって驚きますよ」
両サイドにドローンの発着場があり、風向きによって離着陸する方向を変えているのだという。ドローンの発着場の後方に両サイドそれぞれコンベヤが設置されていた。
発送される荷物が運ばれてドローンが掴み、発着口が開いてドローンが離陸する。多数小型ヘリポートがある飛行場という表現が当てはまるのかもしれない。コンベヤが稼働する機械音とドローンのプロペラ音が混在している。
確かに物流だ。ただし、ほとんど人がいない。
次に農場を見せてもらうことになった。
「今度は下の階層から順番に上がっていこう」
まるでダンジョンに向かう冒険者のような言い方だ。農場に到着してまたまた驚いた。
「なんじゃこりゃ」
「だから、農場」
味来はまたまたうれしそうにドヤ顔で言った。このやりとりは流石に飽きてきた。三メートルほどの高さがある空間に棚のようなものがいくつも並んでいた。その棚に植物が植えられていて、それが段になっていた。
その段は床と天井の奥へと連なっており、下と上の階に続いていた。屋内で平面の十分な栽培面積を確保するのは難しいため高さで栽培面積を補っているのだという。
その棚と棚の間にはコンベヤが設置されていて、収穫した野菜を搬送する仕組みのようだ。ここは農場というより『工場』という言葉が適正に思えた。これだけ広いのに作業をしている人数が少ない。
「収穫は人力だけど、それ他は人が直接作業することはあまりないからね。農場といっても品質管理や機械などのメンテナンスが主な業務だよ。『農場工場』略して『農場』」
味来の説明に農はただただ感心するのだった。ただ、略して『農場』はセンスを疑わざるを得ない。
大小様々な透明の丸いジェルのようなものが敷き詰められている容器の中で根が伸びているのが見えた。棚の容器の中を見ると各スペースの高さが一メートルほどしかなく、根が短くて太い。根が土ではなく透明の丸いジェルに埋まっているため根の状態が目視することができる。
根菜は葉野菜などと比較して高さが必要のため、別のフロアで栽培しているそうだ。
「ところで、区切られたスペースで植物が育てられていることはわかりましたが、散水するホースなどが見当たりませんが・・・・・・」
農は限られた情報の中で気づいた質問をしてみた。
「散水?しないよ」
大小様々な透明の丸いジェルが水分や栄養分なのだそうだ。よく見ると小さいジェルは薄く色が着いているようだ。透明なジェルが水分で薄く色がついている小さめのジェルが栄養分ということだった。
「そういえば、今朝同じようなものを見たような気がするけど・・・・・・」
農の疑問にはすぐに答えが返ってきた。
「そうだよ、同じものだよ」
大きく分けて『成長した野菜を収穫して出荷するブース』と『根がついた状態で出荷するブース』があるという。根がついた状態のものは本当の採れたてを食べられるということでかなり需要があり、高値で売れるらしい。
「いいものは高くても売れるんだよ」
味来はドヤ顔で言った。農は『成功者の言うことには説得力があるな』と思うしかなかった。
「ここから先は専門家に聞くとしよう」
味来はそう言って研究・開発部門へと向かった。二十階から二十五階が研究・開発部門のエリアだった。まずは、そして、研究・開発部長の『綾目 雪』を紹介された。
「はじめまして、ほし・・・・・・」
「彼は洞爺くんのとこで働いている『やぎくん』」
農と雪の自己紹介は味来によって中途半端に終了した。
「よろしくね、やぎくん」
またしてもきちんと名乗れず自己紹介は終わってしまった。
「あれ?もしかして、昨日噴水の縁に座ってなかった?」
雪の突然の問いかけに『なぜ、綾目さんがそんなことを知っているのだろう』と農は記憶を遡った。数秒後に恥ずかしくなってきて、赤面しているのが自分でもわかった。
「き、昨日は失礼しました。いろいろなことが起こって動揺していて・・・・・・」
「あんな格好であんなところにいたから心配になって声掛けちゃった」
昨日この時代に来て、噴水の縁に座っていた農に最初に声を掛けた女性が綾目雪だった。
「やぎくんと雪ちゃん知り合いだったの?」
農は味来に昨日の恥ずかしい出来事を話した。その後、味来は雪に『後はよろしくね』と言って、別のところへ行ってしまった。
さっそく、農は雪から研究・開発部門の役割を説明を受けた。
研究部門は、品種改良がメインで『生育期間が短い』『根や茎が短い』『栄養価が高い』がコンセプトだという。
狭いが三食昼寝付きの規則正しい生活を続けていくうちに、人間の都合の良い作物に仕上がっていくものもあるのだという。後に『狭い』という環境にも慣れていくようだ。
そうして、室内の好条件で育てられるので、外敵や病気にはほとんど無縁なのだそうだ。
そして、開発部門は品種改良された植物のレシピをつくるのがメインなのだという。
「植物のレシピ?水分・栄養分の供給量や生育期間を決めるということですか?」
「それもあるけど、もっと細かい内容を決めているんだよ」
雪はそう言うと、さらに説明を続けた。
『水分・栄養分の供給量やタイミング』『光の供給時間』『生育期間』などが品種によって異なるため、それぞれ最適条件を見つけるのが仕事なのだという。
コストも常に意識する必要があるため、栄養分の種類などはなるべく少なくして同じものを使用するようにする。その他の設定で最適条件を見つけ出すことが基本的な考え方なのだという。
ものによっては一日に二回暗い時間をつくることによって、一日十二時間と勘違いをさせることができる。それにより、生育期間を約半分にできたものもあるという。
条件さえ人間が決めてしまえば後は基本的には機械任せになるため、細かく条件設定する必要があるという。ただし、植物も生物のため同じ生育環境でも毎回全く同じようには育たない。大きさなどの生育状況を見ながら調整が必要で、これもレシピに含まなくてはならないということだ。
とにかく検証することが山のようにあって大変な作業であることは理解できたような気がした。レシピ作成に必要な制御ソフトもこの会社の別部署で制作しているため、意見を反映してもらうことも多いようだ。『他部署との連携なんて会社のようですね』と農が言ったら『だから会社だよ』と味来から突っ込まれそうだなと思った。
「物流が三十階ですか?」
「うん、物流が三十階」
味来はうれしそうに、いやドヤ顔で言った。物流は一階と三十階にある。三十階にはドローンが配備されており、少量の場合はすべてドローンによる配達が行われている。まだドローンの高度や飛行する時間帯、飛行範囲など規制が厳しく、一度に飛ばせる数も決められているという。
それでも農はとても効率的で進んでいるなと感じた。味来からの説明を受けながら、三十階に到着してまた驚いた。
「なんじゃこりゃ」
「だから、物流」
味来はまたうれしそうにドヤ顔で言った。
「やぎくんはいいリアクションをするね」
「これを初めて見たら誰だって驚きますよ」
両サイドにドローンの発着場があり、風向きによって離着陸する方向を変えているのだという。ドローンの発着場の後方に両サイドそれぞれコンベヤが設置されていた。
発送される荷物が運ばれてドローンが掴み、発着口が開いてドローンが離陸する。多数小型ヘリポートがある飛行場という表現が当てはまるのかもしれない。コンベヤが稼働する機械音とドローンのプロペラ音が混在している。
確かに物流だ。ただし、ほとんど人がいない。
次に農場を見せてもらうことになった。
「今度は下の階層から順番に上がっていこう」
まるでダンジョンに向かう冒険者のような言い方だ。農場に到着してまたまた驚いた。
「なんじゃこりゃ」
「だから、農場」
味来はまたまたうれしそうにドヤ顔で言った。このやりとりは流石に飽きてきた。三メートルほどの高さがある空間に棚のようなものがいくつも並んでいた。その棚に植物が植えられていて、それが段になっていた。
その段は床と天井の奥へと連なっており、下と上の階に続いていた。屋内で平面の十分な栽培面積を確保するのは難しいため高さで栽培面積を補っているのだという。
その棚と棚の間にはコンベヤが設置されていて、収穫した野菜を搬送する仕組みのようだ。ここは農場というより『工場』という言葉が適正に思えた。これだけ広いのに作業をしている人数が少ない。
「収穫は人力だけど、それ他は人が直接作業することはあまりないからね。農場といっても品質管理や機械などのメンテナンスが主な業務だよ。『農場工場』略して『農場』」
味来の説明に農はただただ感心するのだった。ただ、略して『農場』はセンスを疑わざるを得ない。
大小様々な透明の丸いジェルのようなものが敷き詰められている容器の中で根が伸びているのが見えた。棚の容器の中を見ると各スペースの高さが一メートルほどしかなく、根が短くて太い。根が土ではなく透明の丸いジェルに埋まっているため根の状態が目視することができる。
根菜は葉野菜などと比較して高さが必要のため、別のフロアで栽培しているそうだ。
「ところで、区切られたスペースで植物が育てられていることはわかりましたが、散水するホースなどが見当たりませんが・・・・・・」
農は限られた情報の中で気づいた質問をしてみた。
「散水?しないよ」
大小様々な透明の丸いジェルが水分や栄養分なのだそうだ。よく見ると小さいジェルは薄く色が着いているようだ。透明なジェルが水分で薄く色がついている小さめのジェルが栄養分ということだった。
「そういえば、今朝同じようなものを見たような気がするけど・・・・・・」
農の疑問にはすぐに答えが返ってきた。
「そうだよ、同じものだよ」
大きく分けて『成長した野菜を収穫して出荷するブース』と『根がついた状態で出荷するブース』があるという。根がついた状態のものは本当の採れたてを食べられるということでかなり需要があり、高値で売れるらしい。
「いいものは高くても売れるんだよ」
味来はドヤ顔で言った。農は『成功者の言うことには説得力があるな』と思うしかなかった。
「ここから先は専門家に聞くとしよう」
味来はそう言って研究・開発部門へと向かった。二十階から二十五階が研究・開発部門のエリアだった。まずは、そして、研究・開発部長の『綾目 雪』を紹介された。
「はじめまして、ほし・・・・・・」
「彼は洞爺くんのとこで働いている『やぎくん』」
農と雪の自己紹介は味来によって中途半端に終了した。
「よろしくね、やぎくん」
またしてもきちんと名乗れず自己紹介は終わってしまった。
「あれ?もしかして、昨日噴水の縁に座ってなかった?」
雪の突然の問いかけに『なぜ、綾目さんがそんなことを知っているのだろう』と農は記憶を遡った。数秒後に恥ずかしくなってきて、赤面しているのが自分でもわかった。
「き、昨日は失礼しました。いろいろなことが起こって動揺していて・・・・・・」
「あんな格好であんなところにいたから心配になって声掛けちゃった」
昨日この時代に来て、噴水の縁に座っていた農に最初に声を掛けた女性が綾目雪だった。
「やぎくんと雪ちゃん知り合いだったの?」
農は味来に昨日の恥ずかしい出来事を話した。その後、味来は雪に『後はよろしくね』と言って、別のところへ行ってしまった。
さっそく、農は雪から研究・開発部門の役割を説明を受けた。
研究部門は、品種改良がメインで『生育期間が短い』『根や茎が短い』『栄養価が高い』がコンセプトだという。
狭いが三食昼寝付きの規則正しい生活を続けていくうちに、人間の都合の良い作物に仕上がっていくものもあるのだという。後に『狭い』という環境にも慣れていくようだ。
そうして、室内の好条件で育てられるので、外敵や病気にはほとんど無縁なのだそうだ。
そして、開発部門は品種改良された植物のレシピをつくるのがメインなのだという。
「植物のレシピ?水分・栄養分の供給量や生育期間を決めるということですか?」
「それもあるけど、もっと細かい内容を決めているんだよ」
雪はそう言うと、さらに説明を続けた。
『水分・栄養分の供給量やタイミング』『光の供給時間』『生育期間』などが品種によって異なるため、それぞれ最適条件を見つけるのが仕事なのだという。
コストも常に意識する必要があるため、栄養分の種類などはなるべく少なくして同じものを使用するようにする。その他の設定で最適条件を見つけ出すことが基本的な考え方なのだという。
ものによっては一日に二回暗い時間をつくることによって、一日十二時間と勘違いをさせることができる。それにより、生育期間を約半分にできたものもあるという。
条件さえ人間が決めてしまえば後は基本的には機械任せになるため、細かく条件設定する必要があるという。ただし、植物も生物のため同じ生育環境でも毎回全く同じようには育たない。大きさなどの生育状況を見ながら調整が必要で、これもレシピに含まなくてはならないということだ。
とにかく検証することが山のようにあって大変な作業であることは理解できたような気がした。レシピ作成に必要な制御ソフトもこの会社の別部署で制作しているため、意見を反映してもらうことも多いようだ。『他部署との連携なんて会社のようですね』と農が言ったら『だから会社だよ』と味来から突っ込まれそうだなと思った。
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