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エピローグ

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 もう私たちは立派なヒヨコだと思います。
 これだけ卵を食べているのだから。ふたり連れ添って、ピヨピヨ鳴きたいのです。だから、お店の定休日にも関わらず私はキッチンに立っている。
 スクランブルエッグをふあふあに作り上げて、耳を切り落としたパンに挟んだ。耳を切り落とすのは、私ではなくて彼の好みだから。そして、大根の葉で作った炒め物をタッパーに詰める。
 サンドイッチにラップを軽く巻いて、カゴに包み込む。
 お店の鍵を閉めて、「これから伺います」とメールを打った。
 
 マスクを口に当てその上からマフラーで口元を覆う。
 パンデミックが世界を変えて、外出する人はほとんどいなくなった。
 ニュースは連日その日の感染者数を読み上げて、お決まりの感染対策を告げる。
 梨央さんの勤め先はすぐに環境を整えて、ほとんどの社員が在宅勤務となったらしい。でも、みんなそうじゃない。外で仕事しなければいけない人が大勢いるのだ。
 これから飲食業に、「piyo-piyo」にも暗い影を落とすだろう。
 私はどうなるんだろう......。
 
 歩道橋を登りきると、お気に入りのスカートを冷たい風が揺らした。ここから眺める夕方の景色はイルミネーションで彩られている。クリスマスの到来までもう少しだった。
 梨央さんのところにお弁当を届ける。これは、ちょっとしたプレゼントなのです。
 
 今も忘れない恋の歌......、なんて少し口ずさんでみた。
 
 街角に流れるリズムが、私たちの再会を祝福しているようだった。
 私からあなたへ、この<デリバリー>がこれからも続けられたらいいな。
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みんなの感想(1件)

桜花音
2023.05.16 桜花音

『ふあふあ』という表現がとても柔らかく感じて、それがそのまま、お店の空気感や2人の雰囲気だったと思います。
合間のレシピが美味しそうでした。

卯月ゆう
2023.05.16 卯月ゆう

感想をありがとうございました!
「ふあふあ」はこの作品を書いた当初から決めていたキーワードでした。
あまり抑揚のないストーリーなのですが、そう言ってもらえると励みになります~

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