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第二章 魔獣退治編
12 冷血のオニキス
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レオは兜と防具を着けて、広大な中庭に立った。
国王軍の施設では、騎乗の訓練が行われている。
今回の魔獣退治で集まった勇者達……所謂、新人の能力者達が、慣れない騎乗訓練を国王軍のもとで習得するのだ。
レオの目前には、深緑と黒の鱗を光らせる鱗竜が二足歩行の姿で直立している。鋭い爪と牙を持ち、鱗竜特有の冷たい目でレオを見下ろしていた。
その手綱はオリヴィエ村長が持っている。
レオと鱗竜の初対面の日だ。
「オニキスは鱗竜の中でも、特に機敏で優秀な個体だ。だがその代わりに、主を選ぶ。操作が気に食わないと故意に振り落とすから、気をつけてくれ」
黒猫ではあり得ない所業に、レオは苦笑いした。
オニキスに近づいて頬を撫で、声を掛ける。
「オニキス。僕はレオだ。よろしくね」
オニキスの冷たい瞳は、まるで感情が読めない。
背中に飛び乗ると、立ち上がっている分、視界が高い。
タッ、タッ、タッと緩やかな歩行から速度を上げて走ると、かなりのスピードが出るようだ。
黒猫に乗り慣れているレオにとって通常の騎乗は楽勝だが、問題は上下の空間を使って、自在に機動する技術だ。
中庭には騎乗訓練のための様々な障害物や堀、壁面などがあり、それらを使って複雑な操作を練習する。
立て続けにジャンプし、壁を蹴って横に飛び、身をかがめて障害物を潜り、と、早々にオニキスを乗りこなすレオをオリヴィエ村長は感心して眺めた。
「さすがに俊足のキーランを乗りこなすだけあるな」
周囲で練習していた新人の能力者達も動きを止めて、オニキスの鋭敏な動きに注目していた。
だがカーブからさらに高くジャンプをした後に、オニキスは尻を思い切り振って、レオを振り落とした。
かなりの高さからの落下に周囲からあっと悲鳴が上がり、オリヴィエ村長も息を呑んだ。
だがレオが落下する地点には、レオの手によって大きなスプリングマットが出現していた。
ボスン! と音を立てて、レオはマットに落ちた。
「いたた……オニキス。何が気に入らなかったんだ?」
オニキスは少し離れたところから、レオを冷たい目で見下ろしている。
オリヴィエ村長がレオに近づいて説明した。
「落下した主の反応が見たかったのさ。ここで大怪我するようじゃ、自分に相応しくないと考えている」
「どっちが主だか、わからないですね……」
「舐められたら終わりだ。キーランのように互いの愛情で絆が結ばれるとは、期待しない方がいい」
「わかりました」
周囲で見学していた能力者達は、スプリングマットが突然現れた現象に唖然としていた。どんなカラクリなのかと顔を見合わせている。
レオはオニキスとの温度の無い、厳しい訓練を続けた。
* * * *
一方で、バッツは一匹も売れないコドラゴンの丸焼き露店を惰性で開いて、呆然と町の広場を眺めていた。
休日と違って町は静けさを取り戻して、人々はランチや仕事でまばらに通りかかる程度だった。
「旅費に宿代に食費……ここにいるだけで金がかかるなぁ。コドラゴンも全然売れないし。魔獣退治を成功させて報酬を貰うしか道はねえ」
だが魔獣退治への意気込みに反して、バッツの頭の中はお花畑だった。
「あぁ、リコ……可愛いかったなぁ」
笑顔や驚いた顔、真剣な顔を次々と思い出して、膝に顔を埋める。
「でもあの三人の父親はかなり変人ぽかったな……」
アレキが三姉妹の父親なのだと、すっかり勘違いしていた。
遠くに聳える、金ピカ城の屋根を見上げた。
「それに凄い成金だ。あれは由緒正しき貴族の城というより、近代にド派手に建てたっぽいもんな」
得体の知れない父親像に怯えていた。
そうして金ピカ城を眺めているうちに、門が開いて、真っ白な犬が出てきた。
「あっ!?」
国王軍の施設では、騎乗の訓練が行われている。
今回の魔獣退治で集まった勇者達……所謂、新人の能力者達が、慣れない騎乗訓練を国王軍のもとで習得するのだ。
レオの目前には、深緑と黒の鱗を光らせる鱗竜が二足歩行の姿で直立している。鋭い爪と牙を持ち、鱗竜特有の冷たい目でレオを見下ろしていた。
その手綱はオリヴィエ村長が持っている。
レオと鱗竜の初対面の日だ。
「オニキスは鱗竜の中でも、特に機敏で優秀な個体だ。だがその代わりに、主を選ぶ。操作が気に食わないと故意に振り落とすから、気をつけてくれ」
黒猫ではあり得ない所業に、レオは苦笑いした。
オニキスに近づいて頬を撫で、声を掛ける。
「オニキス。僕はレオだ。よろしくね」
オニキスの冷たい瞳は、まるで感情が読めない。
背中に飛び乗ると、立ち上がっている分、視界が高い。
タッ、タッ、タッと緩やかな歩行から速度を上げて走ると、かなりのスピードが出るようだ。
黒猫に乗り慣れているレオにとって通常の騎乗は楽勝だが、問題は上下の空間を使って、自在に機動する技術だ。
中庭には騎乗訓練のための様々な障害物や堀、壁面などがあり、それらを使って複雑な操作を練習する。
立て続けにジャンプし、壁を蹴って横に飛び、身をかがめて障害物を潜り、と、早々にオニキスを乗りこなすレオをオリヴィエ村長は感心して眺めた。
「さすがに俊足のキーランを乗りこなすだけあるな」
周囲で練習していた新人の能力者達も動きを止めて、オニキスの鋭敏な動きに注目していた。
だがカーブからさらに高くジャンプをした後に、オニキスは尻を思い切り振って、レオを振り落とした。
かなりの高さからの落下に周囲からあっと悲鳴が上がり、オリヴィエ村長も息を呑んだ。
だがレオが落下する地点には、レオの手によって大きなスプリングマットが出現していた。
ボスン! と音を立てて、レオはマットに落ちた。
「いたた……オニキス。何が気に入らなかったんだ?」
オニキスは少し離れたところから、レオを冷たい目で見下ろしている。
オリヴィエ村長がレオに近づいて説明した。
「落下した主の反応が見たかったのさ。ここで大怪我するようじゃ、自分に相応しくないと考えている」
「どっちが主だか、わからないですね……」
「舐められたら終わりだ。キーランのように互いの愛情で絆が結ばれるとは、期待しない方がいい」
「わかりました」
周囲で見学していた能力者達は、スプリングマットが突然現れた現象に唖然としていた。どんなカラクリなのかと顔を見合わせている。
レオはオニキスとの温度の無い、厳しい訓練を続けた。
* * * *
一方で、バッツは一匹も売れないコドラゴンの丸焼き露店を惰性で開いて、呆然と町の広場を眺めていた。
休日と違って町は静けさを取り戻して、人々はランチや仕事でまばらに通りかかる程度だった。
「旅費に宿代に食費……ここにいるだけで金がかかるなぁ。コドラゴンも全然売れないし。魔獣退治を成功させて報酬を貰うしか道はねえ」
だが魔獣退治への意気込みに反して、バッツの頭の中はお花畑だった。
「あぁ、リコ……可愛いかったなぁ」
笑顔や驚いた顔、真剣な顔を次々と思い出して、膝に顔を埋める。
「でもあの三人の父親はかなり変人ぽかったな……」
アレキが三姉妹の父親なのだと、すっかり勘違いしていた。
遠くに聳える、金ピカ城の屋根を見上げた。
「それに凄い成金だ。あれは由緒正しき貴族の城というより、近代にド派手に建てたっぽいもんな」
得体の知れない父親像に怯えていた。
そうして金ピカ城を眺めているうちに、門が開いて、真っ白な犬が出てきた。
「あっ!?」
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