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最初の水晶を求めて

共に飛び出そう。

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前回のあらすじ。
ユーリがインキュバスに産み付けられた説が濃厚になる。そして、ユーリがサキュバスになる可能性も見える。

だが、このままユーリを放置して残りの時を過ごす気は無い。ここの環境は、ユーリにとっては合わない環境だ。なら、俺はどうするのが最善か、そこを考えなければならない。俺はそう思いながら、ユーリに、
「ユーリ。俺はそろそろ自分の部屋に戻る。何かあったら、また助けるからな。」
と言い、俺はユーリの部屋を後にした。

次の日の朝。
部屋の外が騒がしかった。俺は急いで騒がしい所へ向かった。そこは、地下室がある場所の近くだった。騒がしい理由は、ユーリが地下室に居なかった事みたいだ。メイド達が現在館中の部屋を確認しているみたいだ。
メイドの1人がユーリを見つけ、ライアンに引き渡した。
「おいユーリ、どうやって牢を出た。」
「えっと…それは…」
「答えれないのか?」
「…はい。」
「何故答えれないんだ?」
「…」
ユーリは俺を庇うように、俺がユーリを助けた事を必死に隠そうとしている。だが、俺を庇ったせいでユーリに何か危険が及んだらと考えると、俺も最終手段を使うしか無い。
「おい、ライアン。」
「なんだ?ムーン」
「ユーリを牢から出したのは俺だ。」
ユーリは驚いた表情で俺を見つめる。ライアンは、至って冷静な顔をしていた。
「何故ユーリを牢から出した?」
「それは、お前のユーリの扱いが気に食わんかったからだ。」
ユーリが暴走するのが本当なら、牢に入れるのは普通の判断だと思う。が、ロダスト家は代々引き継がれる大魔法使いの素質があるはずなんだ。だから悪魔の暴走を止めるなんて容易い事なはずなんだ。
「何故お前は、ユーリを牢に入れる?お前の魔術の力で、ユーリくらいの力の暴走なら、容易く止めれるはずだぞ?」
俺が一番許せなかったのが、拷問だ。俺も昔、拷問の様な事をされたからな、苦しさはよく分かる。それに、こいつはわざと魔術を使っていない。その理由は、
「拷問とかで精神的に追い込んでこの家から追い出す。それか自殺させる作戦だったんだろう?」
それを聞いたユーリは真っ青になり、ライアンは焦った表情をしていた。
「何故分かったんだ?」
「わざと魔術を使ってない事を感じたからな、それくらいしか無いだろうなと思っただけだ。」
正直、俺の中でこの後どうするかの考えはまとまっている。それは、普通なら俺が悪人になる行為だ。
「俺はお前を許すつもりは無い。実の娘ではなくても、子供を拷問に掛けわざと自殺に追い込む事が、どんだけ憎いか、」
俺の中には、確実な“殺意“があった。
「だが私は魔術が使える。ムーン君が私に攻撃したとしても、止めてみせるよ、」
俺はこれが挑発をされたのか、されてないのか分からない。いや、今はそんなこと関係ねぇか。
だって俺は、
「お前を殺すもんな、」
俺はライアンにそう告げ、ライアンに斬り掛かろうとした。
「無駄な事を。」
と、バリアを張られてしまう。だが、そんな事も計算済みだ。俺は力量と魔術を掛け合わせて、バリアを破壊した。
「なっ…!」
俺はその一瞬の隙を見て、ライアンの首目掛けて鎌を入れた。

見事に決着はつき、俺はライアンを倒した。俺は死神だ。こいつの魂は、喜んで地獄に送ってやろう。そう思いながら、ライアンの首を掴んでいた。そして俺はその首を投げた。
「あ…あぁ…」
そうだったな、ユーリも連れていかないとな、だが、実の父のように思ってた人を、目の前で殺されたんだからな、そう思いながら、俺はユーリに話し掛ける。
「お前は、これからどうする?」
「…」
「もし、お前がここに居たくないのならば、“俺と共に、旅へ出ないか?“」
俺がそう言うと、ユーリは目から涙を流し、零れ落ちた涙を拭きながら、
「はい…!」
と答えた。そして俺はユーリの白い手を掴み、館の外へ出た。そして、それと同時に館に炎を灯した。
焼けていく館を後に、俺とユーリはブルー達の元へ戻っていく。その時のユーリは、覚悟を決めた目をしていた。

次回に続く。
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