152 / 159
【第五章】日常恋愛編『きみがいるから』
第152話 京一郎
しおりを挟む
勝手知ったる他人の家だ。
俺は呼び鈴を押したあと、声が返ってくるまでに佐伯家の門を開け、玄関まで入っていった。
すると、夢乃とジプシーの家のはずなのに、ほーりゅうが出迎えに飛びだしてくる。
「京一郎! あけましておめでとう!」
「おう、ほーりゅう、おめでとさん。あ? 正月だからか、可愛い髪形しているじゃねぇか。馬子にも衣装だね」
俺は彼女より十五センチ以上も背が高いせいか、最初に彼女の髪型へ視線が向いた。
「孫にも衣装って? 孫じゃないけれど、似合う似合う? ジプシーに編み込んでもらったんだぁ」
「――おまえ、言葉の意味、理解してねぇだろ? あえて訂正して喧嘩する気もねぇけど。へぇ、奴にしてもらったんだ」
旅行より帰ってきてから、俺は家庭の事情で動けなかった。
その一週間で、どのような動きがあったのだろうか。
ほーりゅうからは、旅行の帰り際に感じた不穏な気配が払拭されていた。
奴とうまく仲直りができたということだろうか。
なんにせよ、心配事がひとつでも減ればいい。
「なんだかおまえ、ばたばたしているなぁ。いまから出かけるのか?」
「そうよ、福袋を買いに行くんだぁ。でも、最近、意味もなくついてくるくせに、こういうときに限って、ジプシーったら留守番するんだって。荷物持ちにきてくれたらいいのにさ」
居間のソファで素知らぬ顔をして雑誌を読んでいるジプシーを振り返り、ほーりゅうが頬をふくらませて文句を口にする。
なるほど。
福袋を買いに行くという佐伯家女性陣恒例の正月行事に、ほーりゅうも今年は参戦ってことか。
「おまえら女ども三人分の荷物持ちなんざ、俺だって御免だ。奴と一緒に、留守番させてもらうよ」
俺の言葉を聞いたほーりゅうは、ふくれたまま言った。
「いいもん。あ。昨日、初詣に行ったとき、天津甘栗を買ってきたんだぁ。おやつに食べてもいいよ」
それからすぐに、夢乃の母親と夢乃、ほーりゅうの三人は、にぎやかに出かけていった。
俺は彼女らを見送ったあと、ほーりゅうの口から甘栗との言葉を聞いていたため、キッチンに入る。
そして、勝手に急須を取りだして茶葉を入れ、ふたつの湯飲みに緑茶を淹れた。
両手に湯飲みを持ってキッチンから続いている居間へ向かい、ひとつをジプシーの前のテーブルに置く。
それから俺は、奴の正面にどかりと座った。
目の前のテーブルの上に積まれた大量の甘栗が、いやでも視界に入る。
ほーりゅう、おまえ買い過ぎ。
俺は、雑誌に目を向けたままのジプシーの表情を、上目づかいでうかがった。
いままでの付き合いの中で見てきた奴の顔。
その中で、いまの表情はすこぶる機嫌がいいときだ。
俺は呼び鈴を押したあと、声が返ってくるまでに佐伯家の門を開け、玄関まで入っていった。
すると、夢乃とジプシーの家のはずなのに、ほーりゅうが出迎えに飛びだしてくる。
「京一郎! あけましておめでとう!」
「おう、ほーりゅう、おめでとさん。あ? 正月だからか、可愛い髪形しているじゃねぇか。馬子にも衣装だね」
俺は彼女より十五センチ以上も背が高いせいか、最初に彼女の髪型へ視線が向いた。
「孫にも衣装って? 孫じゃないけれど、似合う似合う? ジプシーに編み込んでもらったんだぁ」
「――おまえ、言葉の意味、理解してねぇだろ? あえて訂正して喧嘩する気もねぇけど。へぇ、奴にしてもらったんだ」
旅行より帰ってきてから、俺は家庭の事情で動けなかった。
その一週間で、どのような動きがあったのだろうか。
ほーりゅうからは、旅行の帰り際に感じた不穏な気配が払拭されていた。
奴とうまく仲直りができたということだろうか。
なんにせよ、心配事がひとつでも減ればいい。
「なんだかおまえ、ばたばたしているなぁ。いまから出かけるのか?」
「そうよ、福袋を買いに行くんだぁ。でも、最近、意味もなくついてくるくせに、こういうときに限って、ジプシーったら留守番するんだって。荷物持ちにきてくれたらいいのにさ」
居間のソファで素知らぬ顔をして雑誌を読んでいるジプシーを振り返り、ほーりゅうが頬をふくらませて文句を口にする。
なるほど。
福袋を買いに行くという佐伯家女性陣恒例の正月行事に、ほーりゅうも今年は参戦ってことか。
「おまえら女ども三人分の荷物持ちなんざ、俺だって御免だ。奴と一緒に、留守番させてもらうよ」
俺の言葉を聞いたほーりゅうは、ふくれたまま言った。
「いいもん。あ。昨日、初詣に行ったとき、天津甘栗を買ってきたんだぁ。おやつに食べてもいいよ」
それからすぐに、夢乃の母親と夢乃、ほーりゅうの三人は、にぎやかに出かけていった。
俺は彼女らを見送ったあと、ほーりゅうの口から甘栗との言葉を聞いていたため、キッチンに入る。
そして、勝手に急須を取りだして茶葉を入れ、ふたつの湯飲みに緑茶を淹れた。
両手に湯飲みを持ってキッチンから続いている居間へ向かい、ひとつをジプシーの前のテーブルに置く。
それから俺は、奴の正面にどかりと座った。
目の前のテーブルの上に積まれた大量の甘栗が、いやでも視界に入る。
ほーりゅう、おまえ買い過ぎ。
俺は、雑誌に目を向けたままのジプシーの表情を、上目づかいでうかがった。
いままでの付き合いの中で見てきた奴の顔。
その中で、いまの表情はすこぶる機嫌がいいときだ。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる