闘え☆桂ちゃん!

くにざゎゆぅ

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いきなり試験に突入です?!

先輩、へるぷみー!

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 わたしの視線の意味を理解したように、凪先輩は見返してきた。
 けれど。

「悪いが、今回は自分で対処すべき内容だ。こちらからサポートできない」

 にべもなく凪先輩は無表情で口にする。
 すると、すかさず宮城先生がわたしへ向かって言った。

「すぐに他人に頼ろうとするのをやめなさい。それに試験中はよそ見をしない。減点にするわよ。もっとも、まず引ける点数をとることができるのかしらねぇ」

 嘲笑うような響きを含んだ先生の声に、わたしは恥ずかしさで顔が紅潮した。
 答案用紙の前で、シャーペンを握りしめたまま動けない。

 そのとき。
 わたしの右手の中で、シャーペンが砕けた。
 あまりの緊張に、力の加減ができなかったらしい。
 握りつぶしてしまった。

 慌ててわたしは、筆箱の中から新しいシャーペンをとりだそうとしたけれど。
 手にしたとたんに、シャーペンの真ん中をひねりつぶしてしまった。
 さすがに、教壇からわたしの様子を見ていた宮城先生が、驚いたように目を見開いた。

 まずい。
 このままじゃ、まともに試験さえ受けられない。

 そのとき、事情を察したのか、背後から凪先輩の声が聞こえた。

「桂、焦るな。制限時間がないということは、逆に考えれば時間はたっぷりある。落ちついて考えろ」

 凪先輩の言葉に、わたしは少し冷静さを取り戻す。

 焦ったところで、事態が好転するわけじゃない。
 この状態の中で、より良い方法と行動をとっていかなきゃ。
 絶対絶命じゃない。どこかに活路があるはずだ。

 気を取り直したわたしは、今度は握りつぶすことなく、鉛筆を手に取った。

 次は問題を解かなきゃ。
 数学だから、計算式でも文章問題でもしっかり読めば、ひらめきで解けるところがあるかもしれない。

 そう考えて、プリントへと視線を移す。
 けれど、習っていない公式は思いだしようもない。
 うつむいたまま、じっとプリントを凝視するしかないわたしの上から、先生が威圧的に見下ろしている視線が痛いほど感じられた。

「十五分経過。あらあら、全然書けていないじゃないの。試験監督としては暇だわぁ」

 呆れたような声を投げつけられる。

「あなたの気を落ち着かせるために、ああいう風に彼は言ったけれど。制限時間なしって、どういうことかわかるかしら? 今回の試験は、あなたが全問題を記入し終わらなきゃ、何時間でもこのままってことなのよ。まったく困ったことだわぁ。私、放課後は逃したくないイケメンとのデートが入っているのにぃ。本当迷惑!」
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