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農場見学-4
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いつもの『日常』が、変わるはずがないと思っていた『日常』が突然なくなった。
味来が勤務先の農場工場に戻るところだった。味来は農場工場の近くまで来て、経営者である弟が農場工場から出てくるところが見えた。
弟と目が合い、味来が挨拶代わりに手を上げた。その直後の突然の爆発音と建物の崩壊音。映画の世界が現実になったような状況とはこういうことをいうのであろう。もちろん、その時の味来にはそのような思考を持つ余裕はなかった。
数箇所で爆撃と爆破されたであろう勤務先の農場工場と周囲の風景と音が一変した。『血と硝煙の匂い』とはこのことをいうのかもしれない。硝煙と血にまみれた人、人の悲鳴と建物の崩壊音で溢れていた。
味来自身は、爆風で飛ばされた際についた掠り傷と若干の耳鳴りがある程度だった。崩れて飛散した建物の一部の下敷きになっている人を見つけた。なぜかすぐにその人が弟だとわかり、悲鳴と爆発音の中すぐに駆けつけた。その血まみれの弟の姿は腹部には何かが貫通しており、頭部の一部が潰れており脳の一部と思える物が見えていた。医者でなくとも絶命していることがわかった。味来の弟が死んだ。
その弟の死を確認した直後、味来は意識を失い、気づいた時には十五年前の過去にタイムスリップしていた。同じ会社で働いていた妻の安否確認ができなかったことが気がかりだった。
施設の爆破や爆撃は各地で行われていた。標的となっていたのは農場や農場工場、食料倉庫などだった。国内の食料や物資は急激な減少することになる。物流網も崩壊し、お金を支払えば物資を入手できる『日常』はなくなった。
その後、国内でも物資を求めて暴動が起き、爆発音や銃声が聞こえることが日常となった。これは、味来がタイムスリップした後に知ることになる状況だった。
「こんな話、信じられないかい?」
『タイムスリップ』というただでさえ信じがたい内容に加えられた想像しがたい未来の話。農は自分がタイムスリップをしたということもあるのだろうが、この信じられない話を信じなければならないと思った。味来の話を信じなければ、なぜか後悔するような気がした。
「信じますよ。そのためにこの会社を立ち上げたんですね?」
「そうなんだよ。僕がタイムスリップをした時代にも技術がなかったわけではないけど、当然僕の方が知識も経験もあるからね。そのおかげで数年で会社をここまで成長させることが出来たんだ」
味来の本日数回目のドヤ顔だった。
会社を大きくしたり技術を進歩させるだけでは、悲惨な未来を変えることはできない。制度を変えなければいけない。そのために、『技術・権力・財力』を手に入れることが必要と味来は考え、実行した。
「いろいろ自分なりに理解はできましたけど、なんで俺にこんな話をしたんですか?」
「君にも協力してもらいと思ってね。君は料理人だと聞いたよ。これを広めるには、頭で理解するだけでなく舌で感じてもらうことも重要だと思ってね。朝食の時の顔を見てたら、ここでつくったものの良さを感じてもらったと思ったんでね」
「はい、食堂でも思いましたけど、同じ野菜でもどれも今まで食べたことのないようなものに感じました。もっと、食材のことを知りたいし調理してみたいと思いました」
「ぜひともお願いしたいね。洞爺のところで働くんでしょ?洞爺のところにはうちの食材がたくさん納品されるからよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
農は時計を見て、そろそろ店に戻る時間であることに気づいた。
「そろそろ失礼します。今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ、いろいろ経験してもらえて良かったよ」
農が部屋を出ようとしたところで山東菜々が戻ってきた。農は山東 菜々にも挨拶をして、『株式会社さとう』を後にした。
「どうでしたか、やぎくんは?」
「僕の話を信じてくれたみたいだし、今後の働きに期待したいね。僕たちには時間がないのだから」
味来が勤務先の農場工場に戻るところだった。味来は農場工場の近くまで来て、経営者である弟が農場工場から出てくるところが見えた。
弟と目が合い、味来が挨拶代わりに手を上げた。その直後の突然の爆発音と建物の崩壊音。映画の世界が現実になったような状況とはこういうことをいうのであろう。もちろん、その時の味来にはそのような思考を持つ余裕はなかった。
数箇所で爆撃と爆破されたであろう勤務先の農場工場と周囲の風景と音が一変した。『血と硝煙の匂い』とはこのことをいうのかもしれない。硝煙と血にまみれた人、人の悲鳴と建物の崩壊音で溢れていた。
味来自身は、爆風で飛ばされた際についた掠り傷と若干の耳鳴りがある程度だった。崩れて飛散した建物の一部の下敷きになっている人を見つけた。なぜかすぐにその人が弟だとわかり、悲鳴と爆発音の中すぐに駆けつけた。その血まみれの弟の姿は腹部には何かが貫通しており、頭部の一部が潰れており脳の一部と思える物が見えていた。医者でなくとも絶命していることがわかった。味来の弟が死んだ。
その弟の死を確認した直後、味来は意識を失い、気づいた時には十五年前の過去にタイムスリップしていた。同じ会社で働いていた妻の安否確認ができなかったことが気がかりだった。
施設の爆破や爆撃は各地で行われていた。標的となっていたのは農場や農場工場、食料倉庫などだった。国内の食料や物資は急激な減少することになる。物流網も崩壊し、お金を支払えば物資を入手できる『日常』はなくなった。
その後、国内でも物資を求めて暴動が起き、爆発音や銃声が聞こえることが日常となった。これは、味来がタイムスリップした後に知ることになる状況だった。
「こんな話、信じられないかい?」
『タイムスリップ』というただでさえ信じがたい内容に加えられた想像しがたい未来の話。農は自分がタイムスリップをしたということもあるのだろうが、この信じられない話を信じなければならないと思った。味来の話を信じなければ、なぜか後悔するような気がした。
「信じますよ。そのためにこの会社を立ち上げたんですね?」
「そうなんだよ。僕がタイムスリップをした時代にも技術がなかったわけではないけど、当然僕の方が知識も経験もあるからね。そのおかげで数年で会社をここまで成長させることが出来たんだ」
味来の本日数回目のドヤ顔だった。
会社を大きくしたり技術を進歩させるだけでは、悲惨な未来を変えることはできない。制度を変えなければいけない。そのために、『技術・権力・財力』を手に入れることが必要と味来は考え、実行した。
「いろいろ自分なりに理解はできましたけど、なんで俺にこんな話をしたんですか?」
「君にも協力してもらいと思ってね。君は料理人だと聞いたよ。これを広めるには、頭で理解するだけでなく舌で感じてもらうことも重要だと思ってね。朝食の時の顔を見てたら、ここでつくったものの良さを感じてもらったと思ったんでね」
「はい、食堂でも思いましたけど、同じ野菜でもどれも今まで食べたことのないようなものに感じました。もっと、食材のことを知りたいし調理してみたいと思いました」
「ぜひともお願いしたいね。洞爺のところで働くんでしょ?洞爺のところにはうちの食材がたくさん納品されるからよろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
農は時計を見て、そろそろ店に戻る時間であることに気づいた。
「そろそろ失礼します。今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ、いろいろ経験してもらえて良かったよ」
農が部屋を出ようとしたところで山東菜々が戻ってきた。農は山東 菜々にも挨拶をして、『株式会社さとう』を後にした。
「どうでしたか、やぎくんは?」
「僕の話を信じてくれたみたいだし、今後の働きに期待したいね。僕たちには時間がないのだから」
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