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「その、せ、せっかく会えたんだし……」

こんな年下の男の子にみっともなくすがってる自分は滑稽だった。それを自覚したとたん、情けなさに声が震えた。

「あ、ううん。やっぱり何でもない。いきなりごめん」

おばさんが何言ってるんだって引かれたかも。恥ずかしくなってフイと顔を反らした。
聖は一夜だから相手にしてくれたのだ。勘違いも甚だしい。

「わ、忘れて、ほんとごめん」
あはは、と恥ずかしさを誤魔化した。

話題を変えよう。
そうだ、朝食の準備をーーー……


「養ってくれるってことは、僕ヒモなの?」
返ってきた第一声に、大いに慌てた。

「え、ヒモ?!いや…!え……?!」

やはりかなり失礼な提案だった。
わたわたとしていると、何が面白かったのか、聖はお腹を抱えて笑いだした。

うわ、爆笑してるのも可愛い…。

「あははははは!うたこさんやっぱり可愛いなぁ」

だからそれは違うの。君が可愛いの。
バカにされた気がしてジロッと睨む。

ケタケタと暫く笑っていたのが治まると、彼はよっと体を反転させ、わたしをベッドに沈めた。

組み敷かれる体制は、昨夜の情事をを思いだし恥ずかしくなる。顔を赤くしたわたしを見て、聖は意地悪げにニヤッとした。

「いいよ」
「ーーーへ?」
「僕を養ってくれるんでしょ?」

「……」
「うたこさんになら、飼われてもいいよ」

クスクスと笑いながら、聖は顔を近づけた。唇で軽くリップ音が鳴る。
わたしは何が起こったのか理解出来ず、フリーズした。

「ーーー飼う……?」

「今日からよろしくね」

小悪魔わんこは楽しそうにキスの雨を降らせる。

「~~~~」

一瞬遅れてその意味を理解したわたしは、驚きと喜びで足をバタつかせた。
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