闘え☆桂ちゃん!

くにざゎゆぅ

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どうやら歓迎されていないようです

新たなる能力者

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 呆気にとられて見つめるわたしのそばまで来ると、彼は、ヘリウムガスが抜けきらない声をだした。

「ごめんごめん。怖がらせるつもりはなかったんだけれど、あ、オレって昼休みのときに名乗っていなかったよね。左部紘一さとりこういちっていうんだ。これからもよろしく、桂ちゃん」

 流れるように軽く告げると、わたしの前へ回りこんでしゃがみこむ。
 そのまま両手をとって、笑顔でぶんぶんと握手をしてきた。

「凪先輩と留城也のことは下の名前で呼んでいるんだろう? それなら、オレのことも紘一って呼んでよ、桂ちゃん。うわぁ、いい響きだなぁ。紘一先輩だなんて」
「紘一、むやみに触るんじゃねぇよ」

 少し離れたところで立ち止まり、留城也先輩は不機嫌そうに言い捨てる。
 すると、わたしの手をつかんだまま、紘一先輩はわざとらしく留城也先輩の顔をのぞくように見上げた。

「あれぇ? いいじゃないか。この子は留城也の彼女でもなんでもないんだろう?」

 怒りのためか、さらに表情を険しくした留城也先輩と紘一先輩のあいだへ、凪先輩が割って入った。

「留城也、挑発に乗るな。紘一も勝手な行動をとるんじゃない。さっさと桂から離れろ」

 凪先輩の言葉に、紘一先輩はあっさりとわたしの手を放して立ちあがった。
 わたしは、自分が座りこんだままだったことを思いだし、慌てて両手を床について足に力を入れる。
 無事に立ちあがれたわたしは、スカートの後ろをパタパタとはたいた。
 そのあいだに、凪先輩が紘一先輩へ顔を向け、厳しい口調で続ける。

「無断で受験者と接触するんじゃない」

 苦り切った表情の凪先輩が言うと、口もとに笑みを浮かべた紘一先輩がすぐさま切り返した。

「凪先輩が卒業したあと、この高校の新入生に候補者があらわれた場合、立会人となるのはオレか留城也になるじゃないですか。だからオレは、凪先輩のやり方をいまから見学しているんですよ。それに、実技試験中に受験者側からメンバーの能力的手助けを申請されたときには、参加OKですよね。試験がはじまる前に顔見せしておくべきですよ」

 用意していたかのような紘一先輩の言葉に、わたしが反応した。

「試験中に、メンバーの方から助けてもらうことができるんですか?」
「そうなんだよ」

 紘一先輩がわたしのほうへ大げさに振り返り、勝ち誇ったように言葉を続ける。

「だから、オレの存在も能力も知っておくべきだと思わない? 桂ちゃん」

 そして、紘一先輩は、凪先輩とはまた雰囲気の違う、見惚れるような満面の笑みを浮かべた。
 もともと整った顔立ちのために、構えていても目を奪われる。

「オレの能力は『サトリ』なんだ。相手の頭に浮かぶ言葉を読み取る能力なんだよ」
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