キターッ!これがウワサの婚約破棄ですわねっ!

夏乃みのり

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泥だらけのドレスのまま村長の家に戻った私は、こっぴどく叱られた。アランに。

「いいですかリリアンヌ様!貴族令嬢が!しかも婚約破棄されたばかりで心労があるはずの方が!いきなりクワを振り回すなど常軌を逸しております!」

「あら、わたくしは至って元気ですけれど?」

「そういう問題ではございません!」

珍しく声を荒らげるアランをなだめすかし、私は村長の家の書棚を物色していた。この村の歴史や土地に関する資料が何か残っていないかと思ったのだ。

そして、ほこりを被った羊皮紙の束の中から、私は運命の一枚を見つけ出した。

「これは…!」

それは、この村の古い地図と、言い伝えのようなものが書かれたものだった。ほとんどの文字はかすれて読めなかったが、私の目はある単語に釘付けになった。

『…山の神の恵み、黄金のじゃがいも、飢えし民を救う…』

「黄金の…じゃがいも…?」

私の心に、稲妻が走った。なんて魅惑的な響き!

「村長!これはいったい何ですの!?」

私は羊皮紙を手に、村長に詰め寄った。

「ああ、それは…ただの言い伝えですよ。昔、この村が飢饉に襲われた時、山の奥で金色に輝くじゃがいもを見つけ、村が救われたとか…まぁ、おとぎ話ですな」

村長は気のない返事をする。

しかし、私は確信していた。これはただのおとぎ話ではない、と。

「これですわ!これこそ、この村の特産品にふさわしい宝!」

私は拳を握りしめ、高らかに宣言した。

「わたくし、この『黄金じゃがいも』を探しに、山へ行ってまいります!」

「はぁ!?」

「お待ちください!!」

村長とアランの声が綺麗にハモった。

「危険です!この先の山は魔物も出ると言われています!お一人で行くなど、もってのほか!」

アランが血相を変えて私の前に立ちはだかる。

「あら、あなたも一緒に行けばいいじゃありませんか。護衛なのでしょう?」

「そういうことではなく!しっかりとした準備もなしに、言い伝えだけを頼りに山に入るなど無謀です!」

「無謀ではありません、ロマンですわ!」

「ロマンでは命は守れません!」

私とアランの、熱い(?)攻防が始まった。アランの言うことが正しいのは分かっている。でも、私の冒険心はもう、誰にも止められないのだ!

(待ってなさい、黄金のじゃがいもちゃん!このリリアンヌが、必ずあなたを見つけ出してあげるから!)

私の野望は、痩せた大地から険しい山へと、その舞台を移そうとしていた。
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