公爵様、これは冷たい契約結婚のはず、ですよねっ!?

夏乃みのり

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「なぜですか!わたくしは、あなたの妻です!あなたの運命を、共にする覚悟はできています!」

私は、必死に食い下がった。彼の腕を取り、懇願する。だが、リアム様は、その手を振り払った。

そして、私に向けられたのは、今まで見たこともないほど冷たい、氷の眼差しだった。

「お前は、契約を忘れたのか」

彼の声は、冬の北風のように冷え冷えとしていた。

「これは、俺一人の問題だ。ヴァレンシュタイン家の呪いだ。お前のような、ただの没落貴族の娘が、首を突っ込んでいい領域ではない」

「……っ!」

言葉の刃が、容赦なく私の胸を突き刺す。ただの、没落貴族の娘。

「お前は、公爵夫人という地位と、実家への援助と引き換えに、ここにいるだけの存在だ。俺の妻だなどと、思い上がるな」

違う。そんなことを思っているはずがない。彼のオーラが、悲鳴を上げている。私を傷つける言葉を吐くたびに、彼の心そのものが、血を流しているのが見えた。

「足手まといになるだけだ。下がっていろ」

彼は、私から視線を逸らし、吐き捨てるように言った。その横顔は、苦痛に歪んでいる。

それでも、私は諦めきれなかった。

「嫌です……!あなたを、一人にはしません……!」

涙ながらに訴える私に、彼は、最も残酷な言葉を告げた。

「……儀式が終われば、お前を実家へ帰す」

「え……?」

「この契約は、ここまでだ。用済みだと言っている。もう、お前の顔など見たくない」

彼は、私に背を向けた。

「分かったら、さっさと俺の前から失せろ」

心が、こなごなに砕ける音がした。涙が、後から後から溢れてきて、止まらない。

違う。
嘘だ。
全部、嘘だ。

彼は、私を危険から遠ざけるために、わざと私を傷つけている。私を憎ませて、諦めさせようとしている。

なんて、不器用で、なんて、優しい人なのだろう。

自分の命が懸かっているというのに、私の心配ばかりしている。

その愛情が、痛いほど伝わってくるから、余計に胸が苦しい。

私は、その場に崩れ落ちそうになるのを、必死に堪えた。ここで、彼の思惑通りに引き下がってはいけない。それでは、本当に彼を一人で死なせてしまうことになる。

涙を、ぐいと手の甲で拭った。そして、私は、砕けた心のかけらを、一つ一つ拾い集めるように、顔を上げた。
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