悪役令嬢「殿下、私がいなくても大丈夫ですわよね?」

夏乃みのり

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26話

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アレクシスの王太子位剥奪が決定した、まさにその頃。
エルツハイム王国の王宮に、隣国オルテシア王国からの正式な使節団が到着した。

表向きは、両国の友好を深めるための親善訪問。
しかし、その真の目的は、別にあった。

国王が謁見の間で使節団を迎えると、オルテシアの使節長は、恭しく一通の書状を差し出した。

「我がオルテシア王国国王陛下より、エルツハイム国王陛下へ、親愛なるご提案がございます」

書状を受け取った侍従長が、国王の前でそれを読み上げる。

「我が国のシュヴァルツ公爵、ギルバート・フォン・シュヴァルツと、貴国のヴァイス公爵がご令嬢、イザベラ・フォン・ヴァイス殿との婚姻を、両国の末永い友好の証として、ここに正式に申し入れたい」

その内容は、謁見の間にいたエルツハイムの貴族たちを驚かせた。
ヴァイス公爵令嬢が、隣国の、それも英雄と名高いシュヴァルツ公爵に嫁ぐ。それは、単なる個人の結婚ではない。国家間の、極めて政治的な意味合いを持つ縁談だった。

長年、緊張関係にあった両国。この婚姻が成立すれば、両国の間に強固な絆が生まれる。それは、エルツハイムにとっても、決して悪い話ではなかった。むしろ、国政が混乱している今、隣国との関係を安定させられるのは、渡りに船とも言える。

国王は、複雑な表情で書状を見つめた。
息子が手放した至宝が、結果として、国を救うための架け橋になろうとしている。なんという皮肉か。

「……ヴァイス公爵の意向も確認した上で、前向きに検討させていただこう」

国王がそう答えると、オルテシアの使節団は、満足げに頷いた。
この縁談を、エルツハイム王家が断れないことは、彼らも分かっていたのだ。

イザベラの新しい人生は、彼女の意図しないところで、国際政治の舞台をも動かし始めていた。
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