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「……リリナ。貴様、正気か?」
アルフレッドの裏返った声が、静寂を取り戻した中庭に響く。
男爵令嬢リリナは、ボストンバッグを片手に優雅に微笑んでいた。
その視線は、アルフレッドではなく、私の背後に立つジェラルド様にロックオンされている。
「正気ですわよ。王宮の退屈なお茶会や、腹の探り合いには飽き飽きしていましたの。そこへ行くと、この辺境は刺激的(ワイルド)! 空気は美味しく、殿方は逞しい! まさに私の求めていた理想郷ですわ♡」
リリナがウィンクを飛ばす。
ジェラルド様は、バジリスクに睨まれた石像のように固まっていた。
(……まずいわね)
私は冷静に戦況を分析する。
リリナは計算高い女だ。
アルフレッドに見切りをつけ、より強力なパトロンであるジェラルド様に乗り換えようとしているのだろう。
「おい、マルグリット。どういうことだ、これは」
ジェラルド様が、腹話術のように唇を動かさずに私に問う。
その顔は引きつり、眉間の皺深さはマリアナ海溝レベルに達している。
「どうやら、閣下のフェロモンが強すぎて、新たな害虫……いえ、お客様を引き寄せてしまったようです」
「追い払え。俺は化粧の匂いが苦手だ」
「了解しました。では、まずは手前の『元・害虫(アルフレッド)』から処理いたします」
私は一歩前へ出た。
アルフレッドは、リリナの裏切りとジェラルド様の殺気に挟まれ、顔面蒼白で震えている。
「殿下。お聞きになりましたか? リリナ様も殿下を見限られたようです。これ以上の滞在は、殿下のプライドを傷つけるだけかと」
「う、うるさい! リリナは一時的な気の迷いだ! それよりマルグリット、君だ! 君が帰れば全て解決するんだ!」
アルフレッドは諦めが悪かった。
彼は私のジャージの袖を掴もうと手を伸ばしてくる。
「帰るんだ! 父上は君を『宰相補佐』に任命するつもりらしいぞ! 出世だぞ!」
「宰相補佐?」
「そうだ! 女だてらに異例の大出世だ! 嬉しいだろう!?」
私はため息をついた。
この男は、まだ私のことを理解していない。
「殿下。宰相補佐とは、要するに『死ぬまで書類の海で溺れろ』という懲役刑ではありませんか」
「ち、違う! 名誉職だ!」
「お断りします。私はここでの生活に、人生の真理を見出しました」
「真理だと? 泥と汗にまみれることか?」
「その通りです」
私は中庭の植え込みへと歩み寄り、しゃがみこんだ。
そして、黒々とした土を一掴みし、アルフレッドの目の前に差し出した。
「殿下。ご覧ください、この土を」
「……土がどうした。汚いじゃないか」
「いいえ、美しいのです。この土には、ミミズやバクテリアといった無数の命が息づいています。彼らは文句も言わず、土を耕し、栄養を作り出し、植物を育てる。……王宮の貴族たちより、よほど勤勉で生産的です」
「なっ……貴族をミミズと比べるのか!」
「ミミズに失礼でしたか。申し訳ありません」
「そっちかよ!」
アルフレッドがツッコミを入れるが、私は止まらない。
「私は気づいたのです。書類上の数字をいじるより、この手で命を育む方が、どれほど尊いか。株価の変動に一喜一憂するより、大根の成長を見守る方が、どれほど心が満たされるか!」
私の熱弁に、周囲の騎士たちが「おお……」と感動の声を漏らす。
ジェラルド様も、腕を組んで深く頷いている。
「殿下。貴方には、決定的に足りないものがあります」
「た、足りないもの? 王族としての品格か?」
「いいえ。下半身の安定感と、土への感謝です」
私はスッと立ち上がると、近くの農具小屋へ走った。
そして、一本の農具を手に取り、戻ってくる。
「……なんだそれは」
「餞別(せんべつ)です」
私が差し出したのは、使い込まれた一本の『鍬(くわ)』だった。
刃は錆びついているが、柄は持ち主の手汗で艶が出ている。
「鍬……?」
「はい。ペンを捨て、剣を置き、鍬をお持ちください。そして王宮の庭園を耕すのです。薔薇ではなく、ジャガイモを植えてください」
「はあ!? なんで僕がジャガイモを!?」
「ジャガイモは裏切りません。愛(肥料)を注げば、必ず応えてくれます。リリナ様のように、突然他の男に走ったりしません」
「ぐっ……!」
アルフレッドが言葉に詰まる。
リリナが「あら、失礼ね」とクスクス笑っている。
「さあ、お持ち帰りください! そして大地と対話するのです! そうすれば、貴方のそのヒョロヒョロの足腰も、少しはマシになるでしょう!」
私は無理やりアルフレッドの手に鍬を握らせた。
ずしり、とした重みに、王子がよろめく。
「お、重い……こんなものを振り回していたのか……?」
「重いのは、命の重さです」
「いや、鉄の重さだろ……」
「とにかく! これにて交渉決裂です。お引き取りください!」
私はビシッと城門を指差した。
しかし、アルフレッドは往生際が悪かった。
彼は鍬を投げ捨て、再び私に掴みかかろうとしたのだ。
「ふざけるな! 鍬なんていらない! 君が必要なんだ! 力尽くでも連れて帰るぞ!」
「きゃっ」
彼の手が私の肩に触れようとした、その瞬間。
ゴオオオオオッ……!
中庭の気温が、氷点下まで急降下した。
「……おい」
「ひいっ!?」
アルフレッドの動きが止まる。
彼の目の前には、漆黒のオーラを纏ったジェラルド様が立っていた。
その顔は、もはや人間のそれではない。
怒れる鬼神。
あるいは、冬将軍の化身。
「俺の目の前で、俺の女に触れようとは……いい度胸だ」
ジェラルド様が、腰の剣に手をかける。
チャキッ……。
鯉口を切る音が、死の宣告のように響いた。
「わ、わわ、私は王太子だぞ! 私を斬れば、国際問題に……!」
「構わん」
ジェラルド様が即答した。
「ハイラント辺境伯領は、王国の盾であり矛だ。だが、俺の宝を奪おうとするなら、王家であろうと敵とみなす」
「なっ……正気か!?」
「俺はいつだって正気だ。……三つ数える。それまでに失せなければ、その綺麗な足を、一生歩けなくしてやる」
ジェラルド様の瞳が、蒼く輝く。
本気だ。
この人は、やる時はやる男だ。
「ひ、ひとつ……」
カウントダウンが始まった。
アルフレッドは、ジェラルド様の殺気と、私の冷ややかな視線、そしてリリナの嘲笑に囲まれ、完全にパニックに陥った。
「く、くそぉぉぉぉっ!! 覚えてろよ! 父上に言いつけてやるからなあああッ!!」
アルフレッドは叫び声を上げると、脱兎のごとく馬車へ駆け込んだ。
「出せ! 馬車を出せ! 全速力だ!!」
御者が慌てて鞭を振るう。
馬車は砂煙を巻き上げ、逃げるように城門から飛び出していった。
鍬一本を残して。
「……ふぅ。騒がしい男でしたね」
私は投げ捨てられた鍬を拾い上げ、土を払った。
「怪我はないか?」
ジェラルド様が、先ほどの殺気を瞬時に消し去り、心配そうに私の顔を覗き込む。
「ええ、もちろんです。ジェラルド様がいらしたので、安心しておりました」
「……そうか」
ジェラルド様が、照れくさそうに頬を掻く。
その仕草に、周囲の騎士たちが「尊い……」と拝んでいるのが見えた。
これで一件落着。
……と言いたいところだが。
「あらあら。随分と手荒な追い返し方ですこと」
優雅な声が残っていた。
振り返ると、そこにはリリナが一人、悠然と佇んでいた。
「リリナ様……。馬車に乗らなかったのですか?」
「ええ。だって、私はここに住むと決めましたもの」
リリナはボストンバッグを地面に置くと、腕を組み、挑戦的な瞳で私を見据えた。
「マルグリット様。貴女、この素敵な旦那様を独り占めするつもりでしょう? そうはいきませんわ」
「……独り占めも何も、私はただの従業員ですが」
「嘘をおっしゃい。あの溺愛ぶり、どう見ても『未来の奥様』ですわ」
リリナの鋭い指摘に、ジェラルド様が「ぶふっ」とむせた。
「私は負けませんわよ。王宮では貴女に家柄で負けましたが、ここでは『女の魅力』で勝負です!」
リリナが宣言する。
どうやら、彼女は本気でジェラルド様を狙っているらしい。
(……面倒なことになったわね)
私はため息をついた。
私の平和な筋肉スローライフに、恋愛脳の嵐が吹き荒れようとしている。
だが、ここで追い出すのも非効率だ。
リリナはか弱い令嬢。
一人で外に放り出せば、数分で魔物の餌食になるだろう。
ならば、答えは一つ。
「……分かりました、リリナ様」
「あら、降参ですの?」
「いいえ。ここに住むことを許可します。ただし」
私はニヤリと笑った。
ジェラルド様と同じ、あるいはそれ以上に凶悪な笑顔で。
「ハイラント領の掟はご存知ですね? 『働かざる者食うべからず』。ここに住むなら、貴女にも働いていただきます」
「は、働きましてよ! お花を生けたり、詩を詠んだり……」
「いいえ。まずは基礎体力作りからです」
私はリリナの手を取り、強引に広場の中央へ引きずり出した。
「さあ、スクワットです! 貴女のその細い足では、ここの冬は越せません!」
「はあ!? 何を……離して! この野蛮人!」
「褒め言葉です! さあジェラルド様、カウントをお願いします!」
「……うむ。ワン、ツー」
ジェラルド様もノリノリだ。
「いやぁぁぁぁ! 私の美脚がぁぁぁぁッ!」
リリナの悲鳴が城に響き渡る。
こうして、私の新たな『部下(トレーニングパートナー)』が誕生したのだった。
アルフレッドが残していった鍬が、朝日を浴びてキラリと光っていた。
アルフレッドの裏返った声が、静寂を取り戻した中庭に響く。
男爵令嬢リリナは、ボストンバッグを片手に優雅に微笑んでいた。
その視線は、アルフレッドではなく、私の背後に立つジェラルド様にロックオンされている。
「正気ですわよ。王宮の退屈なお茶会や、腹の探り合いには飽き飽きしていましたの。そこへ行くと、この辺境は刺激的(ワイルド)! 空気は美味しく、殿方は逞しい! まさに私の求めていた理想郷ですわ♡」
リリナがウィンクを飛ばす。
ジェラルド様は、バジリスクに睨まれた石像のように固まっていた。
(……まずいわね)
私は冷静に戦況を分析する。
リリナは計算高い女だ。
アルフレッドに見切りをつけ、より強力なパトロンであるジェラルド様に乗り換えようとしているのだろう。
「おい、マルグリット。どういうことだ、これは」
ジェラルド様が、腹話術のように唇を動かさずに私に問う。
その顔は引きつり、眉間の皺深さはマリアナ海溝レベルに達している。
「どうやら、閣下のフェロモンが強すぎて、新たな害虫……いえ、お客様を引き寄せてしまったようです」
「追い払え。俺は化粧の匂いが苦手だ」
「了解しました。では、まずは手前の『元・害虫(アルフレッド)』から処理いたします」
私は一歩前へ出た。
アルフレッドは、リリナの裏切りとジェラルド様の殺気に挟まれ、顔面蒼白で震えている。
「殿下。お聞きになりましたか? リリナ様も殿下を見限られたようです。これ以上の滞在は、殿下のプライドを傷つけるだけかと」
「う、うるさい! リリナは一時的な気の迷いだ! それよりマルグリット、君だ! 君が帰れば全て解決するんだ!」
アルフレッドは諦めが悪かった。
彼は私のジャージの袖を掴もうと手を伸ばしてくる。
「帰るんだ! 父上は君を『宰相補佐』に任命するつもりらしいぞ! 出世だぞ!」
「宰相補佐?」
「そうだ! 女だてらに異例の大出世だ! 嬉しいだろう!?」
私はため息をついた。
この男は、まだ私のことを理解していない。
「殿下。宰相補佐とは、要するに『死ぬまで書類の海で溺れろ』という懲役刑ではありませんか」
「ち、違う! 名誉職だ!」
「お断りします。私はここでの生活に、人生の真理を見出しました」
「真理だと? 泥と汗にまみれることか?」
「その通りです」
私は中庭の植え込みへと歩み寄り、しゃがみこんだ。
そして、黒々とした土を一掴みし、アルフレッドの目の前に差し出した。
「殿下。ご覧ください、この土を」
「……土がどうした。汚いじゃないか」
「いいえ、美しいのです。この土には、ミミズやバクテリアといった無数の命が息づいています。彼らは文句も言わず、土を耕し、栄養を作り出し、植物を育てる。……王宮の貴族たちより、よほど勤勉で生産的です」
「なっ……貴族をミミズと比べるのか!」
「ミミズに失礼でしたか。申し訳ありません」
「そっちかよ!」
アルフレッドがツッコミを入れるが、私は止まらない。
「私は気づいたのです。書類上の数字をいじるより、この手で命を育む方が、どれほど尊いか。株価の変動に一喜一憂するより、大根の成長を見守る方が、どれほど心が満たされるか!」
私の熱弁に、周囲の騎士たちが「おお……」と感動の声を漏らす。
ジェラルド様も、腕を組んで深く頷いている。
「殿下。貴方には、決定的に足りないものがあります」
「た、足りないもの? 王族としての品格か?」
「いいえ。下半身の安定感と、土への感謝です」
私はスッと立ち上がると、近くの農具小屋へ走った。
そして、一本の農具を手に取り、戻ってくる。
「……なんだそれは」
「餞別(せんべつ)です」
私が差し出したのは、使い込まれた一本の『鍬(くわ)』だった。
刃は錆びついているが、柄は持ち主の手汗で艶が出ている。
「鍬……?」
「はい。ペンを捨て、剣を置き、鍬をお持ちください。そして王宮の庭園を耕すのです。薔薇ではなく、ジャガイモを植えてください」
「はあ!? なんで僕がジャガイモを!?」
「ジャガイモは裏切りません。愛(肥料)を注げば、必ず応えてくれます。リリナ様のように、突然他の男に走ったりしません」
「ぐっ……!」
アルフレッドが言葉に詰まる。
リリナが「あら、失礼ね」とクスクス笑っている。
「さあ、お持ち帰りください! そして大地と対話するのです! そうすれば、貴方のそのヒョロヒョロの足腰も、少しはマシになるでしょう!」
私は無理やりアルフレッドの手に鍬を握らせた。
ずしり、とした重みに、王子がよろめく。
「お、重い……こんなものを振り回していたのか……?」
「重いのは、命の重さです」
「いや、鉄の重さだろ……」
「とにかく! これにて交渉決裂です。お引き取りください!」
私はビシッと城門を指差した。
しかし、アルフレッドは往生際が悪かった。
彼は鍬を投げ捨て、再び私に掴みかかろうとしたのだ。
「ふざけるな! 鍬なんていらない! 君が必要なんだ! 力尽くでも連れて帰るぞ!」
「きゃっ」
彼の手が私の肩に触れようとした、その瞬間。
ゴオオオオオッ……!
中庭の気温が、氷点下まで急降下した。
「……おい」
「ひいっ!?」
アルフレッドの動きが止まる。
彼の目の前には、漆黒のオーラを纏ったジェラルド様が立っていた。
その顔は、もはや人間のそれではない。
怒れる鬼神。
あるいは、冬将軍の化身。
「俺の目の前で、俺の女に触れようとは……いい度胸だ」
ジェラルド様が、腰の剣に手をかける。
チャキッ……。
鯉口を切る音が、死の宣告のように響いた。
「わ、わわ、私は王太子だぞ! 私を斬れば、国際問題に……!」
「構わん」
ジェラルド様が即答した。
「ハイラント辺境伯領は、王国の盾であり矛だ。だが、俺の宝を奪おうとするなら、王家であろうと敵とみなす」
「なっ……正気か!?」
「俺はいつだって正気だ。……三つ数える。それまでに失せなければ、その綺麗な足を、一生歩けなくしてやる」
ジェラルド様の瞳が、蒼く輝く。
本気だ。
この人は、やる時はやる男だ。
「ひ、ひとつ……」
カウントダウンが始まった。
アルフレッドは、ジェラルド様の殺気と、私の冷ややかな視線、そしてリリナの嘲笑に囲まれ、完全にパニックに陥った。
「く、くそぉぉぉぉっ!! 覚えてろよ! 父上に言いつけてやるからなあああッ!!」
アルフレッドは叫び声を上げると、脱兎のごとく馬車へ駆け込んだ。
「出せ! 馬車を出せ! 全速力だ!!」
御者が慌てて鞭を振るう。
馬車は砂煙を巻き上げ、逃げるように城門から飛び出していった。
鍬一本を残して。
「……ふぅ。騒がしい男でしたね」
私は投げ捨てられた鍬を拾い上げ、土を払った。
「怪我はないか?」
ジェラルド様が、先ほどの殺気を瞬時に消し去り、心配そうに私の顔を覗き込む。
「ええ、もちろんです。ジェラルド様がいらしたので、安心しておりました」
「……そうか」
ジェラルド様が、照れくさそうに頬を掻く。
その仕草に、周囲の騎士たちが「尊い……」と拝んでいるのが見えた。
これで一件落着。
……と言いたいところだが。
「あらあら。随分と手荒な追い返し方ですこと」
優雅な声が残っていた。
振り返ると、そこにはリリナが一人、悠然と佇んでいた。
「リリナ様……。馬車に乗らなかったのですか?」
「ええ。だって、私はここに住むと決めましたもの」
リリナはボストンバッグを地面に置くと、腕を組み、挑戦的な瞳で私を見据えた。
「マルグリット様。貴女、この素敵な旦那様を独り占めするつもりでしょう? そうはいきませんわ」
「……独り占めも何も、私はただの従業員ですが」
「嘘をおっしゃい。あの溺愛ぶり、どう見ても『未来の奥様』ですわ」
リリナの鋭い指摘に、ジェラルド様が「ぶふっ」とむせた。
「私は負けませんわよ。王宮では貴女に家柄で負けましたが、ここでは『女の魅力』で勝負です!」
リリナが宣言する。
どうやら、彼女は本気でジェラルド様を狙っているらしい。
(……面倒なことになったわね)
私はため息をついた。
私の平和な筋肉スローライフに、恋愛脳の嵐が吹き荒れようとしている。
だが、ここで追い出すのも非効率だ。
リリナはか弱い令嬢。
一人で外に放り出せば、数分で魔物の餌食になるだろう。
ならば、答えは一つ。
「……分かりました、リリナ様」
「あら、降参ですの?」
「いいえ。ここに住むことを許可します。ただし」
私はニヤリと笑った。
ジェラルド様と同じ、あるいはそれ以上に凶悪な笑顔で。
「ハイラント領の掟はご存知ですね? 『働かざる者食うべからず』。ここに住むなら、貴女にも働いていただきます」
「は、働きましてよ! お花を生けたり、詩を詠んだり……」
「いいえ。まずは基礎体力作りからです」
私はリリナの手を取り、強引に広場の中央へ引きずり出した。
「さあ、スクワットです! 貴女のその細い足では、ここの冬は越せません!」
「はあ!? 何を……離して! この野蛮人!」
「褒め言葉です! さあジェラルド様、カウントをお願いします!」
「……うむ。ワン、ツー」
ジェラルド様もノリノリだ。
「いやぁぁぁぁ! 私の美脚がぁぁぁぁッ!」
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