闘え☆桂ちゃん!

くにざゎゆぅ

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突然の指名

やっぱりピンチ! 生徒会長の目が怖い!

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 校長室をあとにしたわたしは、授業中だということもあり、そのまま教室に戻るのだと思っていた。
 けれど、生徒会長はついて来いとばかりに、不機嫌そうな表情で教室がある棟とは逆の廊下を歩いて行く。

 黙ってあとに続くと、校舎の端になる扉から外へと出た。

 職員室や教室からは見えない位置となり、ベンチに囲まれた広い中庭となるそこには、五月の風に揺れる青々とした芝生が植えられている。
 校舎を背に中庭を見守るのは、どっかりと建った巨大な高校創始者の銅像だ。

 その中庭の中心の位置まで進んだ生徒会長は、急に立ち止まった。

「校長はタヌキおやじだ。長所しか口にしていない。可能性のあるきみに、どうしても試験を受けさせたいからだ」

 ゆっくりと振り返った生徒会長は、中庭の端で歩をとめていたわたしと向かい合い、目を細めて見つめてきた。

「これから一週間、月曜日となる今日から金曜日までのあいだに実技試験が行われる。適性検査の合格者が出た高校は、その期間は部活動など生徒の活動が一切禁止となり、部外者は授業終了後、全員速やかに帰宅しなければならない。校舎や運動場や設備の点検、理由はなんとでもつける。そして、その期間中に、きみは学校敷地内で実技試験を受けることになる」

 黙って聞いていたわたしだけれど。
 そこで気がついた。

 この試験は、わたしが想像していたよりも全校生徒に影響がある、大がかりな出来事なのではなかろうか。

 わたしの、しまったというような表情を読んだらしい生徒会長は、嘲笑うように口もとの片端をあげてみせた。

「実技試験中の放課後立ち入り禁止は、情報漏洩の防止と部外者となる生徒の安全のためだ。――まさかきみは、校長の説明を聞いたあとでも、生命に危険なことはないなどという甘い考えを持っているのではないだろうな? 聞いただろう? 悪と戦う正義の味方を選ぶための試験なんだよ?」

 そう口にした生徒会長の漆黒の瞳に、怪しい光が宿る。
 ふわりと中庭を中心とした風が起こり、わたしの背に見えない壁を作ったような気がした。

 生徒会長の放つ殺気に捕らえられたわたしは、一歩も動けなくなる。
 胸の前で両手を握りしめ、その場に立ち竦んだ。
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