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収穫-1
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「明日は農場で収穫があるんだけど、やぎくんも行かないかい?」
洞爺から農への突然の誘いだった。
イベントの発表は突然である。
「行きます。『俺も』ってことは洞爺さんも行くんですか?」
「うん、早生ちゃんたちも行くよ」
洞爺たちも収穫を手伝いに行くこともあるのだなと農は思った。
翌日、農たちは『株式会社さとう』に向かった。『株式会社さとう』に到着すると、会社ビルには入らずに会社の前に停車していたバスに乗り込んだ。
農場工場で収穫作業をすると思っていた農は、バスに乗ったことに疑問を持った。洞爺と早生は二人掛けの同じ席に座ったため、農は洞爺に行き先を質問するタイミングを逃してしまった。他の人もバスに乗り込んできたため、慌てて空いている席に座った。
「おはよう」
農は慌てて着席したため、味来の隣に座ったことに気づいていなかった。挨拶を返し、味来に洞爺に聴けなかったバスの行き先を訊いた。
「今回は屋外の農場の収穫だよ。『株式会社さとう』は屋外の農場も経営しているんだよ」
なぜか味来はドヤ顔だった。屋外農場は面積も広く、一度の収穫量も農場とは比較にならないほど多い。よって、なるべく多くの社員と農たちのような味来の周りの人に声を掛けて労働力を集めるのだという。
バスに乗ってから数分で目的地に到着した。『イメージする農場はこれだよ』と思うくらい広大な面積だった。確かにバスが必要になる人数が要求されるなと農は納得した。
『株式会社さとう』には『屋外農場部』という部署があり、収穫時期など人員が必要になる場合に他部署に応援要請が出されるらしい。
もちろん、農場工場と同様に年間スケジュールが立てられている。ただし、屋内と違って天候や発育状況によるスケジュール変更は何度かあるらしい。
農は屋外の農場での収穫も『新人社員の研修』があるのだろうと綾目雪の話をふと思い出した。
収穫物を洗浄・選別する施設兼事務所に今回参加した数十名が集合して、まずは班分けが行われた。
レストラン『Sugar』チームは一つの班にまとめられた。が、『Sugar』チームなのにいない人と農にとっては初めて見る人がいた。
「源助は来てないんですか?」
「うん、予定が合わなくて今回は来られなかったんだ。来られるときは参加してるよ」
『Sugar』チームのいない人の説明は洞爺がしてくれた。
『Sugar』チームの農が初めて見る人からは冷ややかな視線がずっと送られていたように感じていた。勘違いかもしれない。いや、勘違いであってほしいと農は願っていた。
「あと、こちらの方は?」
農が初めて見る人の説明はいつも通りの刺々しい口調で雑に早生がした。
「はあ?ひかりちゃんだよ。もう忘れたの?ホントにやぎって失礼なヤツだよね」
「いやいや、初めましてだから」
「そうだっけ?私の大学の後輩で『Sugar』でアルバイトしているの。アルバイト歴としてはひかりちゃんが先輩だけどね」
洞爺と味来がもう一人アルバイトがいると言っていたことを農は思い出した。『株式会社さとう』が蓄電池を共同開発しているメーカー『Onion』の社長の娘。
そして、昨日洞爺が言っていた『早生ちゃんたち』とは源助ではなく、そのもう一人のアルバイトのことだと理解した。
「初めまして、五月 ひかりです。よろしくお願いします。」
「初めまして、ほ・・・・・・」
「早生さんの部屋の鍵を無理矢理開けて、着替え中のしかも裸の早生さんに抱きつこうとした変態のやぎさんですね。早生さんからいろいろと話は聞いてます」
冷ややかな眼差しと無愛想な言い方でまたもや自己紹介を途中で打ち切られてしまった。ただ、いつもと違うのは事前に良くない間違った情報が伝わっているということだ。部屋の鍵を無理矢理開ける方法を農は知らない。
「それは誤解だから。事実と大きく異なってるから」
「じゃあ、早生さんが嘘をついているということですか?」
「すべて嘘ではないというか・・・・・・いろいろ脚色されているというか。おい、早生。嘘ばかり教えるな」
「いいじゃん、面白いし。すべて嘘じゃないんでしょ?」
ニヤニヤしながら早生は言う。農は言葉に詰まる。嘘の中に事実が混ざっているからとてもたちが悪い。農は早生に遊ばれているとしか思えなかった。
農が冷ややかな視線を感じていたのは、勘違いではなかったようだ。理由はわかったがホッとしない。むしろ知りたくなかった。これは訂正に時間がかかりそうだ。
「まあまあ、許してあげてよ。やぎくんが来てから、早生ちゃんが楽しそうに見えることが多くなったような気がするんだよね。弟が出来たような気持ちになっているのかな」
納得いかない顔をしている農を洞爺が慰めにきた。どちらかというと早生のフォローのような気がした。
農は誰かの役に立てているのなら良しとするか。と思ったがやはり納得がいかなかった。決して弟ではない。
「あと、ひかりちゃんとも仲良くね。また店で会うと思うから」
「まずはひかりちゃんと仲良くできるように努力します」
洞爺の期待に応えられることを農も願った。
洞爺から農への突然の誘いだった。
イベントの発表は突然である。
「行きます。『俺も』ってことは洞爺さんも行くんですか?」
「うん、早生ちゃんたちも行くよ」
洞爺たちも収穫を手伝いに行くこともあるのだなと農は思った。
翌日、農たちは『株式会社さとう』に向かった。『株式会社さとう』に到着すると、会社ビルには入らずに会社の前に停車していたバスに乗り込んだ。
農場工場で収穫作業をすると思っていた農は、バスに乗ったことに疑問を持った。洞爺と早生は二人掛けの同じ席に座ったため、農は洞爺に行き先を質問するタイミングを逃してしまった。他の人もバスに乗り込んできたため、慌てて空いている席に座った。
「おはよう」
農は慌てて着席したため、味来の隣に座ったことに気づいていなかった。挨拶を返し、味来に洞爺に聴けなかったバスの行き先を訊いた。
「今回は屋外の農場の収穫だよ。『株式会社さとう』は屋外の農場も経営しているんだよ」
なぜか味来はドヤ顔だった。屋外農場は面積も広く、一度の収穫量も農場とは比較にならないほど多い。よって、なるべく多くの社員と農たちのような味来の周りの人に声を掛けて労働力を集めるのだという。
バスに乗ってから数分で目的地に到着した。『イメージする農場はこれだよ』と思うくらい広大な面積だった。確かにバスが必要になる人数が要求されるなと農は納得した。
『株式会社さとう』には『屋外農場部』という部署があり、収穫時期など人員が必要になる場合に他部署に応援要請が出されるらしい。
もちろん、農場工場と同様に年間スケジュールが立てられている。ただし、屋内と違って天候や発育状況によるスケジュール変更は何度かあるらしい。
農は屋外の農場での収穫も『新人社員の研修』があるのだろうと綾目雪の話をふと思い出した。
収穫物を洗浄・選別する施設兼事務所に今回参加した数十名が集合して、まずは班分けが行われた。
レストラン『Sugar』チームは一つの班にまとめられた。が、『Sugar』チームなのにいない人と農にとっては初めて見る人がいた。
「源助は来てないんですか?」
「うん、予定が合わなくて今回は来られなかったんだ。来られるときは参加してるよ」
『Sugar』チームのいない人の説明は洞爺がしてくれた。
『Sugar』チームの農が初めて見る人からは冷ややかな視線がずっと送られていたように感じていた。勘違いかもしれない。いや、勘違いであってほしいと農は願っていた。
「あと、こちらの方は?」
農が初めて見る人の説明はいつも通りの刺々しい口調で雑に早生がした。
「はあ?ひかりちゃんだよ。もう忘れたの?ホントにやぎって失礼なヤツだよね」
「いやいや、初めましてだから」
「そうだっけ?私の大学の後輩で『Sugar』でアルバイトしているの。アルバイト歴としてはひかりちゃんが先輩だけどね」
洞爺と味来がもう一人アルバイトがいると言っていたことを農は思い出した。『株式会社さとう』が蓄電池を共同開発しているメーカー『Onion』の社長の娘。
そして、昨日洞爺が言っていた『早生ちゃんたち』とは源助ではなく、そのもう一人のアルバイトのことだと理解した。
「初めまして、五月 ひかりです。よろしくお願いします。」
「初めまして、ほ・・・・・・」
「早生さんの部屋の鍵を無理矢理開けて、着替え中のしかも裸の早生さんに抱きつこうとした変態のやぎさんですね。早生さんからいろいろと話は聞いてます」
冷ややかな眼差しと無愛想な言い方でまたもや自己紹介を途中で打ち切られてしまった。ただ、いつもと違うのは事前に良くない間違った情報が伝わっているということだ。部屋の鍵を無理矢理開ける方法を農は知らない。
「それは誤解だから。事実と大きく異なってるから」
「じゃあ、早生さんが嘘をついているということですか?」
「すべて嘘ではないというか・・・・・・いろいろ脚色されているというか。おい、早生。嘘ばかり教えるな」
「いいじゃん、面白いし。すべて嘘じゃないんでしょ?」
ニヤニヤしながら早生は言う。農は言葉に詰まる。嘘の中に事実が混ざっているからとてもたちが悪い。農は早生に遊ばれているとしか思えなかった。
農が冷ややかな視線を感じていたのは、勘違いではなかったようだ。理由はわかったがホッとしない。むしろ知りたくなかった。これは訂正に時間がかかりそうだ。
「まあまあ、許してあげてよ。やぎくんが来てから、早生ちゃんが楽しそうに見えることが多くなったような気がするんだよね。弟が出来たような気持ちになっているのかな」
納得いかない顔をしている農を洞爺が慰めにきた。どちらかというと早生のフォローのような気がした。
農は誰かの役に立てているのなら良しとするか。と思ったがやはり納得がいかなかった。決して弟ではない。
「あと、ひかりちゃんとも仲良くね。また店で会うと思うから」
「まずはひかりちゃんと仲良くできるように努力します」
洞爺の期待に応えられることを農も願った。
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